24歳・山崎翠佳、所属先の岡田准一社長から授かった言葉「10年後のことも見据えて考えなさい」
俳優・山崎翠佳(24)が映画初主演する『カフネ』(杵村春希監督)が10月12日から東京・ポレポレ東中野で公開される。山崎はNHK連続テレビ小説『虎に翼』でヒロイン・寅子の同級生役に抜てきされ、岡田准一が設立した芸能事務所AISTONへの加入も発表された注目の俳優だ。
10月12日公開『カフネ』で映画初主演
俳優・山崎翠佳(24)が映画初主演する『カフネ』(杵村春希監督)が10月12日から東京・ポレポレ東中野で公開される。山崎はNHK連続テレビ小説『虎に翼』でヒロイン・寅子の同級生役に抜てきされ、岡田准一が設立した芸能事務所AISTONへの加入も発表された注目の俳優だ。(取材・文=平辻哲也)
『カフネ』は世界遺産の三重県熊野市の港町を舞台にした青春ストーリー。山崎が演じたのは、同級生の恋人・遠山渚(太志)の子を妊娠してしまった高校3年生、瀬川澪。さまざまな困難に直面ながら、新たな決意をする……。カフネはポルトガル語で、愛する人の髪をそっと撫でる仕草を指す。
熊切和嘉、山下敦弘監督らを輩出した大阪芸大の新鋭・杵村春希監督が、初の長編映画として企画。山崎はオーディション情報を知り、自ら応募した。
「熊野の美しい景色の写真や、台本を拝読して、どうしても出たいと思いました。澪は妊娠したことで、自分の心の声を聞いていく役どころでしたが、私自身も自分の声を聞いていいんだと思ったときに出会った作品でした」
撮影の前には、4日間、本読みを行った。撮影中は、親友・峯田夏海役の松本いさな(26)と共同生活をしていたという。
「監督からは『セリフを棒読みしてください』と言われました。ニュアンス、固定概念を抜いてくれという指導でした。役の立場になってインタビューされることもありましたが、こうしてほしいというより、任せられた部分の方が大きかったです。妊娠のリアリティーを出せるかは非常に悩みましたし、資料を読むことだったり、当事者の方の話を聞いたり、匿名の悩み相談をたくさん読んだりしながらも、澪とともに悩み続けました」
22年8月に2週間熊野でオールロケ。スタッフは大阪芸大の学生で総勢25人。プロの現場も経験しているが、年齢が近いスタッフ・キャストと作り上げた現場には違いはあったのか。
「作品についての話し合いが密接にできました。関係性を作るために、子役の男の子とも遊びました。その子が『耳を澄ましてごらん』と言ってくれたのですが、虫の音がいろんな方向から聞こえて、世界はきれいな音であふれているんだと思いました。澪が渚に自分の気持ちを伝えるシーンでは、自分がセリフを話しているのか、誰か違う人が話しているのか、分からなくなるような感覚になりました。こんなことは初めてでした」
『カフネ』は今年1~2月に和歌山県海南市と紀美野町で開催された「第1回きみの海南映画祭」で観客賞と主演俳優賞を受賞した。
「誰かに見ていただけたことはすごくうれしかったですし、撮影中にみんなの思いが1つになっていると感じました。手応えというより、『カフネは行くぞ』と言えてしまうような感覚がありました。『カフネ』は人としても、俳優としても多くのことを教えてくれた私の原点と言える作品です。監督、俳優の方々と対話することで作品作りの尊さ、楽しさを教えてもらいました」
憧れの俳優は故・樹木希林さん
今後は岡田が社長を務める芸能事務所「AISTON」の一員として、新たな活動も期待されるが、事務所入りはどんな経緯だったのか。
「ジャンルを問わず、新たにともにクリエイティブに向き合いたい人を求めているというのを知って、応募しました。オーディションでは自分がやってきたこと、伝えたいことをお話して、岡田さんとの面談もあって、現場見学させていただきました。(岡田は)凛として、目が合うと殺されてしまうんではないかという気迫のある役を演じられていました。そんな岡田さんを前に、めちゃくちゃ緊張して、声が出ないほどでした」
岡田社長のお眼鏡に叶い、岡田、植木祥平に続く、3人目の俳優として名を連ねる。女優としては初加入となる。
「岡田さんは、一つ一つの言葉が深く、重たい。俳優という枠にとらわれず、さまざまなジャンルに探究心がすごく、すべてにおいて一流を目指している方です。『しっかり10年後のことも見据えて考えなさい』といったことをお話しくださいました。『自分を磨いて本当に頑張るしかない』といったお言葉や、『いつでも相談して』というお言葉もいただき、ありがたい限りでした」
憧れの俳優は故・樹木希林さん。「樹木さんは、どの役でも本当に役が生きている感じがします。そんな居住まいが目標です」一期一会を大切にし、新たな役に向き合いたいと誓った。
※山崎翠佳の「崎」の正式表記はたつさき
□山崎翠佳(やまざき・すいか)2000年4月30日、兵庫・宝塚市生まれ。お茶の水女子大生活科学部心理学科への入学を機に上京し、20年に芸能界デビュー。22年、特技のコンテンポラリーダンスを生かしたソロダンスをコブクロの『卒業2022Ver.』のミュージックビデオで披露した。23年には、映画『カフネ』にて初主演した。同作で第1回きみの海南映画祭(2024)観客賞/主演俳優賞を受賞。ドラマには、22年のテレビ朝日系『彼女お借りします』で川中祐希役、23年のNHK大河ドラマ『どうする家康』では門徒兵役、NHK連続テレビ小説『虎に翼』では主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)の明律大学女子部の同期生・佐野光子役を演じた。