渡部陽一、両親が戦場カメラマン活動を反対した過去を回想 家族との約束は「用が無くても電話をかける」
戦場カメラマンの渡部陽一が1日、都内で行われた映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』(9日からTOHOシネマズシャンテほかにて公開)のプレミアム先行試写会に登壇。映画コメンテーター・LiLicoとのトークショーで、戦場カメラマンの“リアル”を明かした。

国内でも連絡欠かさず「妻に『渋谷駅に着いた』と」
戦場カメラマンの渡部陽一が1日、都内で行われた映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』(9日からTOHOシネマズシャンテほかにて公開)のプレミアム先行試写会に登壇。映画コメンテーター・LiLicoとのトークショーで、戦場カメラマンの“リアル”を明かした。
本作で描かれるのは、トップモデルから写真家に転身して、戦争の最前線を駆け抜け、20世紀を代表する報道写真家となり、その名を歴史に刻んだリー・ミラーの人生。歴史的一枚「ヒトラーの浴室」を記録した、20世紀を代表する女性報道写真家の情熱的で数奇な運命を描いた実話となっている。
戦場カメラマンとして、ウクライナ、ガザ、アフガニスタンなど、現代の戦争を前線で見てきた渡部。本作の感想を聞かれると、「第二次世界大戦の戦争というものが、いかに武力を前面に出した戦争の時代であったのか、そして従軍するカメラマンという立場が、命を差し出すような撮影を余儀なくされる、そうした戦争の時代であったことが、この作品を見た時にカメラマンとして強く感じたことです」と戦場カメラマン目線で述べた。
リー・ミラーが撮影してきた写真については、「カメラマンとして引きつけられる撮り方、色合い、構図、見ていてハッとさせられることが多かった」と熱弁。自身の経験から「戦争報道は、そこに行ったから戦争に出会えるというよりも、その国で長期間暮らす中で偶発的にかち合う。そのかち合った瞬間にシャッターを切れるのか。これが戦争カメラマンのひとつの運命なんです。行けば撮れるというのは、実はほとんどないんです」と語った。
現代の戦場でも女性が従軍カメラマンとして活動していることはめずらしくないという。「当時僕が20代、イラクで出会ったイギリスから来た女性のカメラマンには、デモや合同礼拝の撮影の仕方を教えていただいた記憶があります」と回想した。
自身が戦場カメラマンとして活動を始めた頃を振り返り、家族と約束したことを告白。両親は戦場に行くことを大反対したというが、「当時は外国に行くと、インターネットもなく、電話もつながらない。そんな中で約束したことは、どんな国に行っても毎日手紙を書き、できる限り電話をかけること。どこに行ってもつながっていることを両親と約束して、カメラマンの道に入ったんです」と話した。
結婚をしてからは妻、息子と約束したこともある。「やはり同じく、どんな時でも必ず毎日何度も電話をかけること、メールを打つこと。ウクライナでもシリアでもパレスチナでも、用が無くても電話をかける。これが家族との約束です」とコメント。現在も逐一連絡を取っているそうで、「つい先ほども渋谷に着いた時、妻に『渋谷駅に着いた』と(連絡した)。こうしたお話会が終わると『今終わった。これから家に帰る』と、しょっちゅう電話をしています」と笑顔を見せた。
携帯電話が普及していなかった時代は、インマルサット(国際衛星電話)やエアメールで連絡を取っていたという。「今は携帯電話がある。SIMカードを切り替えるだけで、日本感覚で通話ができる。ほぼ戦場から毎日テレビ電話をしています。ウクライナやパレスチナからでも。テレビ電話でライブ中継がつながるような状態ですので、すごく温かい気持ちになります」と感謝した。
