内野聖陽が15年ぶりのテレ朝主演作で“型破りな教官”役作りは工事中「正直なところ、“この人、何者なんだろう?”」
俳優・内野聖陽が、4月24日よりスタートするテレビ朝日系連続ドラマ『PJ ~航空救難団~』(木曜午後9時)で主演を務める。本作は、航空自衛隊の精鋭部隊・航空救難団に所属する救難員、通称「PJ(パラレスキュージャンパー)」の活動を軸に、人命救助の極限現場をリアルかつダイナミックに描いた完全オリジナル作品だ。内野にとっては、2009年の『臨場』以来、15年ぶりのテレビ朝日連続ドラマ主演となる。

「俺はコロッケ食ってんじゃねぇ、ソースを食ってんだよ」のセリフに戸惑いも
俳優・内野聖陽が、4月24日よりスタートするテレビ朝日系連続ドラマ『PJ ~航空救難団~』(木曜午後9時)で主演を務める。本作は、航空自衛隊の精鋭部隊・航空救難団に所属する救難員、通称「PJ(パラレスキュージャンパー)」の活動を軸に、人命救助の極限現場をリアルかつダイナミックに描いた完全オリジナル作品だ。内野にとっては、2009年の『臨場』以来、15年ぶりのテレビ朝日連続ドラマ主演となる。(取材・文=平辻哲也)
演じるのは、航空救難団で訓練生を育成する主任教官・宇佐美誠司。極限状態での任務を熟知し、命と真摯(しんし)に向き合ってきた経験を武器に、若者たちにその覚悟と責任をたたき込んでいく。
撮影開始から1か月半ほどがたったが、「この役、まだ“工事中”なんです」と内野は明かす。
「正直なところ、“この人、何者なんだろう?”という感覚が、いまだにあります。でも監督とやり取りを重ねる中で、“こういう人物かもしれない”という輪郭が少しずつ見えてきました」
宇佐美は、熱量の高い人物だ。登場の仕方も一風変わっており、セリフもかなり個性的だという。
「コロッケにものすごい量のソースをかける人なんです。“俺はコロッケ食ってんじゃねぇ、ソースを食ってんだよ”って言うんですよ(笑)。僕自身も、“何なんだこの人?”って、思わず笑ってしまいました。意味分からないですよね。でも、それが宇佐美の魅力でもあって、『分からないけど、なんかひかれる』みたいなキャラなんです」
そのユニークさの裏には、若者を導こうとする強い意志がある。
「訓練生たちと真正面からぶつかりながら育てていく。その姿勢が時にうっとうしいと感じられてしまうほどで(笑)。でも、それくらいの本気がなければ伝わらないこともあると思うんです」
型破りな教官像を、リアルに描ききれるか。そこに内野は難しさとやりがいを感じている。
「ドラマの中では、“こういうキャラいそうだよね”という記号的な人物に見られてしまうこともある。だからこそ、どれだけ自然体で、観る人の心に届く人物として存在できるか。それが僕の課題です」
本作は、原作のない完全オリジナルドラマ。脚本の世界観に寄り添いながらも、役の核心を自身の中から探し出す必要がある。
「正直、まだ不安のほうが大きい。でも、面白い人物になりそうだという感触もある。“嫌われるかもしれない”という危うさを持った役だからこそ、うまくいけば深みのある存在になると信じています」
現場では、訓練生役を務める若手俳優たちが、ラペリングや登攀、水中訓練など、本格的な動きを求められる過酷な撮影に挑んでいる。
「彼らが限界を超えていく姿を、しっかりと捉えて欲しい。そのためには自分のエネルギーも高めて臨まないといけない。“用意、スタート”の段階で心拍数が上がっていないと、画に熱がのらない。だから僕自身も、常に自分を追い込んでいます」
共演する若手たちのひたむきな姿勢には、日々胸を打たれている。
「彼らのまなざしは本当に真っすぐで、“PJになりたい”という役柄上の思いが、そのまま“役者として成長したい”という願いと重なって見える。そういう真剣さに触れると、“もっとこの子たちを見てもらいたい”って、素直に思います」
内野自身も、そんな若手に刺激されながら体づくりに励んでいる。正月の時点で懸垂はゼロ回だったが、いまでは7~8回をこなせるようになったという。
「実際には言われていないんですけど、監督から“学生たちと同じように課題をやってください”と言われたような気がして。教官の私ができないなんて示しがつかんと思い頑張ってます(笑)」
若い世代と本気で向き合い、指導者として支える。それは劇中の宇佐美と、現場の内野の姿が重なる瞬間でもある。
「彼らが本気で頑張っている以上、自分もそれに応えないといけない。共演者として、そして先輩として、責任を持って向き合っています」
まだ完全に捉えきれていない宇佐美というキャラクター。だが、内野はむしろその“不確かさ”にこそ演じる意味があると感じている。
「試行錯誤の途中だからこそ、面白くなる気がしているんです」
命と向き合う任務に携わる男として、若者の成長を見守る教官として――。その人物像を通して、どこまでも誠実に役と向き合う内野の姿は、作品全体を貫く“本気”を体現している。
□内野聖陽(うちの・せいよう)1968年9月16日、神奈川県生まれ。『(ハル)』(96)で、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。演技派俳優として映画やドラマ、舞台と幅広く活躍。主な出演作には、テレビドラマでは、大河ドラマ『風林火山』(07)、『真田丸』(16)、『臨場』(09/EX)、『JIN-仁-』(09/TBS)、『とんび』(13/TBS)、『きのう何食べた?』シリーズ(19/TX)『阿修羅のごとく』(25/Netflix)『ゴールドサンセット』(25/WOWOW)がある。映画では、『家路』(14)、『罪の余白』(15)、『海難1890』(15)、『初恋』(19)、『ホムンクルス』(21)、『鋼の錬金術師』(22)、『春画先生』(23)『八犬伝』(24)『アングリースクワッド公務員と7人の詐欺師』(24)などがある。
スタイリスト:中川原寛(CaNN)
ヘアメイク:佐藤裕子(スタジオAD)
