俳優生活は「毎日が刺激的で心地いい」 影山優佳、本格挑戦の1年でつかんだ自信と「最近の悩み」

俳優の影山優佳は、前後編2部作として1月と2月に上映される映画『サラリーマン金太郎』(下山天監督)に出演する。シリーズ累計発行部数3000万部を記録した人気マンガの映画化に伴い、オリジナルキャラクターの前田一美を演じる中で、様々な刺激があったという。「誰かの1分1秒を支えられる人になりたい」。本格的に俳優業に身を置いて2年目、影山に思いを聞いた。

俳優の影山優佳【写真:矢口亨】
俳優の影山優佳【写真:矢口亨】

映画『サラリーマン金太郎』でオリジナルキャラの前田一美役

 俳優の影山優佳は、前後編2部作として1月と2月に上映される映画『サラリーマン金太郎』(下山天監督)に出演する。シリーズ累計発行部数3000万部を記録した人気マンガの映画化に伴い、オリジナルキャラクターの前田一美を演じる中で、様々な刺激があったという。「誰かの1分1秒を支えられる人になりたい」。本格的に俳優業に身を置いて2年目、影山に思いを聞いた。(取材・文=小田智史)

『サラリーマン金太郎』は、元暴走族のヘッドでマグロ漁師の矢島金太郎(鈴木伸之)が、海で遭難していたヤマト建設会長の大和守之助(榎木孝明)を助けたことをきっかけにヤマト建設に入社し、型破りな振る舞いと持ち前の人間力で周囲を動かしつつ、活躍していくサクセスストーリーで、今回が3回目となる実写化。前編となる『サラリーマン金太郎【暁】編』が1月10日に公開、後編の『サラリーマン金太郎【魁】編』が2月7日に公開される。

 令和となり、原作マンガや過去の映像化の頃とは時代が変わった。多くの価値観が刷新され、コンプライアスは厳しくなった。譲れないものは絶対に譲らない勇猛さは変わらないが、時の流れに沿ってアップデートを重ね、過去最高にフレッシュさを感じさせる、“令和版”の金太郎像となっている。

 影山は『サラリーマン金太郎』の印象について、「長きにわたってたくさんの人に愛されていて、これまで何度も実写化されている作品。昭和の根性とかもあったりしますけど、気持ちの部分で現代に通じるものがある気がします。私も演じていて、背中を押してもらえる感覚になりました。令和っぽく(アレンジ)している部分としては、今でも会社の中である“空気読み”とか、自分の気持ちを押し殺して『誰かのために』というような、言葉にはできないけど誰しもが持っている感情を金太郎がすっきりさせてくれるところは、現代を懸命に生きている皆さんに見てほしいです」と語る。

 その中で、影山が演じるのは金太郎を会社で支える社員の前田一美。原作にはないオリジナルキャラクターとなる。

「金太郎の上司ということで、年齢は実際の私の方が幼いんですが、金太郎が頼りたくなるようなキャラクターにしたくて、大人っぽさやしっかり仕事ができるという部分を振る舞いで見せられたらいいなと意識していました。一美はこれまで努力してきた自負がある人。サラリーマンのお仕事に不慣れな金太郎に対して、異色の経歴を持つ大きな声の人に対して、嫌悪感というか警戒心を強く持っていました。それが金太郎の人柄に触れて心の氷が解けていくような感覚を、自分も一美と一緒に体験している感じでした。なので、最初は(金太郎を演じた)鈴木さんのことも警戒していたんですけど(笑)、ずっと穏やかな方だったので、これは心を許していいんだなと思えました」

憧れの俳優に橋本環奈と戸田恵梨香を挙げる【写真:矢口亨】
憧れの俳優に橋本環奈と戸田恵梨香を挙げる【写真:矢口亨】

共演した鈴木伸之は「ギャップがあって面白い」

 金太郎を演じた鈴木伸之は俳優として15年、金太郎のライバル鷹司誠士を演じたタレントの城田優も20年以上の役者歴を誇る。共演者として、俳優の先輩として、影山は2人にどのような印象を持ったのか。

「鈴木さんは穏やかでハツラツとされている方。撮影の時はすごく寒い時期だったんですけど、いつ、どの瞬間にお会いしても現場をパッと明るくしてくださる姿が印象的でした。金太郎と重なる部分があって、隣にいるだけで元気をもらえるというか、常に前向きな姿を見せてくださって、お芝居をしながらパワーを頂きました。意外とプライベートはゲームがお好きでずっと家にこもっているインドアタイプだそうで、ギャップがあって面白いと思いました。

