原田知世、42年目も続ける挑戦 歌手に女優…キャリア積んでも「重く受け止めてはいけない」
歌手で俳優の原田知世が11月27日、6曲入りのミニ・アルバム『カリン』をリリースした。1982年の歌手デビューから40年を超す現在も、透明感ある歌声は健在。ここ数年はボーカルトレーニングに励んでおり、今作ではその成果を発揮し、伸びやかで、さらに表現力に磨きがかかった歌を披露している。俳優業にいそしむ一方で、毎年コンスタントに作品を出し続け、歌手としてベテランの域に入った今でも「挑戦者であり続けたい」と語る。ENCOUNTでは、挑戦し続ける真意や、“表現者”として走り続ける今に迫った。
ミニ・アルバム『カリン』をリリース「120%以上の完成度に」
歌手で俳優の原田知世が11月27日、6曲入りのミニ・アルバム『カリン』をリリースした。1982年の歌手デビューから40年を超す現在も、透明感ある歌声は健在。ここ数年はボーカルトレーニングに励んでおり、今作ではその成果を発揮し、伸びやかで、さらに表現力に磨きがかかった歌を披露している。俳優業にいそしむ一方で、毎年コンスタントに作品を出し続け、歌手としてベテランの域に入った今でも「挑戦者であり続けたい」と語る。ENCOUNTでは、挑戦し続ける真意や、“表現者”として走り続ける今に迫った。(取材・文=福嶋剛)
――ここ数年、トレーニングを積みボーカル強化に励んでいます。今年6月のリリースツアー『恋愛小説4~音楽飛行』では、これまで以上にしなやかさと力強い歌声がとても印象的でした。
「とってもうれしいです。おっしゃる通り、ボイストレーナーの先生と二人三脚で練習を積み重ねてきた分、自分でも前作のレコーディングの時より、(ライブの方が)良くなった気がしています。6月のツアーは名古屋、大阪、東京の3か所でライブを行い、終わった後にライブの録音を全てチェックしました。先生のアドバイスも同時に聞きながら、『ここはもっとこうしよう』と曲ごとに細かくメモを取り、次のライブに生かしました」
――理想に近づいてきたと思いますか。
「まだまだです。でも『毎日1ミリずつくらいでいいから良くなりたい』という思いで挑戦しているので、『少しずつ良くなっているかな』とは思います」
――俳優(1982年に主演ドラマ『セーラー服と機関銃』でデビュー)、歌手として40年以上のキャリアを誇りながら、「挑戦者であり続けたい」と話します。今もなお挑戦し続ける理由とは。
「2022年に40周年を迎えた時、『ひと区切りついた』という思いがありました。デビューから40年背負ってきたものを下ろして、芸能活動やプライベートでも挑戦したいことをやっていきたいなって。『ここから先は、身軽に楽しみながら毎日を過ごしたい』と思うようになりました」
――近年は趣味のゴルフにも熱中しているそうですね。
「50歳を過ぎてから始めました。良いスコアが出ると『ちょっと進歩したかも』ってうれしいんです。歌も同じように『理想に近づきたい』という思いをずっと持っていたので、『自分自身の表現できる幅をどうやったら広げられるかやってみよう』って思っているんです。『知らない自分を見つける旅』って面白そうじゃないですか。今から始めても可能性がゼロでなければ、歌やゴルフだけではなく、いろんなことに挑戦したいと思うようになりました」
――ご自身と向き合う時間を大切にしたい、と。
「せっかく親からもらった体ですし、1度きりの人生ですから。毎年、変化してもいいんじゃないかなって思います」
――まさにその良い変化というか、ボイストレーニングの成果がニューアルバム『カリン』で感じられます。歌う上で大切したことは。
「今まで以上に、聴いてくださった方が、『心地よい音だな』と感じていただけるような歌い方に挑戦しました。また、今回さまざまな世代の方に歌詞を書いていただき、プロデューサーの伊藤ゴローさんと意見を出し合いながら、1曲1曲、こだわりながら歌入れをしました。とても新鮮な制作期間でした」
2025年3月公開の映画『35年目のラブレター』で主人公の妻役を熱演
――1曲目『カトレア』は、ロックバンド・indigo la End、4人組バンド・ゲスの極み乙女などでボーカルを務める川谷絵音さんの作詞作曲です。
「川谷さんには、とてもドラマチックな曲を作っていただきました。すごく動きのあるメロディーなので、そのリズムに乗り遅れないように歌うことが求められる曲なんです。きっといままでだったらクールに歌っていたと思うのですが、今回は、エモーショナルに歌ってみようと挑んだ曲です」
