石田ひかり、大ファン月9からのオファーに「出ない理由がない」 共演・小泉今日子との秘話…感銘受けた現場での姿
第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門(5月13~24日)に正式出品される映画『ルノワール』(6月20日公開、早川千絵監督)。主人公の少女の母親役を演じた俳優・石田ひかりは、テレビで話題作に出演している。長年愛されてきたフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(月曜午後9時)だ。石田がドラマへの愛着、主演・小泉今日子との秘話を語った。

憧れの小泉今日子との3度目共演「ちょっと怒られました」
第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門(5月13~24日)に正式出品される映画『ルノワール』(6月20日公開、早川千絵監督)。主人公の少女の母親役を演じた俳優・石田ひかりは、テレビで話題作に出演している。長年愛されてきたフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(月曜午後9時)だ。石田がドラマへの愛着、主演・小泉今日子との秘話を語った。(取材・文=平辻哲也)
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『最後から二番目の恋』は2012年1月から第1期が始まった小泉今日子&中井貴一がW主演するロマンチック・ホームコメディー。脚本は岡田惠和による完全オリジナルで、同年11月にスペシャル版として『最後から二番目の恋2012秋』、2014年には、第2期『続・最後から二番目の恋』が放送された。
11年後を描く第3期では、実年齢と同じ59歳になった吉野千明(小泉)と定年を迎えた後も鎌倉市役所で働く63歳の長倉和平(中井)の姿が描かれる。
石田は同シリーズの大ファン。最近まで鎌倉に住んでいたという縁もある。
「オファーをいただいた時には“出ない理由がない”と思いました。うれしい反面、こんな恐ろしいことはないとも思いましたけど(笑)」
石田が演じるのは、故郷・鎌倉に帰ってきたばかりの女性・早田律子。観光協会で通訳の仕事をしながら、人生の“次の章”に向き合っている。シリーズで名物キャラクターだった一条さん(織本順吉)のひとり娘で、外語大を卒業後、商社マンと結婚し、長く海外で暮らしていたが、夫の死をきっかけに帰国する。子どもはおらず、慎重で堅実な人生を歩んできたが、夫の“秘密”を知ったことをきっかけに、大きく変わっていく。
「織本さんの存在を、ちゃんと作品に残したいと思っていました。小泉さんからも『一条さん(役名)のこと、感じさせて欲しいんだよね』と言われていました。“お父さんのDNAが80%くらい流れてる”って自分に言い聞かせながら演じていました。ちょっとファンキーで、真っすぐで、不器用で…そういう部分が律子にもあると思います」
初めてこの作品の“家族”に加わる緊張は大きかったという。
「ずっと“あの空気感”を画面越しに見てきたので、実際にその中に入るのはすごく怖かったです。皆さん本当に優しくしてくださいましたが、私と(小泉演じる千明の新たなかかりつけ医役の)三浦友和さんは“新参者”として明らかに輪の外にいる。でもその距離感が、このドラマの醍醐味でもあるんです」
その“距離”の感覚こそが、この作品の世界にリアリティーと味わいを与える。入り込めないからこそ、自分の人生を重ねられるのだ。
共演者の中で特に特別な存在だったというのが小泉今日子だった。
「小泉さんは、私にとって絶対的な存在です。子どもの頃から“キョンキョン”として見てきましたし、当時のアイドルはロングヘアが多い中、ある日突然ショートにした時の衝撃は今でも忘れません。思いがけず後輩になってからは、仕事に対する姿勢や選択の仕方、そのすべてが尊敬の対象でした」
そんな石田が2020年に舞台で共演する機会が訪れる。大島真寿美さんの同名小説を原作にした舞台『ピエタ』だった。18世紀のベネチアを舞台に、身分や立場を超えた女性たちの絆を描く。
「最初は『絶対に無理だ』と思っていたんです。小泉さんと芝居をするなんて、とてもできないと。結局、コロナ禍で公演が流れてしまって、そのときは正直『ホッとした』気持ちもありました。でも、小泉さんは『せっかく1か月間劇場を押さえていたんだから何かやりたい』と、自ら動かれて、朗読劇を企画されたんです」
朗読劇版では石田のほか、峯村リエが出演し、バイオリンの向島ゆり子が生演奏し、2023年には舞台公演も実現した。
「小泉さんがプロデュース、演出、出演まで手がけられていました。衣装、メイク、美術、照明や構成にも細かく関わって、本当に多才な方だと改めて感じました。片付けも率先してされていた姿は忘れてはいけないと心に刻み、 “手腕”と“働きぶり”に驚かされました」
『最後から二番目の恋』でも、小泉の “現場での佇まい”に深く感銘を受けたという。
「現場ではスタッフを一番に大事にされる方です。私がちょっと寄り道して遅れて控え室に戻った時、『みんなの休憩時間がなくなるから早く戻ってね』って、ちょっと怒られました。その時に、私はこういう事をすっかり忘れていたな、と本当に反省しました。小泉さんには全てを見抜かれてしまう。そこが本当に緊張してしまうところです(笑)」

プロデューサーには「毎年やってください!」
ドラマの撮影が終わったときには、「一生続けてくださいね」とプロデューサーに頼んだ。すると、「次は古希(70歳)かしら?」と返ってきた。
「『そんな遠くはイヤです(笑)毎年やってください!』と言いました。それくらい、大好きな作品です」
一方、6月20日に公開される映画『ルノワール』では、まったく違う顔を見せる。こちらはバブル経済まっただ中の日本を舞台にした、ある家族の物語だ。
「『ルノワール』では、少女のまなざしから見る“大人たちの世界”を描いています。主演の鈴木唯ちゃんの演技が本当に素晴らしくて。彼女には一切の雑念がなくて、“ただそこにいる”ことができる。それが本当に羨ましかった」
大人になるということ。時間が経つということ。その“変わってしまったもの”を、演技の中で受け入れていく。その先に俳優・石田ひかりの現在がある。
「今、すごく作品に恵まれていて、本当に幸せなんです。もっともっと岡田さんの脚本の世界も味わいたいし、早川監督の現場にも戻りたい。欲張りですけど、それくらい、どちらもかけがえのない経験でした」。石田のまなざしは、これからの物語にも、きっと優しく寄り添ってくれる。
□石田ひかり(いしだ・ひかり) 東京都出身。1986年にデビューし、映画『ふたり』(1991年)で注目を集め、第15回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。透明感と芯のある演技で広く支持され、映画・ドラマ・舞台で幅広く活躍している。代表作に『あすなろ白書』など。2025年は「アンジーのBARで逢いましょう」『リライト』『ルノワール』など映画が続き、ドラマ『ミッドナイト屋台~ラ・ボンノォ~』『続・続・最後から二番目の恋』にも出演。
