【スターダム】「私はずっとH.A.T.E.」…闇落ちした悪の不死鳥・上谷沙弥が生涯ヒール宣言

わずか9か月前、彼女は失意のどん底にいた。いや、いたように見えただけなのかもしれない。昨年7月に自らの針路を大きく変えたスターダム・上谷沙弥は、衝撃のヒールターンを果たし、年末に最高王座ワールド・オブ・スターダムを中野たむから奪取。そして、今年に入ってからはテレビ番組で大バズを果たし、たむとの“最終決戦”に挑む。その上谷に、激動の数か月を振り返ってもらった。

今や女子プロレス界の時の人・上谷沙弥【写真:橋場了吾】
今や女子プロレス界の時の人・上谷沙弥【写真:橋場了吾】

ケガで長期欠場を経験して今後のプロレス人生を考えた

 わずか9か月前、彼女は失意のどん底にいた。いや、いたように見えただけなのかもしれない。昨年7月に自らの針路を大きく変えたスターダム・上谷沙弥は、衝撃のヒールターンを果たし、年末に最高王座ワールド・オブ・スターダムを中野たむから奪取。そして、今年に入ってからはテレビ番組で大バズを果たし、たむとの“最終決戦”に挑む。その上谷に、激動の数か月を振り返ってもらった。(取材・文=橋場了吾)

 昨年4月にタッグパートナーとの別れを経験し、6月には当時率いていたQueen’s Quest(以後QQ)のメンバーを失った。しかしその1か月後、7月28日に上谷沙弥は自らの運命を変える行動に出た。ワールド・オブ・スターダム王者・舞華のセコンドについていた上谷は、挑戦者・刀羅ナツコに加担。この裏切りによって刀羅は王座戴冠を果たし、上谷はヒールターン、大江戸隊から生まれ変わったH.A.T.E.に加入した。

「もちろんその日のことは覚えている。一人になった私がQQを立て直すと皆は思っていたかもしれないけど、振り返ってみればその1年前、私は5★STARの開幕戦で中野たむと戦って肘を脱臼して長期欠場をしていたんだ。その中で自分の今後のプロレス人生と向き合う時間があって、すごく考える時間になった。そして、サイン会で『お前を泣かせに来た』という暴言を吐かれたこともあったし、自分のファイトスタイルも見つめ直した。今後プロレス人生を歩んでいく中で、自分はこのままベビーフェイスのまま突き進んでいっていいのかと。それで意を決したんだよ」

 その上谷を迎え入れたのは刀羅ナツコ。上谷から見た彼女はどのような存在なのか。

「(H.A.T.E.に入って)ゼロから新たなプロレスラー像・ヒール像を作り上げていかなきゃいけない段階で、ファイトスタイルやコスチューム、入場曲なんかを考えていたんだけど、ナツコに自分はH.A.T.E.としてどういう存在でいるべきかをナツコに聞いたんだよ。そうしたらナツコは『上谷は上谷のやりたいように、自由にやるのが一番いいから』って。私はその瞬間に自分の好きなように暴れ回っていいんだと思えて、型にはまらず自由に伸び伸びと自分らしくできているかな。QQにいると、謎の固定概念に縛られて堅苦しくなるんだよ(笑)。今は悪いことも楽しいこともずるいことも、好きなスタイルでやれているから、心から楽しんでプロレスをやれているっていえるね」

 H.A.T.E.といえば、上谷と縁が深いのが渡辺桃だ。かつてQQで渡辺がリーダーを務めていたときには、よく組んでいた仲であり、上谷のデビュー戦の相手でもある。

「(渡辺には)耳元で囁かれたこともあったなあ……何を言われたかはお前らには言わないけど(笑)、実はちょっと繋がっていたところがあったんだよ。まあ、なるべくしてまた一緒のユニットになったという感覚だよ。しもべたちもウチらが組むことを期待してたみたいだしね(笑)」

ワールド王者として着実に防衛を重ねている【写真:(C)スターダム】
ワールド王者として着実に防衛を重ねている【写真:(C)スターダム】

WAVEでの経験も今後のプロレスの幅につながる

 上谷はH.A.T.E.加入後に「Phenex Queen」を名乗るようになる。SNSでは「Golden phoenix is died.」という一文も添えた。

「悪魔の不死鳥・Phenex。もともとPhoenixと呼ばれていた私が闇に落ちたんだから、ぴったりだと思うよ。そしてQueen。悪の女王をイメージしたコスチュームなのでね。間違ってもQQは関係ないからな(怒)。あと入場はすごく大事にしている。人の印象は最初の数秒で決まるっていうから、ガウンだったりフラッグだったり、自分にしか表現できないパフォーマンスで『入場だけで金が取れる』っていわれるような入場を意識しているよ」

 上谷がH.A.T.E.に加入して手に入れた最初の勲章は、プロレスリングWAVE管轄のRegina di WAVE王座だった。これは上谷がヒールターンする前にWAVEのリーグ戦を優勝した流れから、挑戦が決まったものだった。

「もちろんスターダムのベルトは一番重要だよ。でも、プロレス界全体で活躍するって考えたときには、他団体のベルトは私の中では新たな挑戦でもあり、プロレス界をひっかき回すという意味でも必要なものだったんだ。ただコミカルな要素は戸惑ったな……アッカンベーした指を舐められてスタートだよ? とはいえ、スターダムでは見せられない一面を見せることができるのは、プロレス人生のキャリアで考えると今後の幅につながると思うね」

 今や上谷の代名詞となったアッカンベーだが、これは偶発的にできたものらしい。

「私がH.A.T.E.に入って初めての試合では、ブーイングも批判のコメントが凄かったんだよね。それに対する反発でXにアッカンベーの顔を載せたら、刺さる人に刺さっちゃったみたいで(笑)。最初はアッカンベーをポーズにしようとなんて思ってなかったんだけど、使い続けてみようかなと思ったんだよ。実はね……ヒールの方が、居心地がいいんだよね。人間誰しも黒い部分があるから(笑)、リングで自由に好き勝手やって、相手を痛ぶるのがとても気持ちいいよ。メンバーも最高だしな。だから、私はこれからもずっとH.A.T.E.にいるつもり」

(6日掲載の後編へ続く)

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