伊藤健太郎、コミック実写化の流儀 『今日から俺は!!』『静かなるドン』も「原作読んでません」
俳優の伊藤健太郎(27)が映画『静かなるドン2』(前編9月13日、後編9月27日公開、鳴瀬聖人監督)に主演した。累計発行部数4600万部を超える新田たつおの同名コミックを原作にしたシリーズ第2弾。伊藤は「原作を読んでいない」と語る。その理由とは……。
映画『静かなるドン2』で主演
俳優の伊藤健太郎(27)が映画『静かなるドン2』(前編9月13日、後編9月27日公開、鳴瀬聖人監督)に主演した。累計発行部数4600万部を超える新田たつおの同名コミックを原作にしたシリーズ第2弾。伊藤は「原作を読んでいない」と語る。その理由とは……。(取材・文=平辻哲也)
『静かなるドン』は、昼はデザイン会社の社員、夜は新鮮組総長という2つの顔を持つ近藤静也(伊藤)がヤクザの抗争終結に向けて奮闘する物語。人気任侠シリーズ『日本統一』の本宮泰風が総合プロデュース、静也の世話役・猪首を演じ、筧美和子が引き続き、ヒロイン・秋野を務めた。
『静かなるドン』は、香川照之の出世作(1991年~1999年)でもあるが、香川版はあえて見なかったという。
「最初は原作も読まなかったです。ある程度、自分の中で静也をつかめたタイミングで1、2話を読んだくらいです。自分が静也をやらせてもらう意味をもたせ、令和時代の『静かなるドン』を作りたかったんです。ほかの作品を意識してしまったら、違ったものになってしまうと思ったんです」
伊藤には同じくコミックを原作にした『今日から俺は!!』で「伊藤」という当たり役もあるが、この時も最初はコミックを読まなかった。
「これまでも原作モノはいろいろとやらせていただきました。原作に対してのリスペクトは大事にしたいのですが、実写はキャラクターに魂を吹き込むみたいなところがある、生身の人間がやるなら、いい意味で原作を超える部分を作っていかないと思っています」
静也はサラリーマンとヤクザの総長という2つの顔を持つ男だが、共感できる部分は何か。
「自分がやりたいことに対して、道を模索しながら、柔軟に進んでいく感じは分かる部分もあります。サラリーマンの静也は、自分とはかけ離れすぎているので、総長の静也の方が理解できるところがありますね」
日頃からジム通い、体作りにも余念なし
本作は前作の好反応を受け、早い段階に決まった。「2」では、新鮮組総長を引き受けた静也が、敵対する鬼州組六代目組長(渡辺いっけい)から新たな提案を受け、新鮮組の存続が脅かされてしまう……。
「社会においてのヤクザに位置づけを変えたいという静也の思いは変わらないのですが、『2』では、総長になる決断をした上で物語が進んでいきます。見ていただいたお客さんに静也が大きくなって帰ってきたなと思ってほしかったので、その辺を意識していました」
アクションもパワーアップ。伊藤は日頃からジム通いし、体作りにも余念はない。
「ジム通いは週3回くらい、1、2時間やっています。強化する部位を決めて、今日は腕の日、胸の日といった感じ。今回は体よりも、アクションのキレ、動き、強さを見せたいと思っていました。前作では(ヒロインの)秋野さんを守りたい、という思いでしたが、『2』では新鮮組という大きなものを背負っています。その決意みたいなものを表情、アクションという形で表現したいと思っていました」
アクションでは、『日本統一』シリーズの山口祥行演じる殺し屋・Mr.Jとの闘いが大きな見どころ。
「山口さんのことは勝手に師匠と呼んでいます。アクションは細かく教えていただきました。アクションシーンは山口さん、自分、アクション監督と話し合って作っていきました。最初のプランとはまるっきり変わったところもあって、生っぽいものに仕上がったと思います」と自信を見せる。
一方、静也を支える猪首役で、総合プロデューサーの本宮にも、たくさん助けられたという。
「本宮さんは出番がない時でも、現場にいらっしゃったので、安心感がありました。(劇中の)猪首のように、僕は慕っていました。本当に、猪首のままといった感じで、気配りをされる方です。前作の撮影で、役の方向性を模索している時には、『今やっていることは間違いない。健太郎がやっていることが正解になるようにすればいいから、自信を持ってやりなさい』と言ってくれました。2でも、その言葉を思い出しながら、やっていきました」
「2」では前作の監督・山口健人が脚本・総合監修に回り、『日本で一番恐くない間取り』の新鋭・鳴瀬聖人監督にバトンタッチした。
「監督は、すごく緊張されていたと思います。山口さんが作ってきた世界を引き継がなきゃいけないという思いもあったと思うし、自分の色を出そうと模索してくださっていた。ホラー味のあるシーンでは、こだわっていました」
俳優生活10年になる伊藤にとって、どんな作品になったのか。
「いろんな作品をやらせてもらって、宝物と呼べる作品をためていっている感じがしますが、その中で、これが代表作と言いたい宝物が増えました。『静かなるドン』に出会えたことがすごくうれしかったし、お芝居としても、すごく勉強させてもらえます。アクション、コメディーといろんな要素もあって、世界観が広がっているのを感じます。もし、『3は違う人でやります』と言われたら、本当に怒ってしまうかもしれない。それくらい独占欲が生まれています」と伊藤。シリーズ続投を楽しみにしている。
□伊藤健太郎(いとう・けんたろう)1997年6月30日生まれ、東京都出身。モデル活動を経て、ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(CX/2014)で俳優デビュー。以降『アシガール』(NHK/17)、『今日から俺は?』(日本テレビ/18)、連続テレビ小説「スカーレット」(NHK/19~20)など、多くの話題作に出演。『デメキン』(’17/監督山口義髙)で映画初主演。『コーヒーが冷めないうちに』(18/監督塚原あゆ子)では第42回日本アカデミー賞新人俳優賞・話題賞(俳優部門)を受賞。以後『十二単衣を着た悪魔』(’20/監督黒木瞳)、『冬薔薇』(22/監督阪本順治)など多数の作品に出演し、『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(23/監督成田洋一)では第47回日本アカデミー賞・優秀助演男優賞を受賞。