 城田さんは、パパと言ったら怒られそうだけど(笑)、歳の離れたお兄さんというか、誰に対しても愛情の深い人。心配になってしまうくらい、私たちに対して真心込めてお芝居してくださったり、アドバイスをしてくださりました。撮影の頃がちょうど花粉が飛び始めた時期で、花粉に苦戦されていたけど、すごく陽気な方なので、その場を盛り上げてくださったり、美味しい差し入れを用意してくださって。私もミュージカルが大好きなので、小さい頃から尊敬している方とお芝居でご一緒できたのがすごく光栄でした」

 2023年7月に7年間在籍したアイドルグループ・日向坂46を卒業し、2024年は俳優業に軸足を置いて過ごす初めての年だった。

「お仕事でご一緒する方に、『おひさま(日向坂46のファンの愛称)です』『ライブ行きました』と言って頂けるのはすごくうれしいです。卒業してからも、自分が大きくなることで、グループ(日向坂46)を知ってもらうきっかけに今でもなれると信じて頑張っているところもあります。キャラクターとしては、あまりアイドルっぽくないと昔からよく言われていたので(苦笑)、自分の働きぶりで架け橋になれたらなと思います。今年は自分が好きなもの、自分を作ってくれたものとつながるご縁を頂けた1年でした。休みがいらないくらい毎日が刺激的で、その刺激が心地よくて、もっともっと大きくなりたいと思いました」

 影山は中学生の頃から橋本環奈、戸田恵梨香に憧れてきたという。「自分らしさを知って、自分の愛し方を知っている。それを人前で堂々と見せられるのが本当にかっこいい」。アイドル時代からドラマや映画、舞台を経験してきたが、演技に対する感覚にも変化があったという。

「久々に(ABCテレビ系連続ドラマ『マイダイアリー』で俳優の)佐野勇斗さんとご一緒した時に、『上から目線になっちゃうけど、お芝居、上手になったよね』と言ってもらえたのがすごくうれしくて。自分で上手になったという手ごたえはあまりないですけど、ちゃんと糧にできているのかなって。失敗の方が多くあった中で、自分のものにできていることがあるんだと、言葉にしてもらうことで少し実感できたので、自信がついてきました。カメラ前でも堂々とできるようになってきたと思います」

場面に「感情移入しすぎてしまう」のが悩みの1つだという【写真:矢口亨】
場面に「感情移入しすぎてしまう」のが悩みの1つだという【写真:矢口亨】

自分の素を出すのは「昔からすこぶる苦手」

 幼少期から探究心が強かった影山は、資格を17個も持つほどの勉強マニア。過集中の傾向があり、「うっかり2日ご飯を食べ忘れちゃったり、2徹、3徹とかは最近、よくある」と発言したことでも注目された。驚異の記憶力で「セリフ覚えは今のところ苦労はまだしていない」一方で、“悩み”もあると明かす。

「どうしても感情移入して、その場面、場面に入りすぎてしまうのが、最近の悩みの1つです。『オクトー』(読売テレビ・日本テレビ系連続ドラマ『オクトー ~感情捜査官 心野朱梨~Season2』)は心を揺さぶられるような重い話も多くて、そういう時は1日落ち込んで、スタッフさんから『大丈夫だよ』『フィクションだよ』と言われるくらい、映っていないところで爆泣きしました(笑)。仕事は仕事、感情をコントロールして、オン・オフのメリハリがしっかりされている俳優さんが多いので、そこは見習わないといけないです」

 本格的に俳優として活動する2年目、影山は2025年にどんなビジョンを描くのか。

「自分の素を出すのは昔からすこぶる苦手なんですが、最近は自分が頑張っていること、楽しんでいる姿を見せられるようになってきました。それはどんな時でも応援してくれる皆さんがいる安心感からできることだと思います。役者さんとしても、1人の人間としても、幅も深みもある人になりたい。いろんな人生の経験をして、挫折だったり、成功だったり、いろんな感情に触れてどんどん人間らしくなれていくはず。人と人との繋がりに助けられてきた人生でもあるので、誰かの1分1秒を支えられるような、自分らしくいられることが誰かの自分らしさを作れるような人になりたいし、今は(俳優として)映像越しにそれをかなえたいです」

 影山は、“自分らしさ”を貫きつつ、自分なりの俳優像を追い求めていく。

□影山優佳(かげやま・ゆうか)2001年5月8日、東京都出身。23年7月に日向坂46を卒業後は、俳優業を中心に幅広く活動。かつてサッカー少女だった経験を生かし、解説者にも劣らない知識量と的確な分析、予想で芸能界屈指のサッカー通としても存在感を発揮している。また、勉強と謎解きも趣味とし、2023年1月には世界の全人口のうち上位2%のIQ(知能指数)を持った人が入れる国際グループ「MENSA」の会員になったことでも話題となった。

ヘアメイク:Tohyama Yuki スタイリスト:合田凪沙(ALCATROCK)

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