70歳でこの肉体「人任せの健康はありえない」藤波辰爾、“異次元マッチ”に気合 日本初「お城プロレス」も大成功
プロレスラー・藤波辰爾が70歳になってもタイツ一丁でリングに上がり、その鍛え抜かれた肉体を披露している。同世代や後輩レスラーが続々と引退する中、いまだ全国各地で奮闘する姿は驚異的だ。22日のドラディション東京・後楽園ホール大会では新日本プロレスのトップ選手、34歳の高橋ヒロムとシングルマッチで対戦する。なぜ藤波は戦い続けるのだろうか。
「リングはパワースポット」 昭和のファンが集れる居場所作る
プロレスラー・藤波辰爾が70歳になってもタイツ一丁でリングに上がり、その鍛え抜かれた肉体を披露している。同世代や後輩レスラーが続々と引退する中、いまだ全国各地で奮闘する姿は驚異的だ。22日のドラディション東京・後楽園ホール大会では新日本プロレスのトップ選手、34歳の高橋ヒロムとシングルマッチで対戦する。なぜ藤波は戦い続けるのだろうか。(取材・文=水沼一夫)
「自分から健康というのを取りにいかないとね。なかなか人任せの健康はありえない。無理は禁物。今70なので。でも、僕は健康のためにプロレスやってる。みんな笑うけど、それが自分の答えだもんね」
20日、都内で取材に応じた藤波はよどみない口調で言い切った。
血色のいい表情が体調のよさを物語る。気持ちが高揚する出来事があった。
16日に福岡・北九州市の小倉城天守閣前広場で「小倉城プロレス」が実現。城や史跡を巡る番組『藤波辰爾の歴史探訪』(トコちゃんねる静岡)が話題を呼ぶなど、城マニアとして知られる藤波にとって「いつかお城でプロレスをやりたい」という若手の頃からの夢がかなった。
城門から武将隊に先導されての入場、ライトアップ、たいまつが焚かれた会場はムード満点。「ものすごい盛り上がった。観客は2000人じゃきかない。城内でプロレスをやったのは日本で初めて。今後の兆し、これからの道みたいなのが開けてきた。唯一、自分だからこそできる活動」と興奮は冷めやらない。
「1年に1回はお城でプロレスをやりたい。現役である中でやりがいができた。日本全国の城を制覇するまで戦いたいし、お城でシングルマッチもやりたい」と新たな野望を掲げた。
周囲を見れば、同世代の選手はほとんどが引退した。藤波より年上でリングに上がっているのは、グレート小鹿(82歳)、藤原喜明(75歳)だけ。ライバルの長州力は2019年に引退し、ドラゴン殺法の継承者でまな弟子の棚橋弘至は26年1月4日に現役生活に終止符を打つ。まだ50歳手前だ。故障や病気を抱えて動くのがやっとだったり、藤波より若くして亡くなった選手もいる。そんななか、「引退とか期限は決めていない。上れる限り、リングに上がり続けたい」。藤波のタフネスぶりが際立っている。
プロレスの露出減に危機感 「我々の役目はまだある」
なぜ、藤波はリングを目指し続けるのか。その答えは明快だ。
「変にプロレス界を背負うとか大袈裟じゃなくて、プロレスが好きなんだよね。同世代が自分より早く引退してしまう。中には猪木さんのようにいなくなってしまう。非常にプロレスに対してさみしさもあるし、ファンはもっとむなしいと思っているんじゃないか」
マット界に世代交代が進んでいても、レジェンドの姿が見たいファンはたくさんいる。しかし、その居場所は時がたつにつれ狭まり、虚無感すら漂うようになっている。
藤波の主催するリングは、昭和の熱気にあふれている。どの団体にもない独特の雰囲気に包まれる。
「うちの大会は高齢の方が非常に多い。あの頃のファンはあの頃に帰れるんだよね。往年のファン、昭和のファンの行くところをやっと作ってあげれた。全盛期からすればプロレスは露出も少なくなっている。いい時代のファンが行き場所がない。できるだけ長く居場所を作ってあげたい。我々の役目はまだある。せめて自分がリングに立っていれば、火を灯せば、ファンは集まってくる」
現役であることが、体調管理にも好影響を及ぼしている。
「プロレスが好きだ、が第一。それと自分自身がプロレスからエネルギーをもらっている。リングはパワースポットだもん。みんなに言っている。プロレスの会場来たらリングに触ったら元気になりますよって」
他のスポーツと違い、裸を見せる職業だ。スーツでトークショーというわけにはいかない。中途半端な状態で上がれば、危険も伴う。
落合博満、松任谷由実…同じ1953年生まれは「元気を売り物」
トレーニングは欠かさない。出張中でも時間があれば、体を動かしている。長年染みついた習慣だ。「体調は維持だね。70だからね。維持をするのが自分にとって一番ベスト。ある程度よしとする部分で、体調を整えていく」。普段は近所の24時間ジムで汗を流す。道場は持っていないため、リング上での練習は限られるが、「道場は今までの実戦でやってきている」と圧倒的な経験でカバー。「ちょっとコレ、お客さんの前にさらけ出すのは耐えられないなと思ったらリングに上がろうとは思わないけど、動けてキープできる間は。今はお城プロレスが実現してテンションも上がっている。いいエネルギーもらった」と声をはずませた。
同じ1953年生まれの著名人も意識している。
「野球では落合(博満)さんもそう。芸能界ではユーミン(松任谷由実)も同じくらい。松平健さんもそう。あの世代はみんな『元気があれば24時間働きます』じゃないけど、元気を売り物にしているからね」
負けてはいられないと、闘志は点火している。
ヒロムとは36歳差の異次元マッチだ。
「タイプは違う。変に意識をする必要はない。自分が持っているものをそのまま出せばいい」
気負いはないが、自身2年ぶりとなるシングル戦に気合は入る。
「タッグマッチや6人タッグはパートナーがいるからどうしても頼ってしまう。今回はタッグとは違う。始まってしまえば勝負つくまで彼と向き合う」と話し、臨戦態勢を整えた。