俳優の橋本環奈が主人公・米田結を演じるNHK連続テレビ小説『おむすび』（月～土曜午前8時）の制作統括・宇佐川隆史氏が取材に応じ、結の幼なじみ・古賀陽太役の俳優・菅生新樹や博多ギャル連合の真島瑠梨を演じるみりちゃむの起用理由などを明かした。

　まずは菅生の起用理由から。演じる陽太は糸島の漁師の息子で結の高校の同級生。地元の青年の雰囲気を見事に漂わせている。これまで何作ものドラマに出演しているが『おむすび』出演の際にはSNSで俳優・菅田将暉の弟として話題になった。

「一言で言うと、“素朴”という才能です。お芝居の魅力と、お芝居でない部分の魅力が混ざり合っているところが、若い人ならではの見どころだと思うのですが彼はまさに、“今だからこそ見せられる芝居”を見ている気持ちにオーディションからなりました。話していると、役と本人が地続きになっている部分があり、それこそが陽太に必要なもの。糸島の人の純粋さを体現する存在。そして全国の方々から、温かい目で応援される存在。その2つを、菅生さん自身が持っている。愛される存在だと感じて起用しました」

　地続きとはどういう意味だろう。

「たとえば私にあいさつする時から、菅生さんは陽太とあまり変わらないんです。すごく丁寧なのですが、同時にフランクで。よく俳優さんについて『演じる〇〇がそこにいる』という言い方をしますが、菅生さんはそう感じさせてくれるタイプ。でも話してみると、しっかりと役を考えている。役を考えているけれど、アウトプットする時には、自分という存在を生かした上で出しています。すごいと思います」

　オーディションの時の印象をもう少し聞いてみた。

「歩き方からして、陽太だったんですよね（笑）。普段は芝居を見ないと分からないものですが、芝居前、芝居を始める位置まで歩くたたずまいからもう陽太でした」

　続いてルーリーこと真島瑠梨を演じるみりちゃむの起用理由を聞いてみた。

「まず、共演者のオーディションは、ヒロインオーディションと変わらない大規模な募集を行いました。その結果、女性は1864件、男性は391件と計2255件の応募があり、ここから有名無名全く関係なく行いました。みりちゃむさんは今、『令和ギャル』としてギャルを楽しんでいる方ですが、私が最終的に選んだ理由はお芝居と意欲でした。オーディションでは、ギャルをやめようかどうか悩んでいる難しい役を演じてもらいましたが、一言目から胸をつかまれました。心を奪われるような芝居でした。お芝居はほとんど経験がないと言っていましたが、なぜ、ああいう芝居ができたのか聞くと、似た境遇の友だちを思い浮かべていたそうです。自分の経験を素直に芝居に反映できるんです。そのポテンシャルに魅力を感じました」

　平成のギャルを演じるにあたり、現代のギャルであることが足かせになる不安はなかったのか。

「実は最初、このドラマのギャル役は難しいのではと思ったりしました。なぜなら、私たちがドラマで描くのは『平成のギャル』であって、『令和のギャル」ではないんです。今ギャルであることで、かえってその調整が難しいのではと感じていました。しかし最終的にみりちゃむさんは、お母さまや親世代の方に話をきいて、今の自分も生かしながら合わせて来てくれたんです。それは私たちの不安を超え、彼女を見てほしい、このドラマの中で生きてほしいと思えるものでした。俳優としてはまだ新人かもしれませんが、彼女の体当たりの姿勢といいますか、自分が今できることを全力で行うことは、まさにギャルマインド。ルーリーは大きい役ですが、みりちゃむさんが役をつかむ過程も含めて、朝ドラが持つ使命かとも感じました」

　実際の演技を見てどう感じたのか。

「面白いです！　何が面白いかと言うと、まずは独特の間（ま）。サッカーでいうと、ロナウジーニョのステップのような、セリフの間やリズム、発音が根本的に違うんです。すごいと思いましたね。ギャルの真実味がぐっと上がったのは間違いないです。先ほども言いましたが、裏では平成ギャルと自分のギャルはちょっと違いますが、そこをチューニングしてきました。今のギャルを保ちつつ、考証の先生に平成のギャルを学び、感じて演じてもらいました。そのハイブリッドが、芝居では新人という部分を補って余りあるような魅力になったと思います」

　他の3人のギャル役との関係はどうだったのか。

「他の皆が、みりちゃむさんの独特のリズムを吸収して、みりちゃむさんも、3人の芝居を見て変わっていく。その化学反応が起きる瞬間を、撮影中何度も目撃しました。この高め合いは、予想以上の効果があったと思います。その高め合った結果が映像にも映っていると思います。週を重ねるごとに、さらに、見たくなる、応援したくなるような輝きとして見えてくると思いますので、期待していてください」