24歳・由薫の変化の1年「原点に立ち返る時期がきた」 “第1章”から“第2章”へ突入
2022年のメジャーデビュー以来、精力的に活動を続けるシンガー・ソングライター由薫の「第2章」がスタートした。24歳の彼女にとって、これから先も音楽活動を続けていく上で、2025年は重要な転機の1年となりそうだ。
2025年のテーマは「見つめる」…「原点をもう1回体験」
2022年のメジャーデビュー以来、精力的に活動を続けるシンガー・ソングライター由薫の「第2章」がスタートした。24歳の彼女にとって、これから先も音楽活動を続けていく上で、2025年は重要な転機の1年となりそうだ。(取材・文=中村彰洋)
『星月夜』をはじめ、ヒット曲を多数リリースするなど、デビューから多忙な日々を駆け抜けてきた。そんな由薫が25年のテーマに掲げた言葉は「見つめる」だった。
「周りのスタッフさんたちとも話し合って、たどり着いた今年の抱負が『見つめる』でした。リリースすることも大事ですが、自分自身や周りの世界をじっくり見つめて、そこから曲が生まれてくるという原点をもう1回体験したいと思っています」
デビューからの約3年間はまさに激動の日々だったが、「音楽で食べていくということは、そうあるべきだと思っていた」と振り返る。
「昔から夢見がちであると同時に、現実主義な一面がありました。10代の時から音楽で食べていくのは大変なことだと思いながら、これまで続けてきました。忙しかった時期も、それが当然で、そうあるべきだと思っていました。でも、そんな嵐のような日々が落ち着いた時、じっくりと考えるからこそ生まれてくるものもあるなと、ふと思い直しました。原点に立ち返る時期がきたのかなって(笑)」
由薫は、これまでの音楽活動を「第1章」と位置づけ、これからを「第2章」と表現している。
「前髪を切ったあたり(24年9月ごろ)からの活動を『第2章』と呼んでいます(笑)。より深い域で音楽をしたいなと思っていて、そのためにたくさん考えたり、回り道をしたり、無駄だと思われるようなことも大事にしていきたいです。
今年は曲をいっぱい書きたいと思っています。リリース曲は多いですが、デビュー前に比べると、作っている曲自体の数は減っていました。自分の泉みたいなものが消費されている感覚があって、今はもう1度、自分の中の泉を豊かにして、そこから純粋に生まれる音楽をみんなに聞いてほしいと思っています」
ライブ会場から泣きながら帰った過去「悔しくて泣いてばかりでした」
紙とペンを置いた机に向かって座り、ギターを手に作曲を行う。それがデビュー前に行っていた楽曲作りのスタイルだった。今年は「初心に帰る」ことを意識していく。
「これまで、誰かと共作させてもらうことが多く、すごくワクワクしながらやらせてもらっていました。でも、今年は改めて『自分の中から生まれてくるものって何なんだろう』というのを知りたくなったんです。10代の頃は日記を書くみたいに曲を書いていました。自分がモヤモヤしたことやうれしかったこと、誰にも頼まれていないのに、1日1曲ぐらい書いていた時期があって、そういうピュアな音楽の誕生をもう1度味わいたくなりました」
2月3日からは東京・南青山のsong & supper BAROOMで上演される朗読劇・Song Storytelling in BAROOM『ピーター・パンとウェンディ』でピーター・パン役に挑戦する。今年の初舞台が音楽以外のジャンル。「劇で1年が幕を開けるのも、今年を象徴する出来事だなと思っています」と笑う。
15歳でアコースティックギターを手にして始まった音楽人生。音楽とどのように向き合っていけばいいのかに悩んだ時期もあった。
「当時、勉強熱心な学校に通っていました。みんなが将来の進路を考えている時期に、私は勉強もしないでギターばかり触っていて、『このままだと何にもなれない』と感じていました。それどころか、ギターも本当にやりたいのかも分からない状況でした。だったら、音楽シーンに身を投じてみて、それでもやりたいのかを自分に問いかけてみようと思ったんです。
オーディションを受けたのもそうですし、2020年ごろには、いろんなライブハウスで弾き語りライブをやらせてもらいました。その時、しんどいことがすごく多かったのに、それでもギターを手放せない自分がいたんです。飽きっぽい性格なのに、これだけはやめられないんだなと改めて感じて、『これで食べていくぞ!』と決意しました」
自分自身の気持ちが固まってからは、ただ前に突き進むだけだった。「若さゆえの謎の自信にも助けられました」と笑顔で当時を振り返る。
「弾き語りライブの帰り道は、自分に納得がいかなかったり、お客さんからの言葉を気にしすぎてしまったり、悔しくて泣いてばかりでした。でも音楽をやめるという発想が思い浮かばなくて……。今振り返ってみると、それすらも楽しかったんでしょうね。その当時は『自分に打ち勝つ』が目標でした」
2025年は変化の1年「今まさに変わろうとしている時期なので見守っていて」
現在、音楽活動を続ける中で「みんなに聞いてもらうこと」をゴールに据えながら、楽曲制作に臨んでいる。
「曲の存在は箱みたいなものだと思っているんです。私の具体的な思い出をみんなに聴いてもらうよりも、私が書いた曲という箱の中で、悲しんだり喜んだり、いろんな気持ちになってほしいです。これを聞いたらみんながどう思うのかを考えながら制作して、実際に感想をもらうことがとても好きで、コミュニケーションだなと感じることができるんです」
3月からはEP『Wild Nights』のリリースを皮切りに東名阪ツアーも控えている。「やることいっぱいで、あまりのんびりはできないということに、最近になって気付きました」と笑う。「でも気持ち1つで全然違うんです。『見つめる』という目標にしてからは、心にゆとりが生まれて、常にワクワクしています。何かを知りたいという欲求が日に日に強くなってきています」。
由薫にとって、今年はさまざまな挑戦をする1年になる。まさに変化の時を迎えようとしている。
「最近は日本の名曲と言われるような楽曲をよく聞くようになりました。坂本龍一さんの自伝を読んだりして、歴史を知っていく中で、私自身もそういった歴史を作りたいと思うようになりました。自分と周りの世界とのつながりを感じながら、意味のあるリリースやライブをしていきたいという欲望が最近生まれてきています。
これから音楽を続けていく中で、いろんなタイミングでの足跡を残すことで、私の人としての生き方を通して何かを伝えられるようになりたいです。そういう人生にするためにも、今は目の前のことを頑張っている感じです。今年は音楽的にも必ず変化があると思うので、ぜひこれからどんなことをやっていくのか、今まさに変わろうとしている時期なので見守っていてほしいです」
まだまだ24歳。2025年という1年が、由薫の今後の長い音楽人生にどのようなスパイスを加えることになるのだろうか。
「今、第2章の最初の数ページが始まっているのと同じように、きっと何回もこれを繰り返して、そのたびに初心に帰っては、ピュアな気持ちを思い出す。そんなことを何十年も続けていくんだろうなって思っています」
□由薫(ユウカ)2000年7月9日、沖縄生まれ。幼少期をアメリカ、スイスで過ごす。22年にメジャーデビュー。23年には『星月夜』が大ヒット。以降も多数の楽曲をリリース。25年3月にはEP『Wild Nights』の配信リリースと東名阪ツアーが予定されている。2月3日からは、初の朗読劇Song Storytelling in BAROOM『ピーター・パンとウェンディ』に出演する。