“冬の時代”の元アイドルが次々復活 きっかけ作る元CoCo宮前真樹「今だからこそファンと再会できた」

歌番組の減少などで「アイドル冬の時代」(1980年代後半~1990年代)と呼ばれた時期に活躍した元アイドルが近年、イベントやトークショーに出演する機会が増えている。きっかけはバースデーイベント開催などさまざまだが、ENCOUNTでは、これまで表舞台に立つ機会を得た、仁藤優子さん、国実百合さん、木原さとみさん、花島優子さん、姫乃樹リカさん、山口リエさん、今井佐知子さんら数々の元アイドルをインタビューし、反響を呼んできた。そんな中、18、19日にも注目のイベントが開催される。そこで、両イベントを企画し、“冬の時代のアイドル再燃”の契機を作った1人でもある、アイドルグループ・CoCo(1989年~94年)の元メンバーで料理研究家の宮前真樹さんを直撃。元アイドルたちとのつながりや両イベントなどについて話を聞いた。

インタビューに応じた宮前真樹さん(元CoCo)と胡桃沢ひろこさん【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた宮前真樹さん(元CoCo)と胡桃沢ひろこさん【写真:ENCOUNT編集部】

国実百合さん、花島優子さんら続々とイベントに出演

 歌番組の減少などで「アイドル冬の時代」(1980年代後半~1990年代)と呼ばれた時期に活躍した元アイドルが近年、イベントやトークショーに出演する機会が増えている。きっかけはバースデーイベント開催などさまざまだが、ENCOUNTでは、これまで表舞台に立つ機会を得た、仁藤優子さん、国実百合さん、木原さとみさん、花島優子さん、姫乃樹リカさん、山口リエさん、今井佐知子さんら数々の元アイドルをインタビューし、反響を呼んできた。そんな中、18、19日にも注目のイベントが開催される。そこで、両イベントを企画し、“冬の時代のアイドル再燃”の契機を作った1人でもある、アイドルグループ・CoCo(1989年~94年)の元メンバーで料理研究家の宮前真樹さんを直撃。元アイドルたちとのつながりや両イベントなどについて話を聞いた。(取材・構成=福嶋剛)

――まずは、宮前さんがリアルタイムを知る「冬の時代のアイドル」について改めて教えてください。

「主に1989年から約5年の間にデビューしたアイドルのことを指すのかなって私は思っています。95年になると安室奈美恵さんの時代に変わっていきました。昭和が終わると歌番組も次々と終了してしまい、私たちアイドルはバラエティー番組の枠でしか歌う機会がありませんでした。アイドルの人数も少なかったので、80年代の先輩たちみたいに横のつながりがほとんどなかったんです」

――では、冬の時代の元アイドルが集うイベントを始めようと思ったきっかけは。

「芸能界を引退して20年、ずっと過去を封印してきたんですが、SNSを通してファンのみなさんの温かいコメントをたくさん目にしていくうちに、『1回だけファンのみなさんにありがとうを伝えよう』と決め、2023年に私の50歳のバースデーイベントを開催しました。やってみると、あの頃のファンの人たちが集まってくれて、『歌ってくれてありがとう』『またやってください』という感想を直接いただき、『お互い元気に再会できる場所があるって幸せだな』って思いました」

――それでイベントを続けていくことを決心されたんですね。

「私が、と言うより、アイドルの仲間たちにも『ファンのみなさんと喜びを分かち合える場所があるよ』って知ってもらいたくて、『もう少しやってみよう』と思ったんです。私と同じように、いつかチャンスがあったらファンの前に立って感謝を伝えたいと考えたりするアイドル仲間はいるかなって。だから、躊躇(ちゅうちょ)したり、迷っている人がいたら少しだけ背中を押してあげられたらと思いました」

配信番組のMC・宮前真樹さん(左)とゲストの胡桃沢ひろこさん【写真:ENCOUNT編集部】
配信番組のMC・宮前真樹さん(左)とゲストの胡桃沢ひろこさん【写真:ENCOUNT編集部】

