紙コップ提供で物議の“万博のアフタヌーンティー” 投稿者が騒動の誹謗中傷に困惑、英国側からは直接連絡

大阪・関西万博のイギリス館で楽しみにしていたアフタヌーンティーを頼んだら、がく然――。メニューと記載の異なる少ない数のスコーンが提供され、肝心の紅茶は簡素な紙コップで出されたのだ。スタッフ側の応対などを含めて違和感を覚えたため、SNSで報告すると、ネット上で物議を醸した。英国政府側が事態の改善に乗り出した“万博のアフタヌーンティー騒動”。当事者である投稿者には、駐日英国大使館から直接連絡があったという。思わぬ騒動に発展し、誹謗(ひぼう)中傷に困惑しているという投稿者に、詳細を聞いた。

万博のイギリス館で提供された実際のアフタヌーンティー【写真:本人提供】
万博のイギリス館で提供された実際のアフタヌーンティー【写真:本人提供】

1人5000円のイギリス館の「アフタヌーンティーセット」 英国政府側が事態の改善に乗り出す

 大阪・関西万博のイギリス館で楽しみにしていたアフタヌーンティーを頼んだら、がく然――。メニューと記載の異なる少ない数のスコーンが提供され、肝心の紅茶は簡素な紙コップで出されたのだ。スタッフ側の応対などを含めて違和感を覚えたため、SNSで報告すると、ネット上で物議を醸した。英国政府側が事態の改善に乗り出した“万博のアフタヌーンティー騒動”。当事者である投稿者には、駐日英国大使館から直接連絡があったという。思わぬ騒動に発展し、誹謗(ひぼう)中傷に困惑しているという投稿者に、詳細を聞いた。

「万博に行ってきました。とりあえず一番衝撃的なだったことを書きます」(原文ママ)

 問題提起をXに書き連ねたのは、Yasuko(@miyapii8844)さん。本場・英国伝統の味を、万博で味わえる。そんな大きな期待を抱いて4月下旬に、息子ら家族で足を運んだ万博会場。今回はそもそも、ガンダム好きのYasukoさんのために息子がチケットを用意してくれた特別な家族旅行だった。イギリス館で1セット1人5000円のアフタヌーンティーをオーダーしたが、心待ちにしていた雰囲気は変わってしまったという。

「料金的には妥当な価格で、伝統的なアフタヌーンティーをいただけるとのことで、息子も私も本当に楽しみにしていました。しかし、いざ店内に入り運ばれてきたセットにはスコーンが1個しか乗っていなかったです。メニューにはスコーンは2個と確かに書かれてあるのに、テーブルのセットには1個。海外経験の少ない息子と娘は『ま、いいか』と諦めてしまいました」

 夫婦は納得せず、外国人の店員を呼んでスコーンが足りないことを伝えた。「店員は『あ~』と少し困った顔をしながらキッチンへ行き、スコーンを3つ皿に乗せて持ってきました。しかし、クリームティーのセットを頼んだ夫のスコーンもメニューでは2個なのに、運ばれてきているのは1個なので、別の日本人の店員にまだ1個足りないことを伝えると、日本人店員から『大きいスコーンに変わったから1個なんです』と伝えられました」。Yasukoさんは「いつ大きいスコーンに変わったか。私たちは知らないし、もともとのスコーンの大きさも知らない」と困惑したという。

 Yasukoさんはさらにあ然としてしまう。紙コップの一件だ。

「紅茶がティーポットではなく紙コップにティーバッグをぶち込んでるだけの紅茶しかない。それでパサパサのサンドイッチや口の中の水分を全部持っていかれるスコーンを2個食べるとなると当然紅茶1杯では足りない」と投稿で報告。

 食べるのに苦労するため、Yasukoさんは最初の1杯を飲み干すと、店員を呼んでお湯のおかわりを求めた。外国人の店員が上司と思われる外国人に相談しに行き、結局おかわりが提供されたという。

 投稿の最後で、「イギリス人はテキトーなところも多いけど、基本的には優しい国民性だと仕事の経験上思っているし、外国人に対しては自分の意見をしっかり伝えた方が良いと思います」と締めくくった。

 Yasukoさんに改めて、今回の出来事を振り返ってもらった。

 まず、投稿意図について、「メニュー表記と内容が違うこと、紅茶が紙コップでの提供で、お湯のおかわりを要求できずに困っている人をたくさん見かけたので、スタッフに言えば追加のスコーンもお湯のおかわりもできますよ! ということを、自分のエピソードを交えてお知らせしたかったという意図でポストしました」と説明。お目当てのアフタヌーンティーの品質は「納得はしていませんが、満足はしております」と感想を口にする。

「紅茶がポットサーブされていなくて紙コップでの提供には少し驚きましたが、イギリス館で販売されていたカップが7000円前後だったことを思い出し、特に我が家は小さな子どもも連れていましたので、高価な食器を破損したら申し訳ないので致し方ないと思いました。私が見聞きした中では、ポットでなければならないというこだわりもなく、お茶が飲めるならマクドナルドで紙コップにティーバッグのお茶でいいと、そういうイギリス人を多く見てきました。ただ、アフタヌーンティー好きの息子はポットでの提供ではなかったことを非常に残念がっていました」と続ける。一般的な日本人にとって、英国の伝統的な提供方法のイメージを期待するのに無理はないだろう。

