『御上先生』松坂桃李の起用理由は「得体のしれない役が上手」 「本作を踏み台に」発言にも番組Pは「いい言葉だと思った」

俳優の松坂桃李が主演を務めるTBS系日曜劇場『御上先生』(日曜午後9時)の第1話が19日に放送される。同作のプロデユーサー、『アンチヒーロー』(2024年)、『VIVANT』(23年)、『マイファミリー』(22年)、『ドラゴン桜』(21年)など、同局の「日曜劇場」で近年の話題になった作品を担当してきた飯田和孝氏。開始前から「注目作」と位置付けられた同作の制作秘話を飯田氏に聞いた。

官僚教師・御上孝を演じる松坂桃李【写真:(C)TBS】
官僚教師・御上孝を演じる松坂桃李【写真:(C)TBS】

『アンチヒーロー』『VIVANT』『マイファミリー』を担当してきた

 俳優の松坂桃李が主演を務めるTBS系日曜劇場『御上先生』(日曜午後9時)の第1話が19日に放送される。同作のプロデユーサー、『アンチヒーロー』(2024年)、『VIVANT』(23年)、『マイファミリー』(22年)、『ドラゴン桜』(21年)など、同局の「日曜劇場」で近年の話題になった作品を担当してきた飯田和孝氏。開始前から「注目作」と位置付けられた同作の制作秘話を飯田氏に聞いた。

 同作は完全オリジナルストーリー。「未来を夢見る子どもたちが、汚い大人たちの権力によって犠牲になっている。そんな現実に一人の官僚教師(御上孝)と令和の高校生29人がともに立ち向かっていく、“教育のあるべき真の姿”を描く大逆転教育再生ストーリー!」との説明もある。設定からも、これまでとは一線を画した“新たな学園ドラマ”をイメージさせている。それを形にした飯田氏は、「教育」に焦点を当てた経緯から説明した。

「高校3年生の時に『3年B組金八先生』第5シリーズを見て、『こんな先生になりたい』と思い、大学は教育学部に入りました。その夢は撃沈したのですが、『いつか学園ドラマをやりたい』という思いがありました。2020年に始まったコロナ禍に、あるアーティストの動画に映っている高校生たちがものすごい熱量で輝いていることに感動しました。そして、『そういう学生たちが輝けるドラマを作りたい』と思ったことがきっかけです。『熱がない若者が多い』と言われている一方で『世の中に対して声を上げている人も多いんだ』と思い、突き動かされました」

“新しい学園ドラマ”を作るために、脚本は2019年の映画『新聞記者』で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した詩森ろば氏に依頼した。同作は、若手新聞記者と若手エリート官僚の対峙や葛藤を描いた作品で主演は松坂。詩森氏は綿密な取材を基に骨太な物語を編み上げることで知られている。

「詩森さんに脚本をやっていただけるのであれば『社会派要素を入れたい』と思い、新たな切り口を一緒に考えた結果、“官僚の教師”ということになりました。ちょうど『ドラゴン桜(21年)』を作っていた時に『大学受験の形が変わる』と言われていたのですが、結局は変わらなかった。そこから、“現場の声を吸い上げられず、形を変えられなかった文部科学省の人物”というところに焦点を当てていきました。企画立案は2020年からで、今回、実現に至りました。ベースは学園ドラマで、社会派のエッセンスが入っているというイメージです。このドラマの主役は生徒たちであって、社会や企業に生きる人達を学校の中に投影しています」

 詩森氏と作品のストーリーを構成してきた飯田氏は、キャスティングにも言及した。松坂の主演は20年の段階から、候補に挙がっていたという。

「松坂さんとは『VIVANT』で初めてご一緒しました。普段は柔らかい方ですが、演じる時には“どうにでも見える方”で、演技力やビジュアルも含めて、『得体のしれない役が上手だ』と思いました。御上についても“どこかつかみどころのない役”にしたかったので、企画を立て始めた段階でイメージキャストとして、松坂さんが挙がっていましたが、実際にオファーしたのは『VIVANT』の後でした」

 松坂とは、主人公の御上孝を作り上げる中で「重点的に話し合ったことがあった」という。

「『目的があって教育の現場に来た御上が、生徒に対してどこまで優しさや愛情を表に出すか』ということは、クランクインの時に話しました。台本を作っている時には表情を出さないイメージだったのですが、演じたり、ディスカッションする中で『少しずつ愛情を入れ込んでいく』ということになりました。(『VIVANT』で初めて仕事した際の松坂は)先輩俳優の中で好かれる弟みたいなイメージでしたが、現場では生徒が教室に残っていると控室には戻らず、ニコニコして見守っています。座長として現場を引っ張っていくというよりは、みんなが自然と前向きになれる空間を生み出せる人で、生徒たちは先生のことを頼っていると思います」

 そして、飯田氏は出演が決まってから顔合わせをした時の松坂の言葉が「印象的だった」と明かした。

「『映画「孤狼の血」(18年)が分岐点になった作品で、この『御上先生』を第2の分岐点として踏み台にしてステップアップしたい』とおっしゃっていました。僕は『責任重大だ』と思いましたが、『踏み台』はいい言葉だと思いました。『あの作品を起点としてステップアップできた』と言われることが、僕ら制作にとっては何よりのことだと思っています。なので、生徒役の人たちと初めて会った時にも『このドラマを踏み台にしてステップアップしてください』と松坂さんの言葉をお借りして伝えました」

 生徒役29人については、オーディションで決めたという。

「神崎拓斗(奥平大兼)が役として一番手というのは早い段階で想定していました。脚本ができてきた段階で生徒29人のキャラクターが決まって、オーディションに進んでいる人をどうあてはめていくかという流れでした」

 一方で、生徒役が作り上げる現場の雰囲気については「不安もあった」と振り返った。

「仲良くなって、空気が緩んでいくことが不安でした。でも、それが全くないことに驚いています。伝えた『踏み台にして』があったからだという気もしています。手を抜こうがだらけようが、最後は自分に返ってくる。それをみんな分かっていて、『ステップアップしたい』と思っているからなのかなと。仲良くはなっても、緩んでいないことはうれしい誤算でした」

『御上先生』は完全オリジナルストーリーとなっている【写真:(C)TBS】
『御上先生』は完全オリジナルストーリーとなっている【写真:(C)TBS】

 近年、飯田氏が手掛けてきた『アンチヒーロー』『VIVANT』『マイファミリー』は、視聴者がネット上などで「考察」することで話題になった。その傾向を同氏は歓迎している。

「『(考察は)ぜひしてください』という気持ちです。『そこは伏線のつもりないんだけど』と思うこともありますが、盛り上がっていただけるのはありがたいです。内容的にはサスペンス要素も少しあるので『どういうこと?』と想像していただけるとは思っています」

 その上で「とにかく面白いドラマです。『次のエピソードへ』を押したくなるようなドラマを目指しているのは変わりませんし、教育を通して社会で生きることを伝えています」とアピールした。構想5年の同作について飯田氏は「何かを受け取って、自分の中で考えて、誰かと話してもらえる作品になればと思っています」と願っていた。

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