20th Centuryの坂本昌行が主演を務め、NEWSの増田貴久、柚希礼音、夢咲ねねらが出演するミュージカル『ホリデイ・イン』（演出・ビル・ディーマー）が、4月に東京、4、5月に大阪で上演される。同作では、宝塚歌劇団退団10年を迎える元星組トップコンビ、柚希と夢咲が退団後のミュージカルで初共演する。「ちえねね」として人気を博した2人はプライベートでも仲が良く、この対談で宝塚時代の思い出から現在の関係性などを語った。（取材・文＝Miki D’Angelo Yamashita）

　柚希と夢咲は、宝塚歌劇団で6年間コンビを組んでいた。同劇団100周年を盛り上げ、15年に退団した後もそれぞれ舞台などで活躍している。そして、実現する共演。ともに喜び、テンションを上げている。プライベートでの交流はSNSでも明かしており、そろっての観劇のポストも多数。星組トップ・礼真琴の日本武道館コンサートにも2人で応援に出かけている。

柚希「武道館コンサートには、ねねと行きましたが、もう大感激でした。大騒ぎしすぎて声が枯れたぐらいです。終演後、面会に行き感動を伝えたのですが、下級生のころ私にお手紙をくれていたあの子がこんな立派になって、と感激もひとしおでしたね。みんなに愛されるトップとして立派に星組を継いでくれた姿に涙でした」

夢咲「私はこっちゃん（礼の愛称）の母親役や姉役もやっていますが、当時からもうかわいくて母性本能をくすぐるというか、息子として猫かわいがりしてました。技術面に優れているのですが、それに伴って内面も磨かれており、星組を背負って受け継いでくれていることにあらためて感動しましたね」

柚希「ねねとはお互いの舞台を観劇して、感想を言い合ったりもよくします。2024年はデビュー25周年で、大先輩の越路吹雪さんの生誕100年へのオマージュを込めてシャンソン・アルバムを作り、リサイタルを開催したのですが、忙しいのに見に来てくれて」

夢咲「あれだけの大曲を何曲も。しかも、それぞれ全然違う女性の心情を歌われて、そこに市毛良枝さんのナレーションで越路さんのストーリーも加わって、1曲が完成されていくプロセスをたどることができ感動しました」

柚希「ありがとう。演出の小林香さんから『ダンサーの柚希さんなんだから、最後は少し踊ったらさらに楽しんでいただけるのでは』と言っていただき、2部は踊らせていただくことになり、シャンソンの曲でフィナーレナンバーをつけました」

夢咲「あんなに歌われているのに、さらにショーナンバーもあって盛りだくさんでしたね」

柚希「ねねの出演作すべては見ていませんが、宝塚時代、この音が苦手だったのにそれを克服していっている。そういう進化を見ると感動します」

夢咲「私は男役さんとしての姿をずっと見ていたので、退団してから幅広い女性を演じられている姿を見て感慨深いです。今ではお姉ちゃんみたいな存在で、それぐらい近しい方です。『RUNWAY』の時もめちゃくちゃ甘えさせていただいて、ずっとくっついていました」

柚希「最近、私が見たたねねの舞台は『モダン・ミリー』。伸び伸びと楽しそうで、もう舞台を荒らしてましたね（笑）。『リフトされる時はちゃんと体を引き上げてる』とかいまだに気になってしまって」

夢咲「『あ～、ちえさんが見にいらしている』とやっぱり気になります」

柚希「当時は全場面ぐらいダメ出ししてましたから。自分自身への注意でもあります。ねねは自分の一部だから、ここをもっとこうしたらお互いが良くなると考えていました」

柚希「『RUNWAY』は、半分が宝塚の曲だったので楽しかったのですが、ねねと一緒に踊るのは、一場面しかなくて2人で自主稽古しました。『そんなあっさり回ったらいかん』とダメ出しをしたり(笑)」

夢咲「それを見て下級生の子たちが、『これが伝説の自主稽古！』と言ってました（笑）」

柚希「ねねは、何があっても絶対についてきてくれるんです。退団の千秋楽まで、明日はもう公演がないのにダメ出ししてました（笑）。でも、『明日からもうないのか』と気づいたら、それができなくなるのがさびしかった。『明日からねねを指導しなくていいんだ』と思うと。ねねが良くなることと、自分が向上することが常にセットだったんです」

夢咲「できあがるまでに時間がかかる人間なのですが、それを見捨てず愛を持って教えてくださっていたので、それは裏切ることができない。そう接してくださる相手役さんで幸せ者だなとあらためて思います」

