歌手→俳優へ転身、村田寛奈が27歳で選択した新たな道 芸歴は約15年…原動力に「ここまで続けた意地」
俳優の村田寛奈が10月31日から東京・浅草九劇で上演されるホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』で“車になりたい女・ミサキ”という一風変わった女性を演じる。役者としての活動が増える中で、14年間所属した事務所から離れる決断をするなど、まさに転機のタイミングを迎えている。27歳の彼女が抱く思いを聞いた。
事務所を離れる決断は「何か環境を変えなきゃと」
俳優の村田寛奈が10月31日から東京・浅草九劇で上演されるホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』で“車になりたい女・ミサキ”という一風変わった女性を演じる。役者としての活動が増える中で、14年間所属した事務所から離れる決断をするなど、まさに転機のタイミングを迎えている。27歳の彼女が抱く思いを聞いた。(取材・文=中村彰洋)
今作が初のミュージカル出演となった村田が演じるのは「車になりたい女」。「ここまで現実離れした作品は初めてでした。ミュージカルも初めてなので、どこまで振り切れるか挑戦です」と心境を明かす。
作・演出の益山貴司氏が、村田にとっての初舞台『ローファーズハイ!!』(2017年)の演出を務めていた人物だったという縁もあり、今回の出演が決まった。
「台本をいただく前に、益山さんと7年ぶりにお会いして、第一声が『村田は車になりたい女の子をやってもらうから』でした(笑)。『なにそれ!?』という気持ちで台本を読んだら、『どんな作品になるんだろう』と楽しみが大きくなりました。全員が初対面のキャストの方々で、いざ顔合わせで本読みをした時の皆さんのパワーがすごすぎて、『やばい、これは置いてかれる』と焦りましたね」
今作は観客参加型のミュージカルとなっている。「九劇の舞台を全面に使って大暴れします。お客さまにも一部参加してもらうシーンもあるので、劇場一体となった作品になると思います」と期待を込める。
村田のルーツは03年の6歳だった頃にさかのぼる。当時から「歌手になりたい」という夢を抱いていたが、ライブで見ていたモーニング娘。の姿に「楽しそうだな」と思ったことをきっかけにダンススクールの門をたたいた。この選択が全ての始まりだった。
「なんとなくダンスを始めてみようという気持ちで通ったスクールでしたが、芸能人を目指す子たちがたくさんいたんです。私自身はそんなこと考えたこともなかったのですが、同世代の子たちが夢を持ちながら、キラキラとステージ上で歌ったり踊ったりしている姿を見て、『私もこれになりたい』と思うようになりました」
紆余曲折がありながらも、13歳だった10年にガールズユニット・9nineに加入。19年の活動休止まで、グループ活動に全身全霊を注いだ。それ以降、ソロでの活動を続ける中での新たなやりがいが役者としての活動だった。
「元々は、ダンスや歌ばかりで映画やドラマも全然見てこなかったし、舞台にいたっては見たことすらなかったのですが、年齢を重ねて徐々に『面白いのかも』と思うようになってきたんです。たまたま17年にご縁で舞台のオファーをいただいて、いざレッスンをやってみたら、ダンス以外にも表現する方法があるんだと気付かされました。
最初はセリフもカタコトで恥ずかしいし、なにもできませんでしたが、益山さんから『どれだけ自分を解放できるか』ということを教えてもらって、恥ずかしさなどを全部取っ払ってもらえたんです。それでいざ舞台に立った時に『楽しい!』と全力で思えたんです」
俳優としての理想像は「“村田寛奈”という名前が広まるといいなと」
ダンスと芝居。表現方法は違えど、「人の心を動かす」という部分は共通している点だ。
「私ってステージに立つことが好きなんだなと舞台に立つたびに改めて実感します。お客さんがいて、照明や音楽、衣装やメイクが全てがそろった時に初めて自分が解放されて、1つ世界が変わったような感じがするんです。9nineでライブをしていた時も、リハーサルは本当に大変で『もうやだ!』とか言ったりもしていましたが、いざステージに立つと、そんなこと全部忘れて、楽しい気持ちしか出てこないんです。そんな感覚が今でも染み付いてるんだろうなと思います」
9nineの活動休止など、これまでにもさまざまな転機があったが、「この世界以外に自分がいる未来が想像できなかった」と語る。「9nineに入る前は、いろいろ嫌になった時期もありましたが、とにかく歌って踊ることが好きという気持ちで続けていました。今は、ここまで続けてきた意地みたいなものもあるかもしれないです(笑)。絶対に大きくなって、今までお世話になった人、ずっと応援してきてくださっている人たちに、私が夢をかなえた姿を見てもらいたいです」。
9月末には14年間所属した事務所との契約を満了し、離れるという決断を下した。新たな人生のスタートが幕を開ける。
「9nineの活動後、また新たな人生という気持ちで、いろんなことに挑戦させてもらいました。その中で、もう1つ先のステージに進むには、何か環境を変えなきゃという気持ちが芽生えてきました。良くも悪くも、中学生の頃からずっと親のように育ててもらって、守ってもらってきました。マネージャーさんも『何かあったら相談乗るから』と快く送り出してくれました。1歩自分で踏み出してみようかなと思えた転機ですね」
今後の目標は「女優として大きくなる」こと。「『この子ってこの作品にも、あの作品にも出てるよね』と言ってもらえるようになりたいです。バンッと大きな主演作ではなく、『すごい見るなぁ』ってじわじわと“村田寛奈”という名前が広まるといいなと思っています」。
俳優としての夢を抱くとは、10年前には想像もしていなかった。「みんなに驚かれます。歌とダンスしかやってこなかった人生で、お芝居をやるなんて考えたこともなかったので、自分でもびっくりです」と笑う。
例えどんな困難があっても道は終わらずに続く。「やりきったと思える日がくるんですかね。どこがゴールかも分かっていないので、『やれるだけやってやれ!』『どこまででも行ってやる!』って気持ちです」。デビュー当時と変わらぬ笑顔が照らすその先はきっと明るい。
□村田寛奈(むらた・ひろな)1996年12月29日、兵庫県出身。2010年に9nineに加入。19年のグループ活動休止後はソロ活動を続けている。17年には『ローファーズハイ!!』で舞台初出演。以後、23年には舞台『エヴァンゲリオン ビヨンド』、24年『みわこまとめ』などに出演。24年10月31日から11月10日まで東京・浅草九劇で上演されるホラーミュージカル『キッチュ&ホラー・イン・モータース』にも出演する。