――2曲目『winter pupa』は長年の仲間であるシンガーソングライターの高野寛さんが作詞を担当しました。pupaは原田さんが、高橋幸宏さん(2023年逝去)や高野さんらと組んでいたバンド名でもあります。ファンにとっては感慨深い曲です。
「私もうれしかったです。この曲は(バンドの)pupaの作品に入ってもいいくらいの曲で、まるで幸宏さんの声が聴こえてくるような気がして、歌いながらジーンときてしまいました」
――3曲目『朝に』は、シンガーソングライターの藤原さくらさんの作詞です。
「さくらさんとは初めてご一緒しました。彼女の歌詞は叙情的で、私がさくらさんと同じ世代の頃に感じていた感覚や歌詞の世界と重なる部分があって驚きました。すっと心に入ってきました」
――4曲目『インディゴブルー』、5曲目『ひねもすLOVE』は、原田さんに欠かせない作詞家、高橋久美子さんによる作品です。まるで映画のワンシーンのような歌詞で、匂いや手触り感まで想像できてしまう言葉の選び方がすてきです。
「高橋さんは、誰にでも伝わるような言葉だけをチョイスして表現されるのですが、人の心の中や思い出まで映像のように見せてくれるすてきな歌詞ですよね。『インディゴブルー』では『どこかの家のカレーの匂いが ふわふわ世界を包んで』という歌詞がありますが、子供の頃の夕暮れの思い出に繋がるような、懐かしさや温かさを感じます。作曲をした伊藤ゴローさんは、『どんなメロディーを付けたらカレーの香りがしてくるかな』って試行錯誤していたようですが(笑)」
――そして、6曲目『セレンディピティ』は22年にデビューした新世代の2人組ポップスユニット、sorayaが手掛けた曲です。懐かしさと今っぽさが同居した歌に加えて、原田さんの美しい高音が聴けます。
「sorayaさんとも初めてご一緒しました。個人的には久しぶりとなる、とってもストレートなラブソングです。アルバムの中では一番歌のアプローチが難しかった曲で、かなり練習して録音に臨みました」
――では、アルバムが完成した感想はいかがでしたか。
「伊藤ゴローさんやエンジニアの方が120パーセント以上の完成度にしてくださいました。歌の目指しているところには、まだまだ届かないですが、今まで取り組んできたことが少しずつ形になってきて、また次に進むのが楽しみになりました」
――次に俳優業について伺います。2025年3月公開の映画『35年目のラブレター』(塚本連平監督)では、読み書きのできない主人公・西畑保(笑福亭鶴瓶)に35年間連れ添った妻の皎子(きょうこ)役で出演しています。
「子どもの頃に読み書きを学べず、大人になっても自分の名前さえ書けなかった主人公が、奥さんにラブレターを書きたい一心で、60歳を過ぎてから何年もかけて勉強するという実話をもとにしたお話です。作品を通して『気持ち次第で何歳からでもやれる』ということを教えてくれます」
――原田さんは公開に先立ち「大人になってからでも何かを始めて、達成することができるのだと希望が持てるお話です」とコメントしています。今の原田さんと重なりますね。
「ありがとうございます。私自身、『もしかしたら今からでもできるかも』という希望を常に持ち続けながら、歌にもお芝居にも挑戦しています。一方で『何年やっても必ずできるとは限らない』というのも現実です。だからこそキャリアの長さを重く受け止めてはいけないですし、小さな変化を感じたら『一歩前に進めた』と幸せに感じることも大切なのかもしれませんね」
□原田知世(はらだ・ともよ)1967年11月28日、長崎市生まれ。約5万7000人が応募したオーディション『角川映画大型新人募集』で特別賞を受賞。14歳だった82年にフジテレビ系ドラマ『セーラー服と機関銃』で俳優デビュー。同年に同ドラマの主題歌『悲しいくらいほんとの話』で歌手デビューも果たす。翌83年、映画初出演作の『時をかける少女』に主演し、同作品の主題歌で3枚目シングル『時をかける少女』(1983年)を大ヒットさせた。近年は俳優として、映画『サヨナラCOLOR』『しあわせのパン』、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』、日本テレビ系連続ドラマ『あなたの番です』、テレビ東京系連続ドラマ『スナックキズツキ』など数々の話題作に出演。歌手としては、鈴木慶一、トーレ・ヨハンソン、伊藤ゴローらさまざまなアーティストとコラボレーションし、コンスタントにアルバムを発表している。姉は俳優の原田貴和子。
原田知世 公式HP
https://www.universal-music.co.jp/harada-tomoyo/
ヘアメイク&スタイリング:藤川智美(Figue)