柚希「宝塚時代のコンビを知っている方には、『今回の舞台ではそう絡むのか』と新鮮に感じていただけるのではないでしょうか。2人とも楽しんで演じますので、ぜひ、その姿を見ていただきたいです」

夢咲「ライラのような役は退団してから初めてですので、ちえさんにアドバイスをしていただきながら頑張ります」

柚希「ショー要素もたっぷりあり、音楽も名曲ぞろい。振り付けも華やかで、ストーリーは愛らしい。すべてがそろった最高の作品ですので、ぜひ、見にいらしてください」

夢咲「登場人物一人ひとりのキャラクターが濃くて、それぞれの歩みを見て何通りものドラマを満喫できます。終始ハッピーな作品なので、ハッピーを感じたい方は、何度でも劇場にお越しください」

□柚希礼音（ゆずき・れおん）　大阪府出身。1999年、宝塚歌劇団入団、星組に配属。2009年、星組トップスターとなり、稀代のダンサーとして人気を博す。14年には日本武道館での単独コンサートを実現。15年の『黒豹の如く／Dear DIAMOND!!』を最後に宝塚歌劇団を退団。以降、舞台やミュージカルを中心に活動。今年は4月に『ホリデイ・イン』、10月に『マタ・ハリ』を控える。今年1月には、初シャンソン・アルバム『Les Nouvelles Chansons』をリリースした。

□夢咲ねね（ゆめさき・ねね）　富山県出身。2003年に宝塚歌劇団入団、月組に配属。09年、星組トップ娘役就任し、『ロミオとジュリエット』『眠らない男・ナポレオン―愛と栄光の涯（はて）に―』『オーシャンズ11』などに出演。15年の『黒豹の如く／Dear DIAMOND!!』で宝塚歌劇団を退団。以降も『1789-バスティーユの恋人たち-』『東京ラブストーリー』『ファインディング・ネバーランド』など舞台を中心に活動。妹は、宝塚歌劇団元雪組トップ娘役、愛加あゆ。

□ミュージカル『ホリデイ・イン』
4月1日（火）～16日（水）　東京・東急シアターオーブ
4月22日（火）～5月1日（木）　大阪・Skyシアター MBS

『ホリデイ・イン』は、1942年に公開されたビング・クロスビーとフレッド・アステアの主演映画「Holiday Inn」（邦題「スウィング・ホテル」）を基に、2014年に米国・コネチカットで誕生したミュージカル。同作は16年にニューヨークのブロードウェイに進出し、今回は日本初演となる。演出・振り付けは、ビル・ディーマー氏。翻訳・訳詞は高橋亜子氏が担う。坂本が演じるのは、主人公のジム・ハーディ。増田はジムの親友でパフォーマーとしてのパートナーであるテッド・ハノーバー役、柚希はジムとひかれ合うリンダ・メーソン役、夢咲はジムの元恋人でテッドとショーを続けるライラ・ディクソン役を務める。

　物語は、舞台俳優のジム（坂本）が米国のショービジネスを引退し、コネチカット州の農場に移住を決意するところから始まる。しかし、ジムの恋人・ライラ（夢咲）はショービジネスの世界を諦めきれず、ジムの友人のテッド（増田）とダンスパートナーとなり、ショーを続けることに。その頃、1人移住したジムは農場の管理人と祝日限定でショーを上演するホテルのホリデイ・インを営業することを思いつく。そこで出会った学校教師のリンダ(柚希)らとともに華麗なショーを繰り広げ、ホリデイ・インは大成功。ジムとリンダには特別な感情が芽生える。そして、テッド、ライラを踏まえて4人の愛と夢が交錯していく。

音楽：アービング・バーリン
脚本：ゴードン・グリーンバーグ、チャド・ホッジ
演出・振り付け：ビル・ディーマー
演出補・振り付け補：アシュリー・グラハム
翻訳・訳詞：高橋亜子
出演：坂本昌行、増田貴久、柚希礼音、夢咲ねね、保坂知寿、武藤寛、斎藤准一郎、藍実成、石川里奈、鯨井未呼斗、小島亜莉沙、鈴木万祐子、根岸みゆ、春口凌芽、MAOTO、森内翔大、吉田彩美、米島史子、岩下貴史、皆川梨奈（スウィング）

スタイリスト：間山雄紀（M0）＝柚希
ヘアメイク：佐藤エイコ（ilumini.）＝柚希
ヘアメイク：山本絵里子＝夢咲

公式サイトhttps://www.holiday-inn-musical.jp/