訪日外国人に「日本のマナー」啓発、JR東海と人気漫画が異色コラボ LAから女性観光客にも好評「理解しやすいわ」

ゴールデンウイーク(GW)の大型連休後半を控え、今年は大阪・関西万博の開催も相まって、国内外から多くの人出が予想され、新幹線や鉄道といった公共交通機関の混雑も見込まれている。近年のインバウンドによる観光需要の高まりを受け、訪日外国人向けに日本のマナーを紹介しようと、JR東海が、講談社の漫画キャラクターとコラボした企画を展開している。世界に誇れる日本の漫画・アニメのコンテンツを通して、列車乗車時のルールや和食の食事マナーを、親しみやすく伝える内容だ。「マナーを知ってもらうことで、日本の旅行をより楽しんでいただければ」。外国人旅行客による新幹線の荷物トラブルが取り沙汰される中で、JR東海の施策は注目を集めている。

多くの旅行客が行き交う東京駅に啓発広告「MANGA MANNERS」が掲出されている【写真:ENCOUNT編集部】
多くの旅行客が行き交う東京駅に啓発広告「MANGA MANNERS」が掲出されている【写真:ENCOUNT編集部】

『ちいかわ』『東京リベンジャーズ』『進撃の巨人』など講談社の人気17作品とタッグ

 ゴールデンウイーク(GW)の大型連休後半を控え、今年は大阪・関西万博の開催も相まって、国内外から多くの人出が予想され、新幹線や鉄道といった公共交通機関の混雑も見込まれている。近年のインバウンドによる観光需要の高まりを受け、訪日外国人向けに日本のマナーを紹介しようと、JR東海が、講談社の漫画キャラクターとコラボした企画を展開している。世界に誇れる日本の漫画・アニメのコンテンツを通して、列車乗車時のルールや和食の食事マナーを、親しみやすく伝える内容だ。「マナーを知ってもらうことで、日本の旅行をより楽しんでいただければ」。外国人旅行客による新幹線の荷物トラブルが取り沙汰される中で、JR東海の施策は注目を集めている。

 GW前半の4月下旬のJR東京駅。新幹線の改札がある八重洲口は、多くの旅行者が行き交い、スーツケースを携えた外国人旅行者が慌ただしく移動していた。

 改札外の柱に、人気キャラクターのポスターがいくつも掲示されている。英語と日本語の両方で“注意喚起”が記載されており、例えば、『寄生獣』は登場キャラのイラストを活用しながら「電車やバスを利用する際は整列乗車を行いましょう」と啓発。『進撃の巨人』は「列車の写真を撮る際に、柵から乗り出すのはやめましょう」と呼びかけており、『FAIRY TAIL 』は「特大荷物スペースのご利用には事前予約が必要です」と新幹線の荷物ルールを教えている。

 また、日本の文化や和食に関するメッセージも。大ブームを起こしている『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』は「お酒を飲む前はみんなで『カンパイ!』と言いましょう」、『将太の寿司』は「寿司は手で食べてもOKです」、『炎炎ノ消防隊』は「麺を食べるときは、音を立ててOKです」と豆知識を伝授。さらに、『東京リベンジャーズ』は「入浴施設では、体の汚れを流してから 湯船に浸かりましょう」と、温泉人気を意識した入浴マナーを呼びかけている。

 今回の企画は、世界で人気を集める講談社のIP(知的財産)とタッグを組んだ、漫画17作品のキャラクターによる広告「ニッポン文化を、マンガでマナーぼう!」 “MANGA MANNERS”だ。今年4月24日から6月30日(予定)までの期間限定の啓発広告の展示で、東京・品川・名古屋(デジタルサイネージ)・京都・新大阪の各駅に掲出している。さらに、東京・品川・京都・新大阪駅を利用した訪日客を対象に、駅係員からマナー紹介を1冊にまとめたリーフレットを配布している。リーフレットには、新幹線の荷物ルールや予約方法の詳細を伝える英語ホームページへのQRコードを記載している。

 JR東海の担当者は「大阪・関西万博が開催されていることに伴い、海外からますます多くのお客様に東海道新幹線をご利用いただけることが見込まれることから、海外からのお客様を対象に、より快適に日本のご旅行を楽しんでいただけるよう、海外でも人気の講談社様の漫画キャラクターを通して日本のマナーを紹介する企画を、期間限定で行うものです」と趣旨を説明する。

