中村大介、44歳の現在も「強い人とやりたい」 ベテランの飽くなき向上心「RIZINのベルトは目指したい」
かつて日本には「プロレス」から「総合格闘技」に向かっていったUWFという進化の過程が存在した。思春期にそのUWFに多大なる影響を受けた中村大介(44=夕月堂本舗)は、紆余曲折ありながら「RIZIN男祭り」(5月4日、東京ドーム)に参戦。桜庭大世に激勝した。今回その中村から仰天提案が飛び出した。

「(鈴木千裕戦における朝倉未来の戦い方は)ベストだった」
かつて日本には「プロレス」から「総合格闘技」に向かっていったUWFという進化の過程が存在した。思春期にそのUWFに多大なる影響を受けた中村大介(44=夕月堂本舗)は、紆余曲折ありながら「RIZIN男祭り」(5月4日、東京ドーム)に参戦。桜庭大世に激勝した。今回その中村から仰天提案が飛び出した。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「RIZIN男祭り」では、“路上の伝説”朝倉未来VS鈴木千裕戦があった。結果は昨年夏以来の復帰戦となる朝倉が判定で勝利。手堅く勝利を手にしたが、その戦い方が消極的だとの声も上がった。
この戦法に対し、中村は「(白星をゲットするには)あれがベストだったと思います。ああいう試合をしても強いし、打ち合いをしても強いし。やられる可能性の低い方を選んだのかなと思いますけど、うん。そうですねえ。ちょっとカタかったですよね。でも、あれですごい盛り上がっていたので。それっていいですよね。やっぱりお客さんを盛り上げるのが大事だと思うので。勝利を最優先してああいう戦いをしたのは、自分は正解だと思います」と朝倉の戦法を率直に認める発言を残した。
ちなみに朝倉といえば、昨年は平本蓮と対戦。平本がKO勝利したものの、試合後の平本にドーピングの疑いが出てきたことで評価が一変。再戦の声が高まっている。中村から見ると、そもそも朝倉、平本のような生き方はどう映っているのか。
「業界を背負って立とうとしているというか、引っ張ろうとしているというか。それはホントにすごいなと思いますね。自分はあんまりそういうのがないので。大変だろうなと思ってしまうんですけど、すごいですよね」
中村と話していると、プロとして多くを望まず、一定の距離をとりながらも、自身の出番が来ればキッチリと仕事をこなしてそれなりに業界に貢献していくイメージがある。そんな中村の生き方は師匠・田村潔司と似たものを感じる。
「田村さんの影響はすごいと思います。トップを取ってやろうとか、あんまりないですね。行った先にチャンピオンとかあればいいなって、そこは目指しているんですけど、そこに行くことが目的じゃなくて、そこに行く過程というか、考えるのが楽しいですね」
もちろん、トップを目指していないわけではない。
「やっぱりベルトというか、上を目指さなくなったら終わりだと思っているので。DEEPのベルトはずっとほしいと思っているんですけど、RIZINのベルトは知名度としても実力としてもトップだと思っているので目指したいです。目指さなくなったら終わりだとは思っているんですけど……、まだ自分が言える立場ではない(のも分かっている)。やっと連敗脱出ですよね。ここから勝ち続けます。続けていく先には(ベルトが)あるかなと思っているので。(対戦相手にしても)あれは強すぎるからやりたくねえなっていうのはまったくなくて、強い選手に触れていきたいっていうのはいまだにありますね」

“プロレスの神様”カール・ゴッチ(UWF最高顧問)の墓参りに
仮の話、もし朝倉未来戦が組まれたらどんな戦い方になるのか。
「戦い方は変わらないと思いますけど、やってみたいですよね。(対戦)相手になる(選ばれる)のがなかなかないと思うので、(実現することは)ないとは思うんですけど、触れてみたいっていうのはすごいありますよね……。ていうかみんなやりたいです。RIZINに出ている選手、全員やりたいです。絶対に強いし、知名度もあるし、強い人とやってみたいです」
中村には、最近の格闘技界でありがちな、オラオラ系やSNSで挑発的なことを言い合う様子はない。皆無である。むしろその姿勢はプロとして物足りなさを感じないわけではない。それでも淡々と練習をし、組まれた試合ではそれがどんな他流試合であろうと臆せずに自ら真っ向勝負に行く。
最近の戦績こそそこまで華々しくはないものの、2021年2月には牛久絢太郎からDEEPフェザー級王座を奪い、今回も結果的には東京ドームという大舞台で「日本人唯一のUFC殿堂入り」を果たした桜庭和志の長男・桜庭大世戦をゲットし、見事に腕十字を極めてみせた。この流れを見るにつけ、中村には実力はもちろん、人前で試合を見せる人間の持つべき「運の強さ」を感じてしまう。
そう考えていくと、これはもう“Uの末裔”ならぬ、“Uの正統後継者”と言ってもいいのではないか。
「(6連敗中だったこともあり)この間の試合も慎重になっちゃいますよね。(負ける)リスクを考えると。だから(UWFルールのように)エスケープがあればと思いますよね。ヤバかったらエスケープがあれば。だから昔、UWFルールを求めた(ニーズがあった)んだと思います」
これは半ば夢物語に近いが、もし朝倉とUWFルールで戦うことがあったら? この問いに対し、中村は「面白そうですよね。打撃もガンガン行くと思うし、面白いと思います」と話しながら、以下のように続けた。
「とんでもなく疲れますけどね。でも、そのままポイント勝ちとかあるし、面白いですけどね」
いまの朝倉の立場や状況を考えると、中村戦の実現可能性は限りなくゼロに近いだろう。それでも中村には“UWF”という歴史を自らの心身で体感してきた道程がある。これを朝倉本人や、RIZINの榊原信行CEO、DEEPの佐伯繁代表や関係者がどう考えるか。
デビュー2戦目の桜庭が中村を通じて「歴史」と遭遇したように、朝倉もぜひ“UWF”という「歴史」を感じてみる、というのは今後の格闘技界を考えていく上では非常に面白いように思う。
いや、それがたとえ誰であろうと、「歴史」をつなぐことこそが、激動の格闘技界を歩んできたキャリア22年・中村の役割になるに違いない。
「実は隣町の南千住にカール・ゴッチさん(UWF最高顧問)のお墓があって。試合が決まると必ず(報告に)行くんですよ。自分はゴッチさんにお会いしたことはないんですけど、ゴッチさんを『プロレスの神様』だと思って育って、それ(墓参り)は行ってますね。それが“UWF”のルーツとかっていうのも運命を感じますね」