 接客について。店内で日本語を話しているスタッフは2人、英語を話している外国人スタッフは5~7人いた。「雰囲気を楽しむためにも、外国人スタッフの存在は必要不可欠です。しかし日本人客は英語を話せない人も多く、何か問題が発生した際、日本人スタッフに頼ろうとします。実際に、最初にスコーンの数が違うことに気付いたのは英語が話せない娘で、娘は日本人スタッフに向かって『すみません』と何度も呼びかけていましたが、なかなか反応してもらえませんでした。夫がスコーンの数がメニューと違うことを伝えて追加で持ってきてもらった際に、店側からの説明はありませんでした。2度目に呼んだスタッフは日本人でしたが、その説明が丁寧ではなく、客側からすると(スコーンの大きさが変わったという)店の都合を押し付けられるような言い訳に聞こえたので少しいらだちました」と率直な思いを明かした。

誹謗中傷に困惑「アドバイスとして書いたものがこれほどまでに罵倒されるとは」

 問題点の結論について、「料金を支払う前に説明するか、メニューを訂正してくれていれば、このようなトラブルは発生しなかったと思います」と強調。お湯のおかわりに関して、外国人スタッフらが判断に迷っている状況が見受けられたことを挙げ、「見ている私たちにもコミュニケーション不足が生じていることは感じました。しっかりとマニュアル化されておらず、変更されたことがあってもスタッフには伝わっていない、もしくは仕事慣れを起こしてしまっており、客への配慮が欠落してしまった結果が今回のことにつながったと思います」と指摘した。

 投稿は3.2万件のリポスト、19万件以上のいいねを集める大反響で、「酷い話ですね…」「ちゃんと主張されたのは偉いと思います」「勇気ある行動素晴らしいです」など驚きと共感の声が寄せられた。ニュースでも取り上げられ、一部では、万博のアフタヌーンティーへの批判も起きた。

 想定外の反響に驚いたというが、思わぬ展開を見せてしまい、困った事態も。「Xでは失礼な人が多くいて、ケーキやスコーンの販売元や原価まで調べ出し、満足したという私の一文だけを切り取り、誹謗(ひぼう)中傷されるポストがとても多くなっています。多くの人がアフタヌーンティーの商品を罵倒するのを見るたびに、とてもつらいです。家族との楽しい思い出の忘備録として、これから万博へ行かれる方へのアドバイスとして書いたものがこれほどまでに罵倒されるとは思ってもみませんでした」。悪質な書き込みや心ないコメントに心を痛めているという。ネット上の誹謗中傷は許されるべきではない。

 一方で、大阪・関西万博で英国政府代表を務めるキャロリン・デービッドソン氏は騒動を受け、「皆様からのご指摘を受け、すでに一部のサービスに関して改善しております」などと声明を発表。アフタヌーンティーの紅茶は現在、陶磁器のティーカップで提供していることを明かした。

 さらに、Yasukoさんは駐日英国大使館から連絡を受けたという。「DMにて直接丁寧なお詫びを頂戴しました。私からもこのたびの件では騒ぎが大きくなり、大使館に対しての誹謗中傷が見受けられることを胸を痛めていること、私の安易な投稿が原因でご迷惑をおかけしてしまったことを心よりお詫びいたしました。大使館からはその後すぐにお詫びのお礼を頂戴し、当事者間での問題は解決したと私は思っております」と現状について説明する。

騒動の鎮静化にメッセージ「どうか無益な争いは控えていただきますようお願いいたします」

 Yasukoさん自身、騒動の収拾に向けて5月1日に新たに投稿。改めて投稿意図などを丁寧に記したうえで、「私は決してイギリス館やイギリス本国、また万博を批判するつもりはなく、自分が万博に行った感想を軽い気持ちで書いたものでした。勝手な願いだとは重々承知しておりますが、このまま誹謗中傷が続きますと万博運営にも支障を来してしまいます。大勢の方々のご努力により開催された万博ですので、来場者の方々も参加してくださっている各国の方々、運営されている方々、皆さまにとって楽しかった記憶に残る万博になることを私は心より願っております。どうか無益な争いは控えていただきますようお願いいたします」と、切なるメッセージを呼びかけた。

 何かと物議が起きてしまう今回の万博。Yasukoさんは、よりよいイベントとして成功することを願っており、思うことがあるという。

「コロナ禍という災害によって世界中の経済が停滞し、人々の考え方もコロナ前と後とでは大きく変わりました。デフレが続く日本での万博は一部の層からすると無駄遣いにしか見えないことも理解しています。

 いまだに円安が続く中、気軽に海外旅行をすることも難しく、関西万博は日本に住みながら世界中の国を知れるいい機会だと私はポジティブに捉えています。ただ、国の代表として出展されている以上、参加国には最低限の節度ある対応をしてもらいたいと思っています。

 自国では許されることも日本では許されないことが多々あります。日本はrude(英語で『失礼な』の意)に敏感な国でもあるので、万博運営側の方々にはその点を参加国に対して理解してもらうことを最重要課題として、各国へ協力を呼びかけていただきたかったと思います。

 ただ単に『来て!来て!』と呼びかけるのではなく、国の代表としてのプライドを示してくれるような万博であれば、一度行った人は二度三度と足を運んでくれると思いますが、今回のようなことがあると、その国の品位を下げてしまうことになり、今後の観光誘致にも影響しかねません。

 万博運営側には参加国に対しての定期的なカンファレンスを行い、顧客満足度の精査をする必要があるのではないでしょうか。すべての人を満足させることは難しいかもしれませんが、多額の税金を投入している限りは、最善を尽くしていただかないと、多くの国民の不満が大きくなってしまいます。万博は人々の記憶に残るものですので、いつか思い出した時に楽しかったねと笑顔で語り合えるような、そんな万博にしてもらいたいと願っています」と結んだ。

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