現在は年に数回、ライブやトークイベントを開催

――アイドル専門番組の動画配信(『昭和アイドルアーカイブス in タクト』)も始まりました。

「これもバースデーライブがきっかけです。運営側から声をかけていただき、月に1回、神保町にあるアイドル専門の書店『タクト』さんから配信しています。ゲストのブッキングは私が担当していて、昭和アイドルや平成アイドル、また、アイドルの曲を作った作家さんらさまざまです。番組主催のライブやトークイベントも年に数回開催しています」

――横のつながりがほとんどない元アイドルのみなさんとは、どのように連絡を取り合ったのですか。

「個人的なつながりやSNSなど、いろいろです。私が会いたいと思った方に直接アポを取らせていただくんですが、『絶対に無理やり誘わない』ということだけは守っています。本当にタイミングが合って興味を持っていただいた人だけにお願いしています。またお返事がない方は、それ以上は追わないようにしています。やっぱりそれぞれご家庭やお仕事の事情がある中で行うイベントなので、みんなが楽しめないと意味がないと思っています。何より終わった後の打ち上げがいつも楽しみで、笑顔で乾杯するのが一番の楽しみです」

――88年にデビューした国実百合さんは2024年1月に引退以来33年ぶりの歌を人前で披露しました。それも宮前さんのイベントでした。

「百合さんは、ゆうゆ(岩井由紀子さん)のお誕生日会などでお会いする機会があり、私がデビュー前に(百合さんの)髪型をまねしたり、歌も好きだったので、歌って欲しいなと思ってお願いしました」

――特撮テレビ『美少女仮面ポワトリン』で主人公ポワトリンを演じた花島優子さんは、宮前さんから届いた手紙を読んでファンの前に立つことを決心されたと、以前インタビューで話していました。

「優子ちゃんは、しばらく連絡を取り合っていなかったので以前務めていたお仕事先にお手紙を書いたんです。お手紙だったら、返事をいただかなくてもお互いに負担がないから良いところもあるかなって。今回は奇跡的に仕事先の店長さんが優子ちゃんにお手紙を渡してくれてつながりました」

――「ニャンちゅうシリーズ」(NHK Eテレ『あつまれ!わんパーク土曜版/日曜版』)の4代目お姉さんを担当した元アイドルの笹峰愛さん(現在は笹峯愛)は、宮前さんのイベントにゲスト出演したことがきっかけで2024年10月に都内で自主イベントを開催しました。

「私はたまたまきっかけになったのかもしれませんけど、きっと私がいなくても愛ちゃんは、歌も上手ですし、いつか『ファンの前で歌ってもいい』と気がついたと思います」

元Qlairの今井佐知子さんのCDイベントでは企画制作から司会まで担当した宮前真樹さん【写真:ENCOUNT編集部】
元Qlairの今井佐知子さんのCDイベントでは企画制作から司会まで担当した宮前真樹さん【写真:ENCOUNT編集部】

元Qlairの吉田亜紀さんが1月に引退以来、初のステージに立つ

――CoCoの妹グループとして91年にデビューした3人組・Qlairの今井佐知子さんは2023年に久々に人前で歌唱すると、翌24年9月には宮前さんのプロデュースで新曲CDをリリースしました。

「さっちゃん(今井佐知子)は、ファンにありがとうと言えずに引退したことをずっと後悔していたので少しだけ背中を押させてもらいました。でもステージで歌った瞬間の幸せそうな顔を見て『さっちゃんは、いつまでもファンのみんなに幸せを与えられるアイドルなんだ』って私の方がうれしかったかも。私はどちらかというとアイドルよりオタク側の人なので、キラキラしているアイドルさんを横で見ているのが幸せなんです(笑)」

