高校大学米留学→外資系企業→俳優 『SHOGUN』話題の平岳大、英語の演技が「僕の生きる道」

俳優の平岳大(50)が米映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(今月14日公開、ジュリアス・オナー監督)に日本の首相役で出演する。昨年は米ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』で主人公の宿敵役を好演し、エミー賞の助演男優賞にノミネートされるなど、近年ハリウッドでの活躍が著しい。英語での演技を「僕の生きる道」と語る平に、本作への思いとともに今後の展望を聞いた。

インタビューに応じた平岳大【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた平岳大【写真:ENCOUNT編集部】

『キャプテン・アメリカ:BNW』で日本の首相役を熱演

 俳優の平岳大(50)が米映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(今月14日公開、ジュリアス・オナー監督)に日本の首相役で出演する。昨年は米ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』で主人公の宿敵役を好演し、エミー賞の助演男優賞にノミネートされるなど、近年ハリウッドでの活躍が著しい。英語での演技を「僕の生きる道」と語る平に、本作への思いとともに今後の展望を聞いた。(取材・文=猪俣創平)

 父は昭和の名優・平幹二朗さん(享年82)、母は俳優・佐久間良子(85)という芸能界の“サラブレッド”が、マーベル・スタジオの劇場公開最新作でも熱演を繰り広げた。本作は主人公のサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)がキャプテン・アメリカとして活躍する姿を描き、平は、日本の尾崎首相役を英語のセリフで演じた。「マーベル作品に出られることはすごくうれしいのですが、英語の芝居をできる、英語の会話がある役をいただけたことが僕は一番うれしかった」と望んでいた役に素直に喜んだ。

 本作では、米国大統領のサディアス・ロスを演じるハリソン・フォードと1対1のシーンも撮影。世界的名優との“夢の共演”に、「“本当にいるんだ”みたいな、実在の人物なんですねっていう感じでした」と感激した。自身は183センチの長身で、185センチのフォードとの場面は見応えもある。共演シーンについて、「いざこざの始まりみたいなシーンだったので、がっつりと胸を借りました。僕の役は彼に面と向かって皮肉を言ったり、批判したりするんです。バチバチのシーンでした」と緊張しながらも堂々とわたり合あった。

 もっとも、「カメラワークを誰よりも分かっている方だから、セリフとカメラワークのタイミングがバチーンと合った時の彼の集中力と演技を目の当たりにしたら、“映画『逃亡者』(1993年公開)のハリソン・フォードだ!”と素に戻ってしまいました(笑)。やっぱりすごいです」と少年のように瞳を輝かせた。

 俳優として着実に実績を重ねるが、実は異色の経歴の持ち主だ。15歳で高校から米国に留学し、ブラウン大理学部応用数学科、コロンビア大の大学院修士課程へと進み、帰国後は外資系企業に勤務した。だが2002年に自身の“DNA”に呼び覚まされたのか、両親は「大反対だった」ものの、27歳で俳優に転身。両親が出演する舞台『鹿鳴館』でデビューした。

“2世俳優”の苦悩はあったのか尋ねると、「それが全然なかったんです。だからダメだったと思うんですよ」と笑いつつ、「自分の歳で父は何をやっていたのかと思ったことはありましたけど、考えても何の足しにもならないなって。違う人間だし、世間の人が『あれ、息子よ』と言って楽しんでもらうのはいいですけど、そこに自分が何かを感じるのは何の意味もないと思っているので」と周囲に流されない価値観が今を築いた。

 その後、日本でキャリアを重ねる一方で、デビュー当時から「いつかやってみたい」と海外作品に興味があったという。

「デビューした当初は、日本で仕事をしながら演技を学んでいる状態だったので、まだ何にもないゼロの状態でアメリカに行ってオーディションを受け続けることはできないと思っていたんです。だから調子のいい話ですけど、もし海外に行くんだったら、何かの作品に乗っかっていきたいと思っていたんです」

左から平岳大、アンソニー・マッキー、ハリソン・フォード【写真:(C)2025 MARVEL.】
左から平岳大、アンソニー・マッキー、ハリソン・フォード【写真:(C)2025 MARVEL.】

