ハライチ岩井勇気、相方・澤部佑との“コンビ格差”や「腐り芸人」の声も気にしないワケ

お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気(38)が3冊目のエッセー集『この平坦な道を僕はまっすぐ歩けない』(新潮社、税込み1430円)を発売した。小説新潮に連載したエッセーをまとめたもの。岩井はどんな思いでエッセーをつづっているのか。

インタビューに応じたハライチの岩井勇気【写真:山口比佐夫】
インタビューに応じたハライチの岩井勇気【写真:山口比佐夫】

唯一緊張した芸能人は「爆笑問題」

 お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気(38)が3冊目のエッセー集『この平坦な道を僕はまっすぐ歩けない』(新潮社、税込み1430円)を発売した。小説新潮に連載したエッセーをまとめたもの。岩井はどんな思いでエッセーをつづっているのか。(取材・文=平辻哲也)

 ハライチのボケ、ネタ担当で、テレビ東京系バラエティー『ゴッドタン』では腐り芸人として人気の岩井。エッセイストとしても活躍し