【RIZIN】「リングで死んでもいい」 無許可出場で戒告処分…現役フジ社員がリングの上で見せたかったこと

現役フジテレビ社員として会社に無許可で東京ドームの試合に出場し、話題を呼んだウザ強ヨシヤ(28=Fight Club428)は、大観衆の前で元K-1世界王者の朝久泰央(27=朝久道場)に挑んだが、2R・TKO負けを喫した。安定した職業を捨てる覚悟でなぜ無謀ともいえるチャレンジに挑んだのか。試合後の会見でその真意を振り返った。

2R・TKO負けを喫したウザ強ヨシヤ【写真:徳原隆元】
2R・TKO負けを喫したウザ強ヨシヤ【写真:徳原隆元】

対戦相手の元K-1世界王者も賛辞「少しでも報われてほしい」

格闘技イベント「RIZIN男祭り」(2025年5月4日・東京ドーム/ABEMA PPVで全試合生中継)第3試合、RIZINキックボクシングルール:3分3R(63.0kg)

 現役フジテレビ社員として会社に無許可で東京ドームの試合に出場し、話題を呼んだウザ強ヨシヤ(28=Fight Club428)は、大観衆の前で元K-1世界王者の朝久泰央(27=朝久道場)に挑んだが、2R・TKO負けを喫した。安定した職業を捨てる覚悟でなぜ無謀ともいえるチャレンジに挑んだのか。試合後の会見でその真意を振り返った。(取材・文=浜村祐仁)

「挑戦する事で見せられる事がある」と語っていたヨシヤ。現役のフジテレビ社員として榊原信行CEOに直談判しファイトマネー返上で出場を掴んだが、会社からは最後まで出場許可がおりなかった。戒告処分を下されてたことを明かしていたが、選んだのは強行出場の道だった。対戦相手に決まった朝久は第5代K-1 WORLD GPライト級王者に輝いた実力者。21年12月以降はプロ格闘技の試合に出場しておらず、約3年半近くのブランクがあるヨシヤには高すぎる壁だった。

「正直あんまり覚えてなくて、断片的にしか記憶がないんですけど。恥ずかしいっていうか。いつも口だけ番長みたいになってしまって、痛いですね、自分が」と自虐的に試合を振り返った。一方的な展開となり奪われたダウンは3度。自分を奮い立たすように何度も立ち上がったが最後は左ハイキックを被弾し、悶絶してマットに倒れ込んだ。「脳にダメージはあるかなって感じですね。過去最大のダメージ? だと思います」。顔面は腫れ上がっていた。

 先月9日に行われた東京ドームシティでのカード発表会見で突如参戦が発表された。無料開放された会見場に集まった格闘技ファンは、聞き慣れない名前にほとんどが困惑。しかし、試合が近づくにつれSNS上では参戦に肯定的な声も目立つようになった。前日の公開計量会場では多くの人気ファイターに劣らず、「ヨシヤ」の名前を呼ぶ声も少なくなかった。

「この5月4日に全てをかけていた。本当にリングの上で死んでもいいと思っていた」とまで明かした覚悟に一部の格闘技ファンは惹きつけられた。朝久も試合後に「ヨシヤさんの試合後の表情を見た時にこうやって一生懸命男をかけて闘った人の作る番組を見たいなと思った。男を持って参戦してくれて、自分に立ち向かってくれた人が少しでも報われてほしい」と最大限の賛辞を送った。

試合後の会見に登場したウザ強ヨシヤ【写真:ENCOUNT編集部】
試合後の会見に登場したウザ強ヨシヤ【写真:ENCOUNT編集部】

今後はフジと話し合い「残れるのであれば熱量を持って働きたい」

「本当に僕変わりたいって言ってたじゃないですか。僕にはダメな所がいっぱいあったし、生活に満足していないところがたくさんあった。このままじゃあかんなっていう気持ちがあったんですよ。でも格闘技にもう1回打ち込んで自分の中でも変わっていったのを感じたし、発信していくなかで少しは(ファンに)伝わったのかな」と挑戦を振り返り、充実感も口にした。

 現在はスポーツ局に在籍しているヨシヤ。今後はフジテレビ側と話し合いを続けていくという。「もし残れるのであればもっと番組作りとか熱量を持って働きたい気持ちはある。そこはもう判断する人によると思うし、僕の試合を見てどうこうじゃない問題もあると思う。僕はわがままっていうか、勝手な行動してる自覚もあるし反省もあるんで、どう対応されても仕方ないなと思ってる」と冷静に語りつつも、「やりたい番組とかも頭の中に結構あるんですよね。もしやれたら最高だなと思ってます」と“フジテレビ愛”ものぞかせた。

 会見の最後には「必ずしも挑戦して成功が掴めるとは思わない。僕も結果がともなっていない。でも勇気出して挑戦してみたら、周りの人もついてきてくれるし、そのちょっぴりの勇気ってすごい大切なんだなって僕は今回学んだ。すごい大変だと思うんですけどみんないろんなことで。でもみんな思い切って何かに挑戦してほしいなって思うし僕も後押ししたい」と力強く語った。その表情はどこかすっきりとしていた。

 この日の東京ドームでは現役復帰した朝倉未来が736日ぶりに復活の勝利をあげた。メインイベントのフェザー級タイトルマッチでは新王者も誕生した。プロフェッショナルな技術が求められるRIZINのリングでのヨシヤのパフォーマンスは褒められたものではなかったかもしれない。それでも、4万2706人の大観衆がつめかけたリングで恐れずに強敵と対峙した時代錯誤ともいえる挑戦は、見るものに何かを与えたに違いない。

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