母は女手一つで子3人の極貧生活…現在は強烈恩返し「LAに一括で家を買って、最高級のスイートルームに」

YouTubeの人気リアリティー番組『令和の虎』や『REAL VALUE』で、異色を放つ経営者がいる。ネット広告のクラウドサービス事業を手掛ける「売れるネット広告社」の加藤公一レオ社長だ。異国の地に生まれ、幼いときに両親が離婚、波乱の半生から得た教訓は「リスクのない超堅実な企業経営」。いつか大金持ちになって母親に楽をさせたい――。幼い日の夢をかなえた加藤社長の経営哲学をひも解く。

「売れるネット広告社」の加藤公一レオ社長【写真:売れるネット広告社提供】
「売れるネット広告社」の加藤公一レオ社長【写真:売れるネット広告社提供】

YouTubeの人気リアリティー番組『令和の虎』や『REAL VALUE』に多数出演

 YouTubeの人気リアリティー番組『令和の虎』や『REAL VALUE』で、異色を放つ経営者がいる。ネット広告のクラウドサービス事業を手掛ける「売れるネット広告社」の加藤公一レオ社長だ。異国の地に生まれ、幼いときに両親が離婚、波乱の半生から得た教訓は「リスクのない超堅実な企業経営」。いつか大金持ちになって母親に楽をさせたい――。幼い日の夢をかなえた加藤社長の経営哲学をひも解く。(取材・文=佐藤佑輔)

 大物実業家や投資家が起業を夢見る志願者のプレゼンを受け出資をジャッジする『令和の虎』。前身の『¥マネーの虎』から20年以上続く人気番組で、「虎」と呼ばれる大物起業家たちによる経営ビジョンへの激しい追及が、視聴者から大きな支持を得ている。個性あふれる虎たちの中にあって、加藤氏は穏やかな口調と淡々とした切り口が印象的だ。加藤公一レオという一風変わった本名は、ブラジル・サンパウロ生まれという出自に由来を持つ。

「両親とも日本人ですが、父の仕事の関係で幼い頃はブラジルで育ちました。父方の祖父は九州でも指折りの実業家で、福岡の長者番付に名前を連ねたこともある。父は高度経済成長期、経済成長著しいブラジルで一旗上げようとレストラン経営に乗り出しましたが、事業に失敗して祖父の財産をすべて溶かしてしまったんです。7歳のときに両親が離婚、私は母に連れられアメリカ・ロサンゼルスに移りましたが、女手ひとつで子ども3人を養う極貧生活でした。いつか大金持ちになって母に親孝行してあげたいというのが、私の経営者としての原点です」

 アメリカの高校を卒業後、自身のルーツである日本で経営を学びたいと来日。父とは一度として会うことはなかったが、すでに財産のほとんどを失っていた祖父母のところに下宿し、奨学金を頼りに大学を卒業した。就活では広告業界への志望が固まっていたものの、新卒では縁あって三菱商事に入社。誰もが憧れる大手総合商社で経営のイロハを学んだ。

「他業種と比べても、広告業界は起業しやすい業態。最短距離で社長になるなら広告業界と決めていた。ただ、帰国子女ということもあって就活ではかなり優位に立ち回ることができ、せっかくなら当時人気ナンバー1だった総合商社で営業、財務、経理のすべてを学ぼうと、3年と期限を決めて入社しました」

 3年目で大手広告代理店のADKに転職。周囲が花形のマスメディアブランディングを志望するなか、早期の起業を目指す加藤氏はあえて当時ニッチだったデジタルダイレクトマーケティングの分野に進み、ランディングページと呼ばれるウェブ上の通信販売の仕組みをアメリカから初輸入、パイオニアとしての実績を積み重ねていった。売れるネット広告社を立ち上げたのは2010年、34歳のとき。すでに広告業界では名の知れた存在で、満を持しての起業だった。

「その間、ライブドア事件やリーマンショック、震災などいろいろなことがありましたが、景気が悪くなればなるほど、費用対効果の高いウェブ広告が伸びるのは分かり切っていた。起業家としては遅いスタートでしたが、社会人経験なく失敗した父のトラウマもあり、とにかくリスクのない経営をしたかった。おかげさまで創業15年、初月からずっと黒字無借金経営で、起業後の苦労話はほとんどありません」

「売れる広告」の仕組みについて解説する加藤社長【写真:売れるネット広告社提供】
「売れる広告」の仕組みについて解説する加藤社長【写真:売れるネット広告社提供】

業界内ではその実績から「レスポンス(反響)の魔術師」とも呼ばれる

 業界内ではその実績から「レスポンス(反響)の魔術師」とも呼ばれる加藤氏。斬新な社名にもある「売れる広告」の仕組みとはどのようなものなのか。

「大きく分けて、広告にはイメージ広告とレスポンス広告の2種類があります。イメージ広告はテレビCMでよくある、タレントが企業や商品などのブランド名を繰り返して消費者の認知度をあげる古い広告手法。今どき『テレビで商品名を聞いたから買いに行く』なんてことはほとんどなく、費用対効果があるかは不明瞭です。

 一方、レスポンス広告は見たその場で購買行動を起こさせる広告。ウェブ広告を見た人が思わず買いたくなるような仕掛けが至るところに施されています。弊社ではとにかく膨大な数のABテストを行い、試行回数を重ねることで、一番レスポンスが来る見せ方を追求している。15年間で2600回というABテストの実施回数は日本版ギネスにも登録されています」

 現在では広告業界を代表する経営者として、冒頭の人気番組などからも引っ張りだこの加藤氏。ホリエモンこと堀江貴文氏や、青汁王子で知られる三崎優太氏との交流も深い。

「三崎さんはもともとうちのクライアントで、彼の知名度がほとんどなかった頃にうちのセミナーを受け、そこから3年間で130億円を売り上げました。堀江さんは私がADK時代、講演会にお呼びしてからの付き合いです。彼らはまさしく天才。どちらも国の見せしめで一度はどん底に落ちましたが、そこから数年でこうしてインフルエンサーとして返り咲いている。

 亡くなられた『¥マネーの虎』の岩井(良明)さんもそうでしたが、どれだけ資産があっても舞台裏ではみんな謙虚で、とてもいい人たち。それがカメラが回れば雰囲気が一変する。まさしくプロですね、役者みたいなものですよ。あ、堀江さんだけはあのまんまですけど(笑)」

 経営者としての原点と語る母への親孝行については「もう120%、やりすぎたくらいですよ(笑)。ロサンゼルスに一括で家を買って、年に数回は日本に呼んで、最高級のスイートルームに泊まらせています」。一方で、絶縁した父にも唯一感謝していることがあるという。

「レオというミドルネームです。しし座生まれで、ポルトガル語のライオンから取ってレオと名付けられました。『売れるネット広告社』という社名もそうですが、名前で覚えてもらえることほど得なことはない。そこだけは親父に感謝しています。ここだけの話、戸籍上は息子にも同じ『レオ』というミドルネームをつけている。留学するとき、就職のとき、はたまた起業のとき、必ず役に立つ日が来ると思う。いつの日か、『もしかしてあの加藤公一レオの息子か?』と、そんな風に言われる日が来るといいですね」

 波瀾万丈の半生に思いをはせつつ、加藤氏はそう締めくくった。

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