悪質カスハラ、年末年始になぜ急増? 連休中の勤務は「標的にされやすい」…専門家が注意喚起
いよいよ到来した年末年始。今年は“奇跡の9連休”とあって、各地への旅行や帰省を計画している人も多いだろう。一方で、連休中も世間の動きとは関係なく働くエッセンシャルワーカー(生活必須職従事者)と呼ばれる人々も存在する。医者や看護師などの医療従事者、電車やバスなどの公共交通機関の他、スーパーやコンビニエンスストアなどの従業員も身近なエッセンシャルワーカーのひとつ。SNS上ではそんな小売業従事者から、「年末年始はカスハラ(カスタマーハラスメント)が増える」といった声が上がっている。なぜ連休中にカスハラ被害が増えるのか。カスハラ加害者側の心理について、日本ハラスメント協会の村嵜要代表理事に見解を聞いた。
5年ぶりに、最大で9連休が見込める今年の年末年始
いよいよ到来した年末年始。今年は“奇跡の9連休”とあって、各地への旅行や帰省を計画している人も多いだろう。一方で、連休中も世間の動きとは関係なく働くエッセンシャルワーカー(生活必須職従事者)と呼ばれる人々も存在する。医者や看護師などの医療従事者、電車やバスなどの公共交通機関の他、スーパーやコンビニエンスストアなどの従業員も身近なエッセンシャルワーカーのひとつ。SNS上ではそんな小売業従事者から、「年末年始はカスハラ(カスタマーハラスメント)が増える」といった声が上がっている。なぜ連休中にカスハラ被害が増えるのか。カスハラ加害者側の心理について、日本ハラスメント協会の村嵜要代表理事に見解を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
5年ぶりに、最大で9連休が見込める今年の年末年始。12月上旬、“奇跡の9連休”のニュースが流れると、SNS上では長期休暇を喜ぶ声の一方で、「カスハラの発生率が高いのは決まって年末年始」「9連休の間働いてる人を、ちゃんと人間扱いしてくれ」といったエッセンシャルワーカーからの嘆きの声があふれている。
そもそも、カスハラはなぜ発生するのか。村嵜代表理事は、顧客と企業や従業員という立場の違いがカスハラを誘発していると解説する。
「カスハラは、お金を払う客とサービスを提供する従業員という立場の違いから発生します。本来、客と従業員は対等な関係ですが、お金を払いサービスを受ける過程で、金を払っているんだからと不当なサービスを要求するのがカスハラ。やっかいなのが悪意ではなく善意や正義感から、『俺が正しい接客を教えてやっているんだ』と本人の中でカスハラを正当化してしまっていることもあります」
なぜ年末年始にカスハラが急増するのか。村嵜代表理事は「連休中に気持ちが抜けて、我が出やすい時期になるからではないか」と分析する。
「普段、人は仕事をして、社会と接しながら生活しています。仕事モードのときは丁寧な姿勢でも、休みが続くと本来の自分が出やすくなります。また、正月休みは普段会わない親族や来客と過ごす特別な期間でもあります。よい正月を過ごそう、来客をもてなそうと張り切っているときに、ちょっとしたことで予定が狂ったり、期待を裏切られたりすると怒りが湧きやすいもの。正月に対する思い入れの強さも、カスハラにつながってしまうのではないでしょうか」
年末年始でも関係なく働くスーパーやコンビニ店員などのエッセンシャルワーカーは、もしいなければ社会生活が成り立たなくなる大切な仕事だが、カスハラの背景に、休みなく働く従業員を下に見る心理もいあるのだろうか。
「人がやりたがらない仕事に対して、ありがたいと思うか、誰でもできる仕事だとさげすむかはその人の人格次第。ただ、みんなが休みという状況で、標的にされやすいのは事実でしょう。わざわざ人が出たがらない年末年始に出勤して、その上カスハラまで受けるのであれば割りに合わない。カスハラ対策を徹底することはもちろんですが、例えば特別手当をつけるなど、待遇面でのカバーも必要ではないでしょうか」
厚生労働省は12月16日、全ての企業に対し、カスハラから従業員を保護する対策を義務付けるという方針を示した。社会や企業が一丸となって、理不尽なカスハラに毅然と対抗していく姿勢が求められている。