“平成のテロリスト”村上和成が語るアントニオ猪木と佐山サトル「僕の中では別の位置にいる方」

現在、第18代レジェンド王者としてストロングスタイルプロレスのリング上で暴れまくっているのが“平成のテロリスト”村上和成である。約30年を誇るキャリアの中には、創世記のMMAから新日本プロレスでの激闘、主要団体での活躍まで多岐に渡る。そんな村上は、自身がプロレスラーになったきっかけにアントニオ猪木と佐山サトルの名を上げ、それぞれを「言葉の魔術師」「光を照らす人」と話す。その理由とは?

今なおA猪木の教えを守る、“平成のテロリスト”村上和成
今なおA猪木の教えを守る、“平成のテロリスト”村上和成

“初代タイガーマスク”佐山サトルは「光を照らす人」

 現在、第18代レジェンド王者としてストロングスタイルプロレスのリング上で暴れまくっているのが“平成のテロリスト”村上和成である。約30年を誇るキャリアの中には、創世記のMMAから新日本プロレスでの激闘、主要団体での活躍まで多岐に渡る。そんな村上は、自身がプロレスラーになったきっかけにアントニオ猪木と佐山サトルの名を上げ、それぞれを「言葉の魔術師」「光を照らす人」と話す。その理由とは?(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「絶対に縁がないと思っていたけど、僕が持っている間は、僕なりのワガママというかやり方で、やりたいヤツとやっていきたいと思いますね」

 村上に対し、6月にレジェンド王者になった感想を訊(たず)ねると、そんな答えが返ってきた。意外にも村上はレジェンド王座がベルト初戴冠ながら、そのお陰で傍若無人な闘い方に拍車がかかった印象を受ける。鬼に金棒ならぬ、村上にベルトといった雰囲気だが、かといって不遜な物言いはしない。いや、これも意外や、見た目とは真逆の柔らかな物言いに驚かされる。

 15日にあった会見には対戦カードに関する意見の相違からドタキャンをかまし、平井丈雄代表とは丁々発止やり合う場面が見受けられるが、“初代タイガーマスク”佐山サトル総監には深い敬意を表している。

「僕もずっと格闘技をやってきて。佐山さんとマンツーマンでキックボクシングを教えてもらったこともありました。アントニオ猪木さんに引き合わせてくれたのも佐山さんだった。小川直也さんと一緒に、当時、猪木さんが住んでいたロスに行って、猪木さんの話を聞いて。心を奪われてプロレスラーになった。だから要所要所には、佐山さんの存在があるんですよね。だからそこに対しては、猪木さんが決め手ではあるんですけど、佐山さんは光を照らす人ではあるので、僕の中では猪木さんとは別の位置にいる方なんです」

 ちなみに村上は、猪木とロスで会った際、それまで耳にしたことがない「あり得ないフレーズ」に引き込まれた。

 猪木は村上に「リングに絵を描いたことがあるか」「いかに観客と闘うか」といった言葉を打ち込んできたからだ。そんな猪木を村上は「言葉の魔術師」だと思った。

 そして今、猪木の闘いの真髄とも言われる「ストロングスタイル」という名の団体で、村上が王者に君臨していることは、奇妙な縁どころか運命に導かれたとしか言いようがないが、実はその「ストロングスタイル」という概念を巡って、昨今、ちょっとした事件が勃発した。

11月5日、新宿FACEは血の雨が降るか
11月5日、新宿FACEは血の雨が降るか

「ストロングスタイル」論争は「スーパーストロングスタイル」への幕開けか

「この間の後楽園ホールの試合については、私にとっては大変不本意な大会になっておりました。だいたい試合が始まる前に、その選手たちが、凶器に使う道具をリングサイドに運ぶバカがどこにいるんだ。ストロングスタイル? ふざけちゃいけない」

 11月5日に新宿FACEで開催されるストロングスタイルプロレスの会見中、最高顧問の“過激な仕掛け人”新間寿会長が声高に叫んだ。

 要約すると、過去の同団体における女子プロレスの試合で、そういった試合が行われたという。

 会見上ではこれに対し、新間会長の隣に座っていたジャガー横田が反論した。“ジャガーの乱”とも言える、いわゆる「ストロングスタイル」論争が起こったのだ。

 これに関して村上は、「この間の記者会見がカオスって言われてて、なんだこれは? と思ってましたね。報道された記事を読むと、ホンマにこれはカオスだなあと思って」と話し、独自の見解を述べた。

「新間さんとジャガーさんのやりとりは、お互いに表現の話をしていたと思うんです。だから僕はどっちもストロングスタイルだと思う。僕はストロングスタイルって信念だと思っていて。それがぶつかるから面白いんだっていう。そこにそれぞれの団体のカラーや思想があるんでしょうけど、その思想同士が闘うことがストロングスタイルだと思うんですよね」

 さらに村上は「例えば、猪木さんと佐山さんのストロングスタイルも、すべてが一緒かって言ったら、ちょっとずつ違うと思うんですよ」と語る。

「結局そこは各々の信念だと思うから、逆に言えば、ルチャ・リブレの選手がストロングスタイルじゃないかって言ったら、僕はそんなことないと思いますね。その信念を突きつけてくるのであれば。だから、どれがストロングスタイルかっていったら、好きか嫌いかが違うだけであって。みんなの色がぶつかり合うことがストロングスタイルなんだと思いますね」

 そして「重要なのは、その先にどんなドラマがあるのか。この後、新間さんとジャガーさんはどうなるの?ってすごく興味があるじゃないですか」と結んだ。

 たしかに、各々の考える「ストロングスタイル」を巡って賛否が起こり、この令和の時代に改めて「ストロングスタイル」が着目されたことが“神”だった。

「だから『ストロングスタイル』という冠の中で起こった化学反応というか。お互いの信念が混ざった時には『スーパーストロングスタイル』が生まれるかもしれないし、後付けでそうなっていくかもしれない。でも、そこに行くかは見ていかなければ分からないし、やってみなければ分からない。それこそ猪木さんの言う、『行けばわかるさ』の世界で、毛嫌いする必要は、少なくとも僕はないと思いますよ」

 そんな村上に対し、最後に大会への意気込みをうかがうと、「納得のいかないカードであったけど、出るよと。闘うよと言ったからには俺なりの制裁を喰らわしてやりたいと思うので、どんなことが起こるかはわからない」と話した後、以下のように話した。

「でも、大きな振り子を振ることだけは間違いない。なので、いい意味でも悪い意味でも期待してください」

「どうせ振るなら振り子は大きいほうがいい」とは猪木の言葉だった。村上はいつ何時、猪木から学んだ教えを忘れてはいない。

(一部敬称略)

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