――一方でアイドル仲間の宍戸留美さんはデビューから今もずっとアイドルとして活動を続けています。

「留美ちゃんは、尊敬するアイドルです。SNSの使い方もそうだし、若い子のプロデュースや声優としても活躍していますし、フリーランスのアイドルとして今も新しいジャンルを開拓し続けている方なので私たちと並べたら失礼だと思っています。アイドルを辞めた人間だからこそ余計に留美ちゃんのすごさが分かって、一緒のステージに上がった時の存在感は誰よりもすごかったです」

――今年は年明けから1月18日、19日と2日間連続でイベントを開催します。

「18日は昭和アイドルアーカイブスさんのイベントで『アイドルアーカイブス特別版~冬歌 乙女塾~』と題して、乙女塾出身のアイドルちゃんの曲を出演者と一緒に歌います。ゲストには、なんと元Qlairのセンターだった吉田亜紀ちゃんが登場します! もう2度とステージには立たないと思っていたので、引退以来、初となる超サプライズの歌のステージは必見です。私たちも楽しみに準備をしているところです。そして19日は2年ぶりの私のバースデーライブ『宮前真樹 52th BirthdayLive2025』を開催します。昨年、さっちゃんがステージで歌っている時の幸せそうな顔を見て、『私ももう一度ファンのみなさんの前で歌いたいな』って思いました。昼夜の2部制で夜はソロライブで、お昼のゲストは、(花島)優子ちゃん、元Melodyの望月まゆちゃん、元Tiaraの渡辺幸恵ちゃん、俳優としても活躍した山口リエちゃん、そして、こちらも引退以来初めてのステージに立つ元アイドルの胡桃沢ひろこちゃんが登場します。MCは今井佐知子で、さっちゃんが脱線しないか今から心配です(笑)」

――元アイドルの輪が、この3年の間にどんどん広がっていますね。

「亜紀ちゃんの出演は、さっちゃんがきっかけを作ってくれました。誰かが誰かを呼んでくる、という面白い現象になってきたと思います。でも、あんまり無理にその輪を広げたくはないんです。別に大きなイベントをやりたいという野望もありません。みんな家庭やお仕事などそれぞれの持ち場がある中で、時々ファンのみんなと一緒に集まるオフ会の延長みたいな感じで続けられたら十分です。あとは当時のアイドルの曲にも魅力的なものがいっぱいあるので、埋もれないように歌いつないでいけたらいいなと思っています」

――ファンのみなさんもマナーが良くて、すごくいい距離感を保っています。

「それが、こういう自主イベントを続けられている大きな理由だと思っています。普段(自身が)スイーツを販売する時もお客さんとして来てくださる方もいらっしゃるんですが、ライブとは違ってきちんとした距離感で接してくださるので、私たちは本当に大切にされているんだなって感じます」

――宮前さんが歩んだこの3年間は、どんな発見がありましたか。

「アイドルもファンの方々もお互いに今日までいろんなものを背負いながら『一生懸命、生きてきたんだな』って感じました。それを乗り越えた今だからこそ、共有し合える時間ができたのかなって。そして仲間に会いたいと思ったら会いに行ったり、連絡を取り合ったりした方がいいって、あらためて思いました。こういうことを何歳まで続けられるのか考えることもありますが、楽しく平和なイベントを企画して仲間がいるうちは続けていけたら幸せなのかなと思います。今年は、イベント企画やプロデュース業にもトライしてみようと考えています」

□宮前真樹(みやまえ・まき) 1973年1月16日生まれ、新潟県出身。料理研究家。89年にテレビ番組から誕生したアイドルグループ・CoCoの一員としてデビュー。94年にグループは解散し、タレントとして活動。2004年、「食」を本格的に学ぶため30歳で芸能界を引退。フランスの名門料理学校ル・コルドンブルーで学び、10年に青山と蒲田にイタリアン「エムナチュール」をオープン(現在は両店舗閉店)。21年にロールケーキブランド「maq bon」を立ち上げ、グルテンフリー・低糖質ロールケーキを販売している。国際食学協会親善大使・名誉理事を務める傍ら、自らの経験をもとに「体に優しい食事」を提案。「犬の食事」にも力を入れている。

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