「若者が何座ってるんだ!」 優先席の妊婦に年配男性が激高…下車時に涙「もう座ってません」

優先席での座席の譲り合いは、心配りと優しい声がけで取り組みたいもの。まもなく初産を迎える30代の妊婦女性は、マタニティマークをつけてバス乗車時に優先席に座っていたところ、トラウマになってしまうような経験をした。杖をついた人が乗ってきたため、席を譲ろうかと考えていた矢先に、優先席に座っていた年配男性から「若者が何座ってるんだ!」と怒鳴られてしまったのだ。下車後に頬を伝った涙。「それ以来、優先席には座ってません」。日々もやもやした思いを抱えながら、出産の準備を進めている。

妊婦女性がバス乗車でトラウマを抱えてしまった(写真はイメージ)【写真:写真AC】
妊婦女性がバス乗車でトラウマを抱えてしまった(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「私にだけ立つように怒鳴ってきたことが悲しかったです」

 優先席での座席の譲り合いは、心配りと優しい声がけで取り組みたいもの。まもなく初産を迎える30代の妊婦女性は、マタニティマークをつけてバス乗車時に優先席に座っていたところ、トラウマになってしまうような経験をした。杖をついた人が乗ってきたため、席を譲ろうかと考えていた矢先に、優先席に座っていた年配男性から「若者が何座ってるんだ!」と怒鳴られてしまったのだ。下車後に頬を伝った涙。「それ以来、優先席には座ってません」。日々もやもやした思いを抱えながら、出産の準備を進めている。

 都内に住む会社員で、妊娠21週頃を迎えていた今年秋の出来事だ。

 普段から出勤でバスと電車を利用。バスの乗車時間は25分ほどで、そこまで混雑していなかった。「いつもは普通の座席が空いていることが多く、あまり優先席に座ることはなかったのですが、その日は優先席しか空いておらず、周りを見渡しても優先席を必要としているような方はいらっしゃらなかったので、座らせていただきました」。バスではお腹が張ることが多く、立っていることを避けたかったことも理由だった。

 当然、「お年寄りや自分よりも優先席を必要としている方が乗車されてきたら譲る気でいました」。優先席は3人席で座っていたのは、妊婦女性と、ヘルプマークをつけた年配男性と、「見た目は健康そう」という中年男性の3人だった。

 杖をついた人が乗車してきたため、譲ろうと思っていたところ、そのヘルプマークをつけた年配男性から肩をたたかれて、「若者が何座ってるんだ!」と怒鳴られた。言い得ぬ怖さを感じたという。

 その光景を見ていた普通席の女性が席を譲ろうとしてくれたが、妊婦女性は気落ちしてしまい、丁寧に固辞。残りの20分間立ちっぱなしだった。杖をついた人は、「1駅で降りるから」と座らず、結局、優先席は1席分が空いたままで誰も座ることはなかった。

 当時の状況を振り返り、「私はお腹も出ていたし、マタニティマークもつけていたのですが、怒鳴ってきた年配男性も、中年男性も見て見ぬふりでした。もう少し付け加えさせていただけますと、何も言われなかった中年男性も、もしかしたら何か理由があって座っていたのかもしれません。ただ、年配男性が私にだけ立つように怒鳴ってきたことが悲しかったです」。苦しい胸中を明かす。

 自分自身が妊婦であることをしっかり伝えたかった。でも、「相手は男性で何か危害を加えられたらお腹の子を守れないと思い、『すみません』と席を立ちました」。バスを降りてから、悔しくて涙が止まらなかったという。

 妊婦女性はそこから萎縮してしまっている。「優先席には座らないようにしてます。立っていられる時は立つようにして、マタニティマークも必要な時以外はしまっています」。肩身の狭い思いを続けている。

寛容な社会のためにはどんなことが必要なのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】
寛容な社会のためにはどんなことが必要なのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「お互いに助け合って、もう少し優しさが連鎖するような社会になれば」

 公共交通機関はそのときどきで乗客の事情が異なり、助けが必要なマークを見落としてしまうことがあるかもしれない。それでも、配慮に欠ける対応や不寛容な出来事は少しでも減らしたいものだ。

 産休に入っている妊婦女性は「これまで私は妊婦の方や体が不自由な人を見かけたら、必ず席を譲るようにしてきました。見返りを求めてではなく、それが当たり前だと思っていたので……。実際に妊婦となり譲られる立場になって、正直初めて、こんなにも世の中、冷たい人が多いんだな、と感じるようになりました。

 個人的にですが、優先席より普通の席に座っている方のほうが、妊婦だと気付いて譲ってくれる方が多かったです。優先席に座ってる方は大体目を閉じるか、スマホをいじっていて、前に立つ人を見ないようにしている気がします」と実感を語る。

 より寛容な社会になっていくためには、どんなことが必要なのか。

「もちろん、優先席は譲ることがマストではないので、私も譲ってもらえることが当たり前だとは思っていませんし、その人の置かれている立場や状況によって、ものの感じ方や考え方が異なることも理解しています。加えて私は不妊治療も経験しているので、マタニティマークを不快に思う人がいるというのも分かっています。昔から『優先席論争』が起こっている気がしていて、『そんなに言うなら公共交通機関を使うな』という意見もネットで目にしました。

 いろいろな意見があっていいと思いますが、何かの拍子に自分が優先される側の人間になる可能性があることを認識してほしいです。その立場になって初めて分かること、気が付くことも多いと思います。想像力を働かせたちょっとの優しさで救われる人もいるのです」

 お腹に命を宿してから、多くの人々の優しさに触れて暮らしていることも確かだ。妊婦女性は「マイナスなことばかり言ってしまいましたが、優しい方もいて、席を譲ってくださったり、スーパーでは店員さんがカゴを台まで運んでくださったり、妊娠してから見知らぬ人の優しさを感じることも増えました。優先席の問題に限らず、お互いに助け合って、もう少し優しさが連鎖するような社会になるといいなぁと思っています」とメッセージを寄せた。

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