第44回藤本賞『ラストマイル』『ルックバック』『待タイムスリッパー』が受賞

映画製作者の功績をたたえる「第44回藤本賞」の授賞式が16日、東京・丸の内のパレスホテル東京で開催された。今年は実写、アニメ、時代劇と個性豊かな3作品が受賞し、それぞれの制作者が喜びと感謝の言葉を語った。

「第44回藤本賞」授賞式が行われた【写真:ENCOUNT編集部】
「第44回藤本賞」授賞式が行われた【写真:ENCOUNT編集部】

実写、アニメ、時代劇と個性豊かな3作品が受賞

 映画製作者の功績をたたえる「第44回藤本賞」の授賞式が16日、東京・丸の内のパレスホテル東京で開催された。今年は実写、アニメ、時代劇と個性豊かな3作品が受賞し、それぞれの制作者が喜びと感謝の言葉を語った。

 藤本賞には、映画『ラストマイル』の製作陣が選ばれ、プロデューサーの新井順子氏、脚本の野木亜紀子氏、監督の塚原あゆ子氏が表彰された。

 本作は『アンナチュラル』と『MIU404』の世界観とリンクしたサスペンス作品で、興行収入59.6億円を記録する大ヒットとなった。

 新井氏は「周りから『この賞はなかなか取れないよ』と言われていたので、初めての映画でいただけたのは本当にうれしいです」と喜びを語りつつ、「あとちょっとで60億だったんですが……(笑)。皆さんのおかげで素晴らしいゴールになりました」と笑顔を見せた。

 野木氏は「30年前、日本映画学校で映画を志し、ドラマの脚本を経てようやく映画の世界に戻ってこられました」と振り返り、塚原監督は「火野正平さんから“映画はやり過ぎると面白くてやめられなくなる”と言われたことを思い出します。火野さんは『思うがままに進めばいい』と言ってくださった。頂いたお酒はもっといい仕事をした時に飲みたいと思っています」と感慨深げに語った。

 特別賞は、藤本タツキ氏原作のアニメーション作品『ルックバック』。監督を務めた押山清高氏と、企画・プロデュースを担当した大山良氏が受賞した。58分という中編アニメでありながら、国内外での上映を合わせると、興収は44億円を記録した。

 押山氏は「僕は一アニメーターですが、その立場で藤本賞をいただけるとは思っていませんでした。原作者も“藤本さん”で、不思議な縁を感じています」と語った。アニメーションはわずか8名のスタッフで制作され、押山氏自身も350カットを手掛けたという。

 一方、大山氏は「押山監督が2か月半、スタジオに泊まり込み、3歳と5歳の子どもに会えなかったのは、プロデューサーとして反省すべき点」と制作の舞台裏を明かした。

 奨励賞には、安田淳一監督による自主製作による時代劇『待タイムスリッパー』が選ばれた。制作費2600万円という低予算ながら、池袋シネマ・ロサでの単館スタートを経て全国300館へと拡大。興行収入10億円を達成した。

 監督・製作・脚本・撮影・照明・編集・VFX・衣装・デザイン・予告編制作まで、手掛けた安田監督は「現場のスタッフはわずか10人。そのうち僕と音声以外は大学生や主婦で、精鋭というより“少数”でした(笑)」と語り、「今回はビジネスマン、プロデューサーとして評価されたことがうれしいです。『カメラを止めるな!』の宣伝方法を研究したことが実を結びました」と喜びを語った。

 藤本賞は、数々の映画作品を手がけた映画プロデューサー・藤本真澄(さねずみ)氏の功績を記念して、1981年に創設。日本映画の発展に寄与した優れたプロデューサーに贈られる賞で、今年で第44回を迎えた。

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