王者・森永康平、まさかの完敗で引退示唆 格闘技に反対していた父・森永卓郎さん「ほらな、と言っていると思う」

経済アナリストでアマチュア格闘家としても活躍する森永康平が痛恨の黒星を喫した。21日のエグゼクティブ向けのアマチュア格闘技大会「EXECUTIVE FIGHT武士道」(ホテル雅叙園東京)で2階級制覇を目指して親川政明とキックボクシング(60キロ級契約、2分2R)で対戦したものの、よもやの判定負け。天国の父・森永卓郎さんに勝利を報告できず、試合後は引退を示唆した。

敗れた森永康平【写真:ENCOUNT編集部】
敗れた森永康平【写真:ENCOUNT編集部】

アマ14戦目に落とし穴 小比類巻貴之「びっくりしました」

 経済アナリストでアマチュア格闘家としても活躍する森永康平が痛恨の黒星を喫した。21日のエグゼクティブ向けのアマチュア格闘技大会「EXECUTIVE FIGHT武士道」(ホテル雅叙園東京)で2階級制覇を目指して親川政明とキックボクシング(60キロ級契約、2分2R)で対戦したものの、よもやの判定負け。天国の父・森永卓郎さんに勝利を報告できず、試合後は引退を示唆した。

「本当に完敗なので何も言うことはないです」

 思いもよらない敗戦を喫した森永は、ぼう然とした表情でうなだれた。

 55キロ級の王者として2階級制覇を掲げ、その足掛かりにする60キロ級の試合だった。普段は80キロから減量しており、試合のイメージはできていたものの、序盤にストレートを被弾すると、階級の違いにいきなり面くらった。

「想像していたより相手のパンチが重かった」

 口から流血した森永はその後もペースを握れない。手数が減り、決め手を欠いたまま、無情のゴングが鳴らされた。

 試合後は「今日負けたら引退しようと思っていた」とマイク。意向は妻にも伝えており、真剣に検討することを明かした。

 ステージ4のすい臓がんで闘病中だった父・森永卓郎さんが1月28日、原発不明がんのため他界。「言い訳する気はないですけど、十分に満足する練習はできなかった」と、調整は難しかった。リングに上がると、珍しく緊張で体が硬くなり、精彩を欠いた。アマ14戦目と経験豊富も「出したいことが出せなかった。1割ぐらい」。格闘技を始めて1年という新鋭経営者に足をすくわれた。大会をプロデュースする小比類巻貴之は、「いやー、すごいっすね。森永さんに勝つ。びっくりしました」と勝者をたたえるしかなかった。

 黄金に輝く55キロ級のベルトを持参し、王者として2階級制覇に前進するはずだったが、「逆にベルト持ってていいのかなっていうのが正直なところ」とトーンダウンした。

 卓郎さんからは、もともと格闘技を反対されていた。「あきれてましたよね。バカじゃないのみたいな。責任感がないって」。3児の父にもかかわらず、危険なリングに上がり続ける息子を厳しい目で見つめていた。

「妻にも今日負けたら引退と言っているし、おやじも辞めろと言っていたので、引退は真摯(しんし)に考えようと思っています。ほらな、と言っていると思うので」

 経済アナリストを生業としながら、格闘技との二刀流を続けてきたのは、格闘技を通じて若い人たちに経済に興味をもってもらいたいという思いがあった。新NISAや年収の壁見直しなど、若者が関心を持つテーマも多く、“闘う経済アナリスト”としての役割を自認していた。

 一方で、「途中からやってて競技の楽しさにハマっちゃって当初の目的を忘れた自分がいる」と、それ以上に格闘技に魅了される自分がいた。後ろめたい気持ちは募る。柔道黒帯の森永は昨年10月から柔術の道場に通っており、今後は打撃のないグラップリングへの転向も選択肢に入れた。

 すでに決まっているキックの試合は残り2戦。「またぶざまに負けるようなことなら……」。失意の森永は揺れる胸中のまま会場を後にした。

次のページへ (2/2) 【写真】小比類巻貴之の前で引退を示唆した森永康平の試合、実際の写真
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