 東京駅で啓発ポスターを見た、米国ロサンゼルスから来たという女性は「とても楽しい雰囲気のポスターね。『こうして』と誰かから言われる形より、日本の漫画キャラクターが紹介してくれるのは、伝わりやすく理解しやすいと思うわ」と感想を語った。

荷物のサイズ測定台を利用する海外客もいた【写真:ENCOUNT編集部】
荷物のサイズ測定台を利用する海外客もいた【写真:ENCOUNT編集部】

「特大荷物コーナー」は事前予約不要の荷物置き場に試験運用へ

 コロナ禍が落ち着きを見せ、空前の来日ブームが到来。日本政府観光局(JNTO)の資料によると、2024年の年間訪日外客数は3686万9900人を記録し、過去最高を更新した。最新となる今年3月の統計は349万7600人となり、3月の月間過去最多をマーク。また、3月までの累計は1053万7300人となり、過去最速で1000万人を突破した。

 インバウンド需要が右肩上がりの一方で、外国人旅行客の言動を巡り、鉄道内の荷物トラブルや飲食店でのマナー違反が問題化。早急なオーバーツーリズム対策が求められている現状があることも確かだ。

 新幹線の予約制の荷物スペースを巡っては、荷物トラブルが続発。予約済みの場所にスーツケースを無断で置いてしまうなど、外国人客によるルール違反がSNSで相次いで報告されている。荷物ルールの周知や注意喚起など、鉄道・観光の業界全体で課題が浮き彫りになっているのだ。ただ、勘違いや理解ミスは誰にでも起こるものであり、海外客への差別・偏見に結び付けることがあってはならない。

 東海道・山陽・九州・西九州新幹線での荷物の持ち込みについては、3辺の合計が160センチ超・250センチ以内の荷物を「特大荷物」と定義付け、車両の最後部にある「特大荷物スペースつき座席」を事前予約するようルールを設けている。予約にあたり追加料金は発生しないが、事前予約せずに特大荷物を持ち込むと、「持込手数料(1000円・税込み)」を支払う有料要件を設けている。250センチ超は「持ち込み不可」だ。

 JR東海にも特大荷物のトラブルを訴える声が届いているといい、継続して対策を検討・実施。駅構内のポスター掲出や駅でのリーフレット配布、新幹線「のぞみ」停車駅では、改札口やきっぷ売り場付近の床面に特大荷物に関する案内シートを貼り付け。特大荷物のホームページでは4言語(英・中簡・中繁・韓)に対応している。また、新幹線の車内放送で予約者専用の荷物置場であることを英語で案内、特大荷物スペースの床面には英語表記をしているほか、「乗務員が定期的に巡回し、荷物の収納状況の確認や持ち主が不明な荷物の確認などを実施しています。成田空港やJR東日本の主要駅、旅行会社カウンターなどにおいても、英語版のリーフレットを設置しており、訪日客向けのジャパン・レール・パスのホームページでもご案内するなどの取り組みを行っています」と強調する。

 実際に東京駅では、荷物のサイズ測定台で、欧米系の外国人客が自身の荷物の大きさをチェックする場面が見られ、改札前や切符売り場の前には、特大荷物などに関する英語の注意喚起ポスターが掲出されていた。

 新たな施策も話題になっている。東海道・山陽新幹線のデッキに設置され、現在は予約が必要な「特大荷物コーナー」について、今年7月1日から、事前予約なしで利用できる荷物置き場として、試験的に変更されることが決まった。JR東海とJR西日本が発表した。

 新幹線内の“荷物置き場の容量が増える”というイメージになるが、特大荷物は収納不可に変わる。予約制の「特大荷物スペースつき座席」は引き続き設定されるとのことだ。

 特大荷物のマナーについて同社は「海外からのお客様に、日本の日常生活や東海道新幹線などの公共交通機関のご利用に役立つマナーを知っていただき、日本のご旅行をより楽しんでいただきたいと考えて選定したマナーの1つに、特大荷物に周知するメッセージがございます。これまで特大荷物についてはさまざまな周知に取り組んできました。今回のMANGA MANNERSの企画も、特大荷物について知ってもらう取り組みの1つです。海外のお客様の目に留まり、より関心を持って車内の荷物置き場について知っていただきたいと考えております」としている。

次のページへ (2/2) 【写真】特別リーフレットを公開、東京駅での啓発の様子も
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