【スターダム】「プロレスが楽しくなかった」安納サオリが救われた“盟友”の存在 バチバチの激闘演じ「この痛みは、レスラーとしての快感」

2024年の安納サオリは、スターダムとの専属契約、ワンダー・オブ・スターダム王座獲得、岩田美香との抗争など話題に事欠かない活躍をしてきた。しかし2025年、安納は「プロレスが楽しくなかった」という。その安納を救ったのは、引退を賭けた戦いに臨むCOSMIC ANGELSの盟友・中野たむだった。

中野たむとの8年ぶりのシングル戦を振り返った安納サオリ【写真:橋場了吾】
中野たむとの8年ぶりのシングル戦を振り返った安納サオリ【写真:橋場了吾】

「可愛い」「綺麗」を一切出さない岩田美香に興味があった

 2024年の安納サオリは、スターダムとの専属契約、ワンダー・オブ・スターダム王座獲得、岩田美香との抗争など話題に事欠かない活躍をしてきた。しかし2025年、安納は「プロレスが楽しくなかった」という。その安納を救ったのは、引退を賭けた戦いに臨むCOSMIC ANGELSの盟友・中野たむだった。(取材・文=橋場了吾)

 24年、安納サオリはセンダイガールズプロレスリングの岩田美香と5度にわたりシングルで対戦。結果は2勝2敗1分けという全くの五分。なぜ他団体の岩田にここまでのシンパシーを感じたのか。
※ちなみに前回のインタビューの「ベルト関係なく戦いたい選手」は岩田のことだった。

「1年に5回もシングルってなかなかないですよね。でも、戦えば戦うほどどんどん激しい試合になっていって、岩田のことをたくさん知ることができましたし、去年は岩田一色でしたね。今の時代『可愛い』『綺麗』という女子レスラーが多い中で、実際には綺麗なのにその要素を一切出さない岩田が良いんですよ。当初はそういう女子レスラーって珍しいなと思っていて興味があったんですけど、戦ってみるとぶつけた分予想以上に返してくれるし、だからこそ私の感情もさらに高ぶる。なつみとの戦いとはまた別の思いがありますね」
※インタビュー後に4.27横浜アリーナで「安納サオリ&なつぽい&さくらあやvs里村明衣子&岩田美香&YUNA」が行われることが発表され、安納と岩田はSNSで挑発し合っている。

 その安納もSNSでは「可愛い」「綺麗」を出すことは少ない選手だ。

「正直、以前は出していましたよ(笑)。若いときは自撮りして『おねむー』とかしていましたけど、一切やめました。私の可愛いところは、SNSや試合を見てくれる方が見つけてくれればいいなと思ったんです。とはいえ、日々美意識は高く持って、34歳にしか出せない雰囲気を出せるように……見せ方含め常に研究しています」

 安納は5.31にプロレスデビュー10周年を迎え、記念興行も控えている。キャリアが増すにつれ、体力的な部分の変化はあるのか。

「この10年間、自分の体と一緒に戦ってきたので、使い方がわかってきたという部分で前より上がっていると思います。とある先輩に言われたんですよ、『安納は脱力系だよね』って。力の入れ具合も、瞬間的かつ無意識に変えているみたいですね」

普段は良き仲間のたむとはタッグを組むことも多い安納【写真:(C)スターダム】
普段は良き仲間のたむとはタッグを組むことも多い安納【写真:(C)スターダム】

たむとは戦いたくない気持ちもあったが、戦って「たむは大丈夫」と確信できた

 今年に入ってからスターダムマットを大きく揺らしているのが、上谷沙弥と中野たむによる退団・引退を賭けた戦いだ。たむとCOSMIC ANGELSの盟友である安納にも、その影響は小さくなかった。

「(2.24宇都宮大会の試合後のマイクで)たむが退団を賭けると言い出したときは、ムカつきましたね。『何も聞いてへんぞ』というのと、上谷に向き合うのはいいけど、私たち仲間には向き合わないのかと。ただ、たむは自分の人生を考えて決めたことだから、と自分の中で落とし込みました。でも3.3(後楽園ホール大会)でたむが負けた姿を見たときに、またその感情が出てきてしまって……やっぱりうちらとも向き合ってよという。だから、たむとのシングル戦を要求しました。シングルは8年ぶり4度目だったんですけど、たむがアクトレスガールズ退団する時に耳元で『次は頂点で会おう』って。でも、今回は私の中では頂点だと思っていなくて、約束の前に体で気持ちで本音をぶつかり合わないといけないと思った。たむの全てを受け止めて向き合いたいって。」

 4.2後楽園で二人は対戦、たむがシングル4戦目にして安納から初勝利を挙げたわけだが、この試合を通じて「楽しくなかったプロレスが、また楽しくなった」と安納は語った。

「まだ顔が腫れたまま(取材日は4月7日)なんですよ(笑)。張り手やらエルボーやら50発以上は受けたので。でも、私もしたしお互い本気でぶつけ合いましたね。たむが出してくる攻撃は全部受け止めたかった。向き合いたかった。次の日は動けないくらいのダメージでしたけど、この痛みは、レスラーとしての快感でもあるんです」

 2025年に入って、なんとなく最前線から“引いていた”印象を受けた安納だったが、このたむ戦がある種のきっかけになったという。

「思いっきり自分を出すことができて、『やっぱこれやな』っていうスイッチを入れられましたね。正直、どこかで(たむと)戦いたくないという気持ちがあったのも事実で。でも戦ってよかったです。たむは大丈夫、強い、と確信できましたし。(たむは)いつも泣いていますけど、強い心を持っていますわ……。戦っていなかった8年間(タッグマッチでも二人は1度しか戦っていない)で、心も体も強いたむを感じました」

(17日掲載の後編へ続く)

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