【スターダム】「こんな子がプロレスラーなの?って」…安納サオリが話題になった写真集で伝えたかったこと
昨年、スターダムに6年ぶりに参戦し、今では欠かせない存在となった安納サオリ。数多くの団体で試合をしてきた彼女だが、先日ある選手と初遭遇を果たした。その名は里村明衣子。来春引退を発表している“女子プロレス界の横綱”の指名により、里村の故郷・新潟でシングルマッチを戦った。この戦いで得たもの、そして今後の安納の展望を聴いた。
里村明衣子からの最上級の賛辞「今の女子プロレスの象徴」
昨年、スターダムに6年ぶりに参戦し、今では欠かせない存在となった安納サオリ。数多くの団体で試合をしてきた彼女だが、先日ある選手と初遭遇を果たした。その名は里村明衣子。来春引退を発表している“女子プロレス界の横綱”の指名により、里村の故郷・新潟でシングルマッチを戦った。この戦いで得たもの、そして今後の安納の展望を聴いた。(取材・文=橋場了吾)
多くの団体に出場してきた経験があるということは、数多くの初対決を経験しているということでもある。安納は常々どのように対戦相手に向き合っているのか。
「これまで縁があった選手とも、初めて向き合う選手とも、意味のある戦いをしないと届かないと思っています。初めて戦う前にはその選手のことをたくさん研究しますし、何かを残したいと思って試合をしていますね。そのときで終わりにはしたくないという気持ちは常々持っています」
その初対決といえば、センダイガールズプロレスリングが11月9日に開催した新潟でのビッグマッチで、里村明衣子が指名する形で安納とのシングルマッチが実現した。
「(里村の印象は)うーん……言葉では表現できないですね。でも、肌を触れ合った瞬間に『これが里村明衣子か!』というのを感じました。私が見てきた里村明衣子、皆から聴いていた里村明衣子……最初のロックアップひとつで分かりましたね。正直なところ、私は里村明衣子とは戦わないで引退を見届けるんだろうなと思っていたんですよ。それがご指名をいただいたときは、何かの間違いでは? 本当に私でいいんですか? と思いました。ただこのカードの注目度は高かったですし、指名されたからには里村明衣子を味わいたいですし、倒したいと思ったんですよね。
でもすべてが桁違いでした。強さ、丈夫さ、器の広さ……先ほど悩んでいたという話(前編参照)をしましたけど、その最中にこのカードが決まったんですよ。これから『プロレスラー・安納サオリ』としてどのように世間にプロレスを届けていけばいいのか、どういう立ち振る舞いをすればいいのか……そんなときにこのカードが決まって、また自分と向き合えるようになったんですよね。久々に自分と向き合って、結果は負けてしまったんですけど、最後のあの里村さんのマイクを聴いて、私のすべきことに気づかされたというか、忘れられない一戦になりました」
里村は安納を「今の女子プロレス界の象徴の選手」と評した。美しさ、強さ、そして発信力を兼ね備えた選手。そしてまた戦いたいと。安納にとっては最上級の賛辞といえよう。
「あのマイクを聴いたときの私の顔を映像で見直したんですが、見せたことのないような顔していて恥ずかしかったです(笑)。でもあれがリアルというか、本当にうれしかったんですよね。スターダムの選手で里村さんの引退ロードに絡んでいるのは私だけですし、勝ち逃げはさせたくないので、どこでも戦いたいです。(発信力について)SNSの投稿は、めちゃくちゃ考えていますね。1回考えて、少し置いて消します。それから無駄な言葉を削っていく感じです」
どのリングでも安納サオリの心の部分は変わらない
安納はOZアカデミーにもレギュラー参戦しているが、正危軍として黒のコスチュームで戦っている。
「OZはフリーになる前から上がっているので、すごい長くなりましたね。人間はどこか悪いところも持っているので、その部分を前面にさらけ出して戦っているのが正危軍の安納サオリです。ただ安納サオリの心の部分はどの場所でも変わらないですよ。ただ、今はスターダムを背負っているという気持ちはあるかもしれないですね。その気持ちを持って戦っていれば、最終的にスターダムの安納サオリにつながってくると思うので」
安納サオリのブランディング力、それが里村のいうところの「象徴」につながった。
「自分の中ではまだまだだと思っているんですけど、ひとつひとついろいろな経験をして、付け加えたものから削ったものもあって。数年前の私はまた違う私で、アピールの仕方も、SNSの使い方も違ったと思います。その中で、どうやって書こうかな、どういう立ち振る舞いをするかなと客観的に考えていって、今の安納サオリが出来上がったと思いますね」
安納といえば昨年出版した写真集『UNKNOWN』が大きな話題となった。
「私、プロレスを始める前は売れない役者をしていたんですね。チケットを売るのも大変で。そんなときにプロレスを始めて、最初はすごく嫌だったんですが(笑)、戦っていくうちに今の私ができていって……写真集もプロレスをしていたからいただいたお話だったんですよ。プロレスを頑張った結果、グラビアの話が来て、テレビ出演もあって、そして今日こうやって取材していただいて。写真集に関して言うと、プロレスラーっぽさは出さないようにして『一女性の安納サオリ』として表現できるように、女性らしさを大事にしました。初めて私を見た方々には、『こんな子がプロレスラーなの?』という印象を与えられるように。安納サオリを知るきっかけになるお話は、断らずに受けていきたいですね」
最後に今後の展望を聴いた。
「来年でプロレスデビュー10周年なんですが、本当にプロレスをやってよかった、プロレスラーになってよかったって思うんですよね。だから、そのプロレスをもっとたくさんの方々に知ってもらいたいんですよ。プロレスを見たことがなかった人間が、こんなにプロレスのことを好きになっているんです。だから何かのきっかけでプロレスを好きになってもらえると思いますし、プロレスに恩返しをしていきたいですね。プロレスでいうと、アーティスト(・オブ・スターダム)のベストは最上級に輝かせたいという気持ちはありますが、今はシングルのベルトはあまり考えていないかな……ベルトに関係なく、戦いたい相手がいるので」