話題作への出演続く個性派バイプレーヤー前原滉、映画主演オファーを断ろうとしたワケ
俳優の前原滉(32)が、映画『ありきたりな言葉じゃなくて』(12月20日公開、渡邉崇監督)で主演を務めた。本作は、テレビ朝日映像初のオリジナル劇映画で、脚本家デビューの夢を追う青年が、ある女性との出会いをきっかけに成長していく痛切な青春ストーリー。個性派バイプレーヤーとして活躍してきた前原が、本作への思いを語った。
「テレビ朝日映像」初のオリジナル映画『ありきたりな言葉じゃなくて』
俳優の前原滉(32)が、映画『ありきたりな言葉じゃなくて』(12月20日公開、渡邉崇監督)で主演を務めた。本作は、テレビ朝日映像初のオリジナル劇映画で、脚本家デビューの夢を追う青年が、ある女性との出会いをきっかけに成長していく痛切な青春ストーリー。個性派バイプレーヤーとして活躍してきた前原が、本作への思いを語った。(取材・文=平辻哲也)
前原は、映画『沈黙の艦隊』(2023)、『笑いのカイブツ』(24)、NHK連続テレビ小説『らんまん』(23)、『スカイキャッスル』(24/テレビ朝日)など話題作で存在感を見せる実力派俳優。映画主演は『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』『彼女来来』(ともに21)『散歩時間~その日を待ちながら~』(22)以来となる。
「主演を務める機会があまりなかったため、まず『ありがたい』という気持ちがありました。しかし、脚本をいただいた時に、『今の自分には背負えないかもしれない』という気持ちが強く、一度マネージャーと相談しました。その後、監督やプロデューサーの熱意に押され『頑張ってみます』という形で挑戦を決めました。最初の感想としては、『今の自分では難しいのでは』と考えたのが正直なところです」と振り返る。
本作は、報道やバラエティー制作で知られる「テレビ朝日映像」が手掛ける初の映画プロジェクト。ドラマ脚本家の夢を追う青年・藤田拓也(前原)が、偶然出会った女性りえ(小西桜子)との関係を通して成長していく痛切な青春ストーリーだ。
「拓也は『特別になりたいけど、なりきれない』という葛藤を持つキャラクターで、この感覚は自分自身にも少し近いと思いました。誰しもが『特別でありたい』という願望を持っている中で、彼はそれを持て余し、結果としてありきたりな言葉を使ってしまう。そうした部分がとてもリアルに感じられました。ただ、自分自身に近い部分もある分、演じる際には寄せすぎてしまう難しさがありました」
脚本家役は初挑戦だったが、拓也の悩みに自身の経験を重ね合わせたという。
「脚本家の仕事は『ゼロを一にする』という意味で、俳優の『一を百にする』という作業とは全く異なります。自分自身が台本を読む際、どうしても『ありきたりな表現』が浮かんでしまうことがあるのですが、拓也も同じような葛藤を抱えています。それをどう乗り越えるかを考えながら役に向き合いました」
主演という役割に特別な気負いはなかった。
「主演だからといって特別なことをするわけではなく、どの役柄でも自分の役割を全うするという意識は変わりません。ただ、主演は現場にいる時間が長いため、現場の空気を良く保つことを心掛けました。これまで多くの主演俳優の方々を見てきて、『どっしりと構える方』『現場を引っ張る方』などさまざまなスタイルを学びましたが、私は自分なりのやり方で現場の雰囲気を大切にしようと心掛けました」
撮影現場では、「映画制作が初めて」というスタッフも多い中、一丸となって取り組む雰囲気が印象的だったという。
「新鮮な体験でした。印象的だったのは、最終日にタクシーのシーンを撮影した時のことです。タクシーの提灯が壊れてしまい、現場スタッフがその場にある道具を使って即席で代替品を作ったのですが、立場関係なくスタッフが一丸となって対応していて、その時に『映画作りの素晴らしさ』を改めて感じました。また、家族とのシーンは非常に心温まるもので、共演者のお二人(酒向芳、山下容莉枝)がとても温かい方だったので、自然に家族の空気感を作ることができたのが印象に残っています」
手作り、手探りの本作には、深い愛情を持っている。「派手なファンタジーや特別な物語ではありませんが、見る方それぞれに何かしら共感できる部分がある作品だと思います。特に、人物描写や物語の展開に注目していただけると嬉しいです。見終わった後、どこかで『自分と重ねて考える時間』を持てる映画だと信じています」と期待を込めた。
□前原滉(まえはら・こう)1992年11月20日生まれ、宮城県出身。連続テレビ小説『まんぷく』(18/NHK)などのドラマ、各映画賞で高い評価を受けた『あゝ荒野 前編』(17)などの映画に出演。ドラマ『あなたの番です』(19/日本テレビ)でマンションの新管理人役を演じ話題に。近年のドラマでは、連続テレビ小説『らんまん』(23/NHK)、『VRおじさんの初恋』(24/NHK)、『クラスメイトの女子、全員好きでした』(24/読売テレビ)、『スカイキャッスル』(24/テレビ朝日)や、映画では『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)、『沈黙の艦隊』(23)、『笑いのカイブツ』(24)、『マッチング』(24)など幅広く活躍する。