渡米直後のコロナ禍も乗り越える

 そして2020年、オーディションでドラマ『Giri / Haji』の主演を勝ち取り、同年の英国アカデミー賞テレビ部門の主演男優賞にもノミネートされた。「今だ!」とハリウッドへの本格挑戦を決意し、同年、家族でハワイへ移住した。しかし、すぐさま新型コロナウイルスによるパンデミックにさらされた。

「(2020年)3月頃に行って、2週間後にはロックダウンになって、そこから1年ぐらいは全く仕事がなかったんです。でも、実は8月ぐらいにはハリウッドの撮影は戻っていて、オーディションも受けていたんですけど、その頃は落ちまくっていました。『あれ? 仕事がないのはコロナのせいか? 俺のせいか?』と悩みましたね。12月になっても『全然うまくいってないな、マズイな』って」と苦悩の日々を振り返る。だがそこで諦めずに挑み続けたら道が開け、「もうちょっと頑張ってみようと粘っていたら、ドラマ『THE SWARM/ザ・スウォーム』のお話をいただいて、そこから一つずつオファーをいただけるようになりました」。

 以来、快進撃が続く。ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』(23年)、映画『グランツーリスモ』(同年)などハリウッドで確実に出演作を増やし、24年には、全米の優れたテレビ番組などに贈られるエミー賞で作品賞はじめ最多18部門で受賞するという快挙を成し遂げたドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』への出演を果たした。

 同作は、ハリウッドで活躍中の先輩俳優・真田広之が主演・プロデュースを務めた戦国スペクタクルで、平は、主人公の武将虎永(真田)の宿敵、石田三成を基にしたキャラクター・石堂和成を好演。自身もエミー賞の助演男優賞にノミネートされるなど高く評価され、反響の大きさに「大変ありがたかった」と感謝した。一方で、全編日本語のセリフだったこともあり「俺は英語の芝居をするためにアメリカに来てたんだ」と“初心”を思い出したという。

 そんな折、『SHOGUN』の撮影を終えた頃、『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の出演オファーが届いた。「キャスティングディレクターからオファーが来たので、向こうで“こういう人いるよ”みたいな話になったんだと思います。突然、幸運が舞い降りてきました」と心境を明かした。

 今作への出演に「英語の芝居がしたくてアメリカに行ったので、1つ駒が進んだ、扉が開いた感じがした」とし、「マーベルをやっているキャスティングディレクターの方が、アメリカでたくさんの作品を手掛けているんです。その人が俺のことを知っていたという事実だけで、アメリカでの俳優修業が前に進んでいる感覚がありましたね」と感慨深く語った。

 ハリウッドに挑戦してから5年。今作が一つの到達点になった。平は英語での演技が「僕の生きる道なんです」と話す。

「例えばアメリカで生まれたアジア人の役は、英語のアクセントとかすごく難しいんです。でもなるべくそこに近づこうと思っていますし、日本人でもどんな国の役でもちゃんと英語で芝居が成り立つ存在を目指していきたいです。高校、大学とアメリカに行って英語をやってきて、演技を日本で学んで、自分にしかできないと言うとおこがましいですけど、自分を生かせる場所はそこなんじゃないかと思います」と言葉に力を込める。続けて「今でも毎日英語を勉強しています。その挑戦が好きですね」と前を向いた。

『SHOGUN』に続く出演作が、世界的な人気を誇るマーベル・スタジオ映画となり、「運だけはいい男なんです」と笑顔。“唯一無二の2世”は本作を足がかりにハリウッド俳優としてさらなる高みを目指す。

□平岳大(ひら・たけひろ)1974年7月27日、東京都出身。暁星高校在学中の15歳のときに単身渡米。アメリカで高校、大学に進学。その後、一般企業への就職を経て、2002年に舞台『鹿鳴館』で俳優デビュー。08年に舞台『ジンギスカン』で主演を務め、同年にNHK大河ドラマ『篤姫』に徳川慶喜役で出演。16年の『真田丸』では武田勝頼役を演じた。20年に海外でも活躍するため家族でハワイに移住した。183センチ。

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