【べらぼう】総勢100人超…壮大な俄祭りの舞台裏 演出担当「可能な限り生き生きと映像に」
俳優の横浜流星が蔦重こと主人公・蔦屋重三郎を演じるNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)。第11回(3月16日)と第12回(同23日)で「俄(にわか)」祭りというワードが登場する。演出を担当する小谷高義氏が取材に応じ、描かれる俄祭りの舞台裏を語った。俄祭りは江戸時代に吉原で人を呼び集めるために行われた即興の芝居や踊りなど。小谷氏は、蔦重が発刊した俄祭りの様子を記した絵本『明月余情』を研究して映像化したとし、スケールの大きな「芸能の戦い」と語った。

第12回ではあまり映像化されていない吉原の俄祭り、可動式のやぐらも登場
俳優の横浜流星が蔦重こと主人公・蔦屋重三郎を演じるNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)。第11回(3月16日)と第12回(同23日)で「俄(にわか)」祭りというワードが登場する。演出を担当する小谷高義氏が取材に応じ、描かれる俄祭りの舞台裏を語った。俄祭りは江戸時代に吉原で人を呼び集めるために行われた即興の芝居や踊りなど。小谷氏は、蔦重が発刊した俄祭りの様子を記した絵本『明月余情』を研究して映像化したとし、スケールの大きな「芸能の戦い」と語った。
「史実によると俄祭りは吉原にて晴れの日は8月1日から30日間続ける秋祭り。相当に金と労力のかかる祭りです。蔦重の『明月余情』は俄祭りを3巻に分けて順番に発刊して紹介していますが、今にも動き出しそうな絵でまるで実況中継のようです。一方、ライバルの西村屋が出版したのは決めポーズを描いたような錦絵。今回は蔦重が絵本に閉じ込めた臨場感や面白さを出発点に、可能な限り生き生きと映像にしたいと思いました」
具体的にはどんなことが行われたのか。
「獅子舞や女性の芸者が男の格好をして踊るなど芸者が主役の面が大きいですが、第12回では歌舞伎を女性が、それも禿という女郎見習いの子どもがやるといったことを映像化しています。忘八も入り乱れて様々な出し物を繰り広げるので、視聴者の方にはまずは祭りを単純に面白がっていただけたらいいなと思います。楽しんでいただくために芸能指導、所作指導の先生方に音曲や舞をほぼ一から作ってもらっています」
俄祭りは一見しただけでは分からないことも多々ある。豆知識を提供してくれた。
「女郎は一切、出し物に出ないそうです。徹底しています。出演するのは芸者さんや禿たち。女郎たちは祭りの最中であっても客の横で相手をすることが仕事ですし、あくまで夜は客をとることが大切なので、俄祭りはお昼から夕方まで。夜には行われないんです」
第12回で描かれる俄祭りはスケールが大きいという。
「残された絵から推測して、可動式のやぐらを使って仲の町の大通りを出し物が練り歩く映像も作ろうと思いました。また、雀踊りという演目はプロの舞踊家さん約20人や楽器の演奏者15人、観客を含め総勢100人を優に越える規模のシーンになります。クライマックスは全員を巻き込んだ踊り。大文字屋のアクティブな踊りと対立する若木屋の色気のある踊りが対決するシーンです。『べらぼう』では合戦のシーンがない代わりに芸能の戦いを見せられればと思いました。これまで俄祭りはあまり映像化されていないと思いますし、ここまでいろんな出し物を表現できることはなかなかないので、見たことのないものとして楽しんでもらえたらと思います。でも、今の時代の人が見たらどう思うのだろうかという面も。ただのお祭り騒ぎで終わらなければいいなとも思っています」
俄祭りには俳優・寛一郎が演じる江戸浄瑠璃の語り手・富本豊前太夫が関与してくる。
「三味線と語りで物語を伝える浄瑠璃の流派の一つに富本節というのがあり、富本豊前太夫は人気を集めた人物。語られる言葉は本に残されたものなどを生かしましたが、どのような節をつけるべきかについては少ない資料から芸能指導の先生にお考えいただきました。富本節は恋の歌が多いことから、朗々と響かせるというより艶っぽさが魅力となってほしいという思いでした。寛一郎さんにお願いしたのは品と色気を感じたからです。大変なチャレンジを引き受けていただきましたが、ご自身の声の特性を生かしてこちらが求めたものよりグーンと素敵なものにしてくれたと思います」
