元ドラフト候補→BreakingDown→RIZIN 204cmの怪人エドポロ・キングとは何者か「3年以内にはUFCに」

身長2メートル4センチ、体重120キロ。「BreakingDown」で名を上げたフィジカルモンスター、エドポロ・キング(23=ROOTS GYM)が大みそかに「RIZIN」デビューを飾る。プロが本気で狙う逸材だった高校球児時代、MMA挑戦までの空白期間、覚悟を決めたセネガル修行。謎に包まれた男の半生に迫った。

高校通算28本塁打のドラフト候補だった【写真:ENCOUNT編集部】
高校通算28本塁打のドラフト候補だった【写真:ENCOUNT編集部】

元ドラフト候補だった高校時代

 身長2メートル4センチ、体重120キロ。「BreakingDown」で名を上げたフィジカルモンスター、エドポロ・キング(23=ROOTS GYM)が大みそかに「RIZIN」デビューを飾る。プロが本気で狙う逸材だった高校球児時代、MMA挑戦までの空白期間、覚悟を決めたセネガル修行。謎に包まれた男の半生に迫った。(取材・文=浜村祐仁)

「3年か4年以内には絶対に行きたいですね。『UFC』」

 インタビューの終盤、真っ直ぐ前を向いてエドポロは答えた。204センチから見る日常にはどんな景色が広がっているのか、想像しても分からない。しかし、その目で見据える未来は果てしなく大きく可能性に満ちている。

 エドポロは、ナイジェリア人の父と韓国人の母との間に4人兄弟の次男として生まれた。弟は21年夏の甲子園に出場し現在も大学野球でプレーする。大阪のスポーツ一家で、エドポロも幼少期から野球にのめり込んでいった。

「始めたのは幼稚園の年中とかそんくらいですね。兄貴がやるからついて行ってみたいな感じで。やっぱり飛ばす力は誰よりもありましたね」

 少年野球、中学時代と地元で順調に頭角を現していくと、高校野球の舞台には関東の強豪私学を選択した。

「色んな選択肢の中で一番条件が良かった。兄貴も行ってたしって。寮生活でしたね。高校になるまでは(身長が)僕よりでかい奴もいた。でも高2、高3でぐっと伸びたんです」

 高校通算本塁打は28本。甲子園出場経験はないが、そのポテンシャルにはプロのスカウトからの注目も集まった。

「いくつか(指名の)話は頂いていましたね。でも確証はなかった。(プロ志望届を)だしても育成かなとか。それやったらもういいかな、燃え尽きたなって感じでした。僕は努力型ではなかったです。練習を必死にやってなかったんで。早くプロになりたいとは言ってましたけど、それに行動が伴ってなかったですね」

 卒業後、一度は大学に進学し野球部にも所属したが中退した。

「(中退後は)フラフラしてましたね。まあパチンコとか大阪で軍団作っていろいろやってました。その時は楽しかったからそれでいいかなと言う感じでした」

 当時はまだ線が細く、大阪の街で絡まれて喧嘩になることもあったという。しかし、この経験が格闘技の世界に進むきっかけとなった。

「3年前ぐらいですかね、柔術の練習を始めたんです。まあふらふらっと普通にやる感じだったんですが。喧嘩が強くなりたかった。絡まれてもやっぱり負けたくなかったんで」

 道場に日々通う生活が始まった。そして、打撃の練習も本格的に始めると、エドポロは「BreakingDown」への出場を決意する。人生の針が再び動き出していった。

『BreakingDown』で名を広めた【写真:山口比佐夫】
『BreakingDown』で名を広めた【写真:山口比佐夫】

セネガル相撲を学びに3か月の現地修行へ

「自分の発端というか、僕がこうなったのは『BreakingDown』のおかげでもあるんですけど」。初参戦から連勝し名を広めたエドポロは、前置きした上で続けた。

「今出てるやつは、きもいですね。もちろん人にはよるんですけど。BreakingDownの知名度だけを利用してるやつも多いんで。そういう人間にはなりたくないですね。やっぱ良い見本にならないとだめですね」

 格闘技に対しては常に本気の姿勢を貫いている。今年初めにはリオ五輪レスリング銀メダリストで、RIZINファイターである太田忍からのXでの返信をきっかけに、セネガル修行を決行した。

「普通は(格闘技で)行くとしたらアメリカとかタイだと思うんですけど。そうなってしまうとみんなと同じ道になる。当時は(国技である)セネガル相撲を知らなかったんで調べました。大きい選手と組み合えるとなると、僕はここかなと。現地には僕よりでかい人、ごっつい体重の人もいるんで」

 3か月間、文字通りセネガル相撲漬けのストイックな生活を送った。

「朝から練習をして、昼も夜も練習して寝て起きてまた練習しての繰り返しで。ご飯もそのへんで鶏肉買って、米炊いてって感じでした。現地は宗教の理由でアルコールもだめで、お酒も全く飲まなかった。プライベートの遊びの時間みたいなのもほとんどなかったですね」

 文化も習慣も全く違うアフリカの地での生活は過酷だった。

「特に風呂とトイレっすよね。水回りが壊滅的に終わってましたね。あとは食事がやっぱり合わなかったですね。僕は辛いのが苦手で、基本的に食べ物はスパイシーなんでちょっときつかったですね」

 しかし、異国で過ごした日々の充実感はその表情が物語る。

「向こうにしかない技術。手足の長い僕の体格に合った技術を教えてもらいました。セネガルから帰ってきてテイクダウンディフェンスが格段に変わりましたね。今僕のジムにもセネガル人が二人来ていて一緒に練習しています」

「(帰国しても)セネガルで3か月過ごしたらもうどこでも行けるやろっていう自信ががつきました。人間的成長なくして技術的進歩なしっていう好きな言葉があるんですけど、(マインド)の部分でも成長できたなって思います」

 現在は週1日、大学中退後に短期間ダルビッシュ翔氏の下で働いていた縁から、「大阪租界」のメンバーらと炊き出し活動を続ける一面も持つ。

「やっぱり、ありがとうって言われたら気持ちいいです。もう習慣なんでそれが当たり前になってる感じですね。どんなに有名になってもこれは続けていきたいです」

 最後には溢れ出る野望を口にした。

「まずは『RIZIN』が盛り上がる試合をしたい。そして、3年か4年以内には『UFC』に行きたい。口で言うのは簡単なんで、ビッグマウスに伴った実力をコツコツとつけていくことが一番の近道なんじゃないかと。結局どこまで行っても大金持ちになりたいんですよ。結果出して良い生活したいですね」

 対戦相手は元幕内力士の貴賢神。フィジカルアスリート同士のカードが組まれた。元ドラフト候補から「UFC」へ。夢への道を歩きはじめたエドポロは、まず大みそかのさいたまの地から世界の度肝を抜く。その準備は整っている。

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