渋谷の路上飲酒の年間禁止、注意受けた人の驚きの反応…担当者が明かす内情「指導ができない私有地に」
東京・渋谷区で1日から、夜間の路上での飲酒について、年間を通して禁止する条例が施行された。今年6月に同区の条例を一部改正して決定されており、路上飲酒による止まらない迷惑行為に区が対応した形だ。今回の措置を街の人や酒店はどう捉えているのか。本音を聞いた。
住民からは「大賛成」
東京・渋谷区で1日から、夜間の路上での飲酒について、年間を通して禁止する条例が施行された。今年6月に同区の条例を一部改正して決定されており、路上飲酒による止まらない迷惑行為に区が対応した形だ。今回の措置を街の人や酒店はどう捉えているのか。本音を聞いた。
これまで同区では路上飲酒によるトラブルが頻発。特にハロウィーン期間は例年人が殺到し、器物損壊、盗撮や痴漢など、迷惑行為が多発する状況となっていた。同区の概算によると、ピーク時の2019年には約4万人が渋谷を訪れており、昨年10月にはハロウィーン期間前の数日間、区への来訪を控えるよう呼びかけるなど対策を講じてきた。
さらに踏み込んだ対応として、区は今年6月、現状の路上飲酒禁止条例を一部改正し、年間を通して午後6時~翌午前5時まで、飲酒制限区域にて路上での飲酒を禁止。約3か月の周知期間を設け、10月1日から実施されることとなった。罰則規定はない。ハロウィーン期間を念頭に置いた決定ではないという。
区安全対策課の担当者によると、改正について地元の飲食業界から反対意見は出なかったといい、「売上が減るなどの実害があっても、それを言えないほど街の様子がひどかったからではないか」と推察した。また、住民からの反応は「大賛成」であったとしながら、24時間とせず時間を定めたことや、罰則がないことについて疑問の声が上がったことを明かした。
24時間の禁止にしなかった理由については「日中は飲んでいる人もいないわけではないが、そこまで多くなく被害が少ないこと、またパトロールのための人件費もかかるため費用対効果などを加味したこと」と説明する。
罰則規定を設けなかったことが議論を呼んでいる。担当者は「そもそも路上飲酒を禁止する法律がないため、条例で対応しており、そこにいきなり区が独自にペナルティーを科すことはできません。他の自治体では罰則の導入事例もありますので、今回の改正でどうなるか様子を見て、段階的に導入するかを検討していきたい」とした。
酒店の本音「特に影響はない」
実際に路上で飲酒している人がいた場合、どのように注意するのか。担当者に具体的な方法を聞くと、「警備員が直接注意した後、缶をもらって目の前で中身を捨て、缶を回収するといった形で対応しております」と説明。実際の注意を受けた人の反応について、「体感としては日本人、外国人問わず8割の方が指導に従って缶を渡してくださいますが、1割は逃げるか無視、残りの1割は指導ができない私有地に入られてしまいます」と実情を明かした。
実際に渋谷で酒店を営む人々は、今回の決定をどう受け止めているのか。ある店主は「うちは午後6時で閉店するので特に影響はないと思う」と率直な感想を口にした。しかし、これまでに客から迷惑行為を受けたことがあったそうで、「店の前に置いていた空の酒ケースを、誰かに勝手に遠くに持ち運ばれ、ごみ箱として使われたことがあります」と被害を明かした。
また、別の酒店の店主は、日本酒や焼酎など比較的飲み歩きに使用されづらい商品を取り扱っていることもあり、あまり売上に影響はないと考えているという。「コンビニやドン・キホーテといった大型店舗の方が影響は大きいのではないか」と話した。
街の人は今回の決定をどう感じたのか。杉並区、埼玉県から来た男子大学生2人は大学が渋谷にあることから日々、迷惑飲酒の状況を目撃。「やっぱり駅周辺は路上で飲んでいる人が多い。夜とか空き缶がすごい」、「(路上で飲んでいる人が)歩道で広がっていたりするので邪魔だなと思う」と眉をひそめる。条例改正には賛成意見だといい、「これだけ大きな町だったら、(路上飲酒は)あることだししょうがないのかな。でも、日本で有名な歓楽街なので、きれいに街を使ってもらえるなら(改正は)良いのでは」と話した。
同区の担当者は「路上飲酒の被害はひどくなっています。他の人が飲んでいるから、といってどんどん増えていますのでぜひやめていただきたいと思います。また、渋谷には居酒屋や飲食店がたくさんありますので、お店で飲んでいただければ」と注意を呼び掛けた。