万博パビリオンにも関与 生物学者・福岡伸一氏が生物界に警鐘「未来永劫、人間が頂点にいるなんてことは考えられない」
生物学者である福岡伸一氏が26日、都内で開催された『火の鳥』初の大型展覧会「手塚治虫『火の鳥』展-火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-」の開催を記念したトークイベント「福岡ハカセと恐竜博士が紐解く、『せいめいのれきし』とセンス・オブ・ワンダー」に出席した。

『火の鳥』の大型展覧会に登壇
生物学者である福岡伸一氏が26日、都内で開催された『火の鳥』初の大型展覧会「手塚治虫『火の鳥』展-火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-」の開催を記念したトークイベント「福岡ハカセと恐竜博士が紐解く、『せいめいのれきし』とセンス・オブ・ワンダー」に出席した。
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「手塚治虫『火の鳥』展-火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡(どうてきへいこう)=宇宙生命(コスモゾーン)の象徴-」は、数々の名作を生み出した手塚治さんが、自らのライフワークと宣言したマンガ『火の鳥』の大型展覧会。直筆原稿を中心に、映像、関連資料、そして『火の鳥』の世界観を表現したグラフィック等、計約800点の展示を通して、企画監修を担う生物学者・福岡伸一氏が、この壮大な叙事詩を生命論の視点から読み解く。
福岡氏は「火の鳥」について「小学校5年生の時『鳳凰編』をたまたま読んだんです。奈良時代の大仏が作られている時期が舞台。この作品で『人間とは何か?』『人生とは何か?』『芸術とは何か?』『生きること死ぬこととは何か?』という哲学的な問いが入っていて、子供ながらにショックを受けたんです」と手塚作品との出会いについて語る。
「火の鳥 未来編」では、3404年の地球が描かれ、AIによるブロックごとの支配から核戦争が起こり、地球が滅亡。そしてまた進化をやり直す。
この日は、手塚治虫さんと交流があった著名なイラストレーターである真鍋博さんの息子である古生物学者・真鍋真氏も参加。真鍋氏は「火の鳥」で描かれる進化の歴史について、V.Lバートン著の「せいめいのれきし」や自身の研究をもとに言及する。
真鍋氏は「恐竜がいた時代に、隕石が今のメキシコ湾付近に衝突して、地球の破片や隕石の破片が空中に巻き上げられて、太陽光線が知友に届かなくなってしまった。それまで30度近くあった気温が2年間ぐらい2度ぐらいになり、植物は光合成ができなくなり、動物も植物も絶滅してしまいます。そこで少ない餌で生きていける小動物から哺乳類や、恐竜の一部から鳥類が絶滅から免れたんです」と語る。
福岡氏は、生命の進化について「環境要因が同じであっても、同じ進化を遂げるとは言えないのかなと思う」と語ると「進化はさまざまな偶然の要素によって変わってくる」と、スクラップ&ビルドによって、生命の歴史が繰り返されても、同じ進化を遂げるかは分からないことを強調すると、今生物学上の頂点にいると言われている人間についても「未来永劫、人間が頂点にいるなんてことは考えられない。今下に見ている生物が凌駕する可能性もある。歴史から見て20万年ぐらいの間、人間は急速に繁栄してきましたが、急速に進化・繁栄したものは、急速に衰えていくもの。そこにはウイルスや自然環境の変化などによって、本来主役ではなかったものが、主役に躍り出ることも十分考えられる」と警鐘を鳴らしていた。
福岡氏は、現在開催中の2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の8つの「シグネチャーパビリオン」を手掛けるテーマ事業プロデューサーの1人。「いのち動的平衡館」を手掛け、動的平衡をキーワードに、よりよい社会と地球の未来に向けて、いのちを捉え直すためのフィロソフィーを手渡したいという思いをパビリオンに込めている。
福岡氏は「私は小学校5年生の時、1970年の大阪の万博に行ったのですが、未来を明るくしてくれるお祭りである万博のテーマの中、岡本太郎さんの太陽の塔だけは、かなり異形だった。今から考えるとそれは人類が進歩していないというアンチテーゼだったのかと感じたのですが」と当時の印象を述べると、「今は岡本太郎さんのようなカリスマはいないので、8人で作ったんです。私は“いのち動的平衡館”を手掛け、進化は競争や戦いの中で行われたのではなく、協力や共生の結果、利他性の生命史をお伝えしています」とアピールした。
