盗難された伝説のバイク、懸賞金に300万円 オーナー悲痛「身体の一部…家族のような存在」

オーナーの思いが詰まった愛車がある日、突然姿を消す。卑劣な窃盗犯による犯罪が千葉・船橋市で起きた。ターゲットにされたのは、カスタムを含めて総額1780万円をつぎ込んだ伝説のバイクだった。懸賞金300万円をかけて行方を探しているオーナーのTAKROOM (タックルーム)(@TAKROOM_Rider)さんは、「プライドを捨ててまでも取り返したい」とやり場のない怒りをにじませた。

バイクファンの間でも有名だったZ2【写真:X(@TAKROOM_Rider)より】
バイクファンの間でも有名だったZ2【写真:X(@TAKROOM_Rider)より】

「信じられない」二重三重の盗難対策が突破される

 オーナーの思いが詰まった愛車がある日、突然姿を消す。卑劣な窃盗犯による犯罪が千葉・船橋市で起きた。ターゲットにされたのは、カスタムを含めて総額1780万円をつぎ込んだ伝説のバイクだった。懸賞金300万円をかけて行方を探しているオーナーのTAKROOM (タックルーム)(@TAKROOM_Rider)さんは、「プライドを捨ててまでも取り返したい」とやり場のない怒りをにじませた。

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「バイクが盗まれました
どんな情報でも構いません
車種:KAWASAKI 750RS Z2
場所:千葉県 船橋市
皆様のお力添えをお貸し下さい…」

 1月15日、「拡散希望」の言葉とともにXに投稿されたのは、バイクの盗難被害だった。黒いボディーカラーの1974年式カワサキ750RSで、通称Z2(ゼッツー)と呼ばれている名車だった。

 投稿者のTAKROOMさんのもとには協力の申し出が殺到。「バイク盗難は絶対許せない」「バイク乗りならバイク見ればどれだけ大切にしてるか分かります」「こんなに特徴ありすぎるバイク盗むバカいんのかよ!!」「まぢでバイク盗むとかゴミすぎる」「この切断面見るとカッターで切られたのかな」「この太さのチェーンを切るか…」「信じられない、こんな強力なロックを破壊するなんて」「すごいバイクだ…ここまで組んだもんを、許せんな」「かなり手の入ったZ2。持ち主の愛着が伝わります」「私も年末にZ1Rを盗まれています」「罰当たりな外道が早く捕まりますように」「パクられた怒り悲しみは心中察するに余りある」「鬼拡散をお願いします」など怒りの声であふれた。

 TAKROOMさんは約10年ほど前にこのバイクを購入した。

「半世紀前、世界一番速いバイクがカワサキから製造された排気量900ccのZ1(ゼットワン)でアメリカで大人気で大量に販売されました。当時の日本は排気量規制があり、国の最高排気量が750cc。排気量をダウンさせ国内販売したのが私が所有している750RS(Z2)になります。750RS(Z2)は『あいつとララバイ』『サラリーマン金太郎』『GTO』など、漫画の主人公の愛機としてたびたび当時し、日本全国の不良たちの憧れの的となりました」

 2021年には日本自動車殿堂により、Z1とともに歴史遺産車として認定されている。バイクファンの間では、伝説のバイクとして知られ、「現在中古価格は600万円~1000万円を超えております」とTAKROOMさん。さらに「私の車両は当時280万円で中古で購入し、その後2度の大型レストアチューンを繰り返し、創作期間は計5年、1500万円を追金した車両になります」と修理やカスタムを含めた総額は1780万円に上ると明かした。

 盗難が発生したのは1月15日、場所はマンションの駐車場だった。

 セキュリティーは強固で、24時間警備員、監視カメラのほか、地面から車体を隠すボディーカバー、さらにタイヤ前後にチェーンを装着していた。

 チェ-ンはフロントタイヤが隣のバイクと連結。後輪は7~8万円する極太チェーンで「地球ロック(地面に固定)をしていました」と万全を期していた。

 ところが、犯人はチェーンを切断し、警備の隙を突いて、バイクだけを持ち去った。

 連結していたもう1台のバイク、1980年式のヤマハRZ250は辛くも盗難を免れた。

「警察を呼んだ際はカバーが掛かっていたので気にも留めなかったのですが……再犯防止のために当日の夜、友人へRZ250を預ける際に盗難未遂だった事が発覚。シートカバーを外すと……ハンドルロックを壊そうとしたのか、キーシリンダーが曲がり、その犯行中に転倒したのかクラッチレバーが曲がって、キャブレターからはガソリンが漏れていました」

 犯人は2台ともターゲットにしていたことが分かった。

 警察に通報すると、2人の警察官が現場検証に訪れた。

 ところが、その対応は期待していたものとはかけ離れていたという。

「推定犯行時間を考慮し監視カメラをチェックされてましたが……8倍速で軽く流し見され帰られてしまいました」。TAKROOMさんは、やむなくネット上に投稿し、SNS上に被害を公開した。

300万円の懸賞金…犯人逮捕へオーナーの覚悟

 連日連夜、懸命に愛車の捜索を行い、大勢の仲間が協力してくれている。Xには、盗難事後に取るべき効果的な措置についての助言も相次いだ。

 しかし、現時点で有力な手掛かりはない。

 懸賞金は破格の300万円を用意。だが、金銭では代えられない愛車への思いが募る。

「『30代の青春』です。私は30才で会社を立ち上げ、子も作らず、寝る間を惜しんで頑張って働きました。その自分への褒美として購入したのが750RS(Z2)になります。友人たちとバイクを作り、走り、笑い……バイクを通じて大勢の方たちと知り合い……あのバイクは私の身体の一部、家族のような存在です」

 盗難は時間との戦いと言われている。すでに5日が経過し、日に日に焦燥感も募るが、TAKROOMさんは諦めない。犯人はGPSなどの追跡を逃れるため、別の駐車場に駐車させている可能性もある。

「私の脇の甘さか招いた盗難事件ではありますが……あのバイクはたくさんの思い出が詰まった家族です。プライドを捨ててまでも取り返したいです。失って気付かされた『友人たちの愛』『日本人としての優しさ』などに深い人情を感じております。ならばこそ、バイクは見つからないにしても、指示役、犯行役、バイヤー、乗り回している者を捕まえ、今後の盗難被害の抑止力につながればと思います」と悲痛な決意を示した。

 自動車やバイクなどの盗難は、日本では万引きと同じ窃盗罪と同じ法定刑であることがたびたび議論になっている。違法なヤードのあり方も含めて、暗躍する犯罪者が野放しになっている現状がある。

 窃盗犯への厳罰を望んだTAKROOMさんは、仲間やSNS上の激励に「御協力してくださった皆様に深く感謝いたします」と話し、愛車との再会を願った。

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