大地真央、コメディーへの心構え スーパーマダムに名物女将…どんな役柄でも「どこかに笑えるところがある」

俳優の大地真央が、現在放送中の東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『最高のオバハン中島ハルコ~マダム・イン・ちょこっとだけバンコク~』(土曜午後11時40分)に主演している。林真理子氏の小説『最高のオバハン』シリーズが原作で、大地演じるセレブで毒舌な美容外科医・中島ハルコが、世の中の悩みを斬っていく痛快エンターテイメント。2021年にドラマ化され、今回でシリーズ第3弾となる。大地といえば、現在放送中のCM『アイフル』で見せるコミカルな演技も話題で、絶妙な間で作品を盛り上げている。宝塚時代からコメディーセンスには定評があり、ハルコ役もハマリ役のひとつ。今回、現場での“絆”や役への向き合い方などについて語った。

『最高のオバハン 中島ハルコ』第3シリーズに主演する大地真央【写真:北野翔也】
『最高のオバハン 中島ハルコ』第3シリーズに主演する大地真央【写真:北野翔也】

主演ドラマ『最高のオバハン中島ハルコ~マダム・イン・ちょこっとだけバンコク~』で痛快に世相を斬る

 俳優の大地真央が、現在放送中の東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『最高のオバハン中島ハルコ~マダム・イン・ちょこっとだけバンコク~』(土曜午後11時40分)に主演している。林真理子氏の小説『最高のオバハン』シリーズが原作で、大地演じるセレブで毒舌な美容外科医・中島ハルコが、世の中の悩みを斬っていく痛快エンターテイメント。2021年にドラマ化され、今回でシリーズ第3弾となる。大地といえば、現在放送中のCM『アイフル』で見せるコミカルな演技も話題で、絶妙な間で作品を盛り上げている。宝塚時代からコメディーセンスには定評があり、ハルコ役もハマリ役のひとつ。今回、現場での“絆”や役への向き合い方などについて語った。(取材・文=大宮高史)

 あの“スーパーマダム”が今度はアジアで大奮闘――。『最高のオバハン中島ハルコ』は、2021年に連続ドラマが放送され、翌22年に連ドラ第2弾、23年には舞台化もされた人気作。生まれも育ちも名古屋の美容外科医・中島ハルコはゴージャスで上品で常に凛としており、大地のパブリックイメージにぴったりと白羽の矢が立ち、当たり役になった。「クヨクヨ悩むだけ時間の無駄! つまり本来稼げるお金の無駄なのよ」「人は弱っている時こそ、負けない心を持たなくては。悪い人間につけこまれるだけよ」――。ハルコの強烈ながらも“愛のこもった本音”は視聴者をスカッとさせてきた。

 シリーズ第3弾となる今作は、アジア進出を果たしパワーアップ。相棒のグルメ雑誌編集者・菊池いづみ(松本まりか)とともに日本のほか、タイやカンボジアでも奔走する。

「今の時代、ハルコさんのように本音で斬り込んでくれる人は、まれです。おまけに大金持ちなのにドケチなところもあって『何、このおばさん』と思われても慕われている。不思議な人ですが、今回も、しっかり憧れてもらえるようなハルコさんを演じていきます」

 セレブなハルコと、庶民的ないづみ……年齢も立場も性格も異なる2人のやりとりは、本作の見どころのひとつだが、共演する松本とのつながりは年々強まっている様子。「まりかちゃんは、何をやってもかわいいんです。彼女につられて私も毎朝現場に行くと、いつもより陽気に『おはよう!』って挨拶したくなります」と明かす。現場からは力をもらっているようで、「この作品のカンパニーには我が家に帰ってきたような安心感があるんです」とも。さらに「ハルコさんのかわいいところといいますか、スーパーウーマンなのに意外にも涙もろかったり、苦手なものがあるといった、人間味溢れるふり幅の広さを掘り下げていきたいですね」とキャラクターづくりには余念がない感じだ。

 前回から2年ぶりのドラマ化で今作でシリーズ3作目となるが、ハルコを演じるにあたり、最も大切にしてきたのは人としての品格だったという。

「毒舌はひとつ間違えると無礼な人になってしまいます。ハルコさんは名古屋生まれのお嬢様ですし、根底にある品を大切にしつつ、毒舌とのギャップを彼女の持ち味としてきました。コメディーだからと奇をてらった役作りはしていません。彼女なりの真面目な生き方が、あの毒舌スタイルになるんだと思っています」

 今作ではタイやカンボジアでもロケを敢行。タイの撮影では「象に乗る場面があったのですが、手縫いで着ながら作っていただいた民族衣装を着させていただきました。象は思ったより揺れましたね」とエピソードを明かした。

ドラマで痛快に世の中を斬る姿にも品格がにじむ【写真:北野翔也】
ドラマで痛快に世の中を斬る姿にも品格がにじむ【写真:北野翔也】

芸能生活は半世紀越え「大きく弧を描くように生きてきた」

 1973年に宝塚歌劇団で初舞台を踏んでから芸能生活は50年を超える。宝塚時代の『ガイズ&ドールズ』や退団後もミュージカル『マイ・フェア・レディ』ほか、ドラマ『最高のオバハン中島ハルコ』シリーズなど着実にキャリアを重ね、代表作は数多い。演じた役柄は、ギャンブラーからヒロイン、個性的な役など性別も年齢も超えてきた。硬軟自在に役を操る大地ならではの“技”だが、そこには役に向き合う“ある思い”があった。

「人って多面性があってこそ、その人になるのだと思います。作品の中では、凝縮されたその人の人生の中で、切り取った部分をお客様に見ていただくことになりますが、そこに芝居の見せどころを感じます。泣いたり笑ったりする感情の変化が、なにより芝居の醍醐味だと思います」とどんな役でも心情が大事と話す。続けて、「三枚目でも、極悪人であっても、そこだけを強調する必要性はないと思っています。皆何かしら優しい面を持っていたり、共感されるところがあるから、エンタメとして楽しんでいただけるのかなって思います」と、人の持つ多面性を楽しんで演じているようだ。

 近年は、2018年から出演しているCM「アイフル」での姿も話題を呼んでいる。「そこに愛はあるんか!」の決めぜりふが印象的で、和尚、警官、バスガイド、現代文講師……と次々にユニークなキャラクターを好演。2024年12月からの新作CM『鮨屋の大将女将』編では、角刈り姿で迷惑な客を一喝し、お茶の間をざわつかせた。

 大地自身、宝塚時代からダジャレが得意でコメディーセンスは抜群。コミカルな役柄を演じる時、絶妙な間で芝居巧者ぶりを発揮してきた。笑いの芝居について尋ねると、「どんな人にも、どこかクスッと笑えるところがあるなって思うんです。だからコメディーであっても、特に笑いを強調することはなくて、逆に大真面目に演じていくことで自然とお客様に笑ってもらえているのかなと思っています」とブレない軸を明かす。二枚目が三枚目を演じるからこそ、面白さに深みが増すのだろう。

 そんな大地は、これまで“出会い”を大切に進化し続け、今日に至る。

「何か劇的な変化を経てきたというよりは、大きく弧を描くように生きてきた実感があります。目の前のお仕事に対して真摯に取り組んで、また次の役に臨む。この繰り返しで、50年間お芝居を続けてきました。ハルコさんに出会ったことでまた役者として変化を遂げたと思いますが、それは結果であって目的ではありません。新しい役に出会えること自体がやりがいです。皆さんが自由に新しい大地真央を見出してくれるだけで、私は楽しいです」

 常に感性を磨き第一線に立つトップスターは、これからも華麗でしなやかな役者人生を続けていく。

□大地真央(だいち・まお)2月5日生まれ、兵庫県洲本市出身。宝塚歌劇団月組トップスターを務めて、85年に退団。2014年には宝塚歌劇団100周年を記念した「宝塚歌劇の殿堂」設立当初からの100人に選ばれ最年少として殿堂入りを果たす。退団後は舞台、ドラマや映画など幅広く活躍中。主な主演作はミュージカル『マイ・フェア・レディ』、『風と共に去りぬ』、『エニシング・ゴーズ』、『サウンド・オブ・ミュージック』など。近年はドラマ『越路吹雪物語』(18年/テレビ 朝日系)、『正直不動産』(22年/NHK)などにも出演し、21年より『最高のオバハン中島ハルコ』(東海テレビ・フジテレビ系)に主演。受賞歴は、1998年に第24回菊田一夫演劇賞大賞(『ローマの休日』の演技に対し)、同年の文化庁芸術祭賞大賞(同)、2011年に第36回菊田一夫演劇賞特別賞(600回を超える『マイ・フェア・レディ』のイライザ役での輝かしい成果に対し)など多数。166センチ。

ヘアメイク:持丸あかね

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