芸歴20年突破の狩野英孝「自分なんてまだまだ」 刺激を受ける新世代の発想と還暦・大先輩の背中
お笑い芸人の狩野英孝は、今年で芸歴21年を迎えた。そのキャリアの中で、「SNSの歴史を見てきた」と移り行く時代に向き合い、さまざまなことに挑戦してきた。生成AIプラットフォーム『リートン』のWebCM起用には「『僕でいいの?』と思った」と言い、ネット社会やAI時代についても語った。
AIのWebCMを経験「えっ、僕でいいの?」
お笑い芸人の狩野英孝は、今年で芸歴21年を迎えた。そのキャリアの中で、「SNSの歴史を見てきた」と移り行く時代に向き合い、さまざまなことに挑戦してきた。生成AIプラットフォーム『リートン』のWebCM起用には「『僕でいいの?』と思った」と言い、ネット社会やAI時代についても語った。(取材・文=小田智史)
2003年に芸人デビューし、「ラーメン・つけ麺・僕イケメン」のフレーズでブレイクした狩野。ほぼ時を同じくして、X(旧ツイッター)が世に出始め、そのほかのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)も次々と登場していった。
「僕がデビューした頃にmixiが始まり、その後にアメブロ(アメーバブログ)、ツイッター(現X)、YouTube、インスタグラム…、インターネット全盛期に至るまでの歴史を見てきたと思っています」
SNSが盛んになるにつれて、狩野はある変化を感じていたという。
「新しいものが出るたびに僕もいろいろと挑戦して思ったのは、視聴者の方との距離が縮まったなと。僕が学生の頃だったら、たぶんテレビ局に電話をして、感謝の言葉や自分の意見を言うとか、事務所にファンレターが届く形でしたけど、『あそこがおもしろかったです』『あの言葉に救われました』『あれはどうなんですか?』とSNSを通して視聴者の方の声がダイレクトに届くようになりました。自分のエンタメのスキルを見つめ直すきっかけを与えくれたのがSNSだと考えています」
2000年代の現在は「第3次AI(人工知能)ブーム」に位置付けられ、AIチャットサービス「ChatGPT」は多機能性と応用力で広く利用されている。
狩野がWebCMに起用された生成AIプラットフォーム「リートン」は、韓国の生成AI活用サービス業界の先駆者である「Wrtn Technologies, Inc.」が提供。新AIモデルを無料・無制限で、生成AIに詳しい知識がない人でも感覚的に利用でき、ブログ・レポート・自己PR書などを自動で作成する「AI自動作成」機能や、作成したオリジナルのAIキャラを他のユーザーに公開できる「AIキャラ共有」機能など、国内ローンチ後に最大規模のリニューアルが行なわれた。まさかの抜てきに、狩野は「最初は『えっ、僕でいいの?』と思いました」と、笑顔で胸中を明かす。
「AIの可能性は無限大だと思います。『AI=若い人』のイメージがありますが、たしかに僕ならAIをそこまで知らない人と一緒に歩めるなという感覚もあるので、“自分の仕事”はすぐに見つけられました。僕もメディアで仕事をしていくなかで、AIと関わる企画、イベントがあるので、『こういうものがあるんだ』『こういうことができるんだ』と学びながら、1人でも多くの人に情報を与えることができれば、と思っています」
YouTubeでのゲーム実況が人気を博す狩野。ゲーム界にも広がるAIにも楽しさを見出しているという。
「子どもの頃からゲームが大好きで、大人になったら大好きなゲームもやらなくなるのかなと思いきや、子どものとき以上にやっている今、ゲームもいろいろ進化してきて、AIを取り入れたゲームもあるんです。僕が体験したのは、警察署の取り調べ室で、容疑者に対して尋問していくもの。チャット欄に尋問内容を書くことで、AIが返してきます。5ラリーしかできないという制限がある中で、(容疑者を)どうやって自白させるか。コントローラーを使って、左右や上下に動かすではなく、頭を使って向こう側の世界を動かす。ゲームもすごく進化していて、こういうのが増えていくと思うので、自分もどんどん取り入れてやっていきたいです」
SNSやAI全盛時代に「頑張って追い付こうとしている自分がいる」
生き残りが厳しい芸能界。その中で狩野は昨年、芸歴20年の大台を突破した。長い間、表舞台で活躍できている理由に、時代の変化にアジャストしようとしていることを挙げた。
「SNSやAIが広まっていく時代・文化の中で、頑張って追い付こうとしている自分がいるなと思います。日本人のすごくいいところは、『古き良き』を大事にすること。例えば、メールよりも手紙の方がいい、電卓よりそろばんがいい、そういうのもすごくいいんですけど、凝り固まってしまう可能性がある。毛嫌いせず、1回やってみようかなと。僕もいろんな番組、イベントをやらせていただく中でベテランのスタッフさんと仲良くさせていただいてきましたが、新しい社員さんとか、20代前半の新しい方々の考え方は尊重していきたい。『そういう考え方もあるんだ』と、一緒にタッグを組んでやってこれたのが良かったのかなと思います」
10月に決勝が行われたコント日本一決定戦「キングオブコント2024」でも、2000年代初頭からの変化を改めて感じたという。
「僕も芸歴20年を超え、一生懸命ネタやコントをやっていた時代もありましたけど、こないだの『キングオブコント』を見て、『この発想はもう無理だ』と思いました。『こんな設定作れない』と(笑)。これは若い子たちの頭脳の素晴らしさであって、僕らの先輩のいわゆるコント師の方がもめちゃくちゃおもしろいですけど、また別な感覚です。古き良きもあり、新しき良きもあり、上手くミックスして取り入れていくのが一番いいのかなと感じています」
狩野も来年2月には43歳となる。それでも、「自分なんてまだまだ」と笑い飛ばす。
「僕がテレビを見ていたとき、芸人を始めたときだったら、僕の年齢(42歳)は人によっては『師匠』と呼ばれたり、『ベテラン』と呼ばれたりする位置だと思います。でも、この歳になって周りを見てみても、自分なんてまだまだなだと思います。若手の発想から衝撃を受けることもあるし、正直、『もう体を張るのはしんどいかな』と思うこともあるんですけど、上を見ると事務所の先輩に出川哲朗さん(60歳)がいて、還暦を迎えていまだに身体を張っている姿を見ると、まだまだマイナスなことは言っていられません。どんどん身体を張っていきたいし、いろんなことに挑戦していきたい。その挑戦も楽しみながらできているので、仕事としてやるのではなく、遊びの延長線上でやっていく姿も見ていただければと思います」
どんな環境にも臆することなく向き合う限り、狩野自身の進化もまだまだ続く。
□狩野英孝(かの・えいこう)1982年2月22日、宮城県出身。2003年芸人としてデビューし、「ラーメン つけ麺 僕、イケメン!」など、イケメンぶりをアピールするネタで一世を風靡した。近年はYouTuberとしても活動し、チャンネル登録者212万人(2024年11月時点)を超える人気ぶり。2016年、神主の資格を取得し、実家である櫻田山神社で神主の仕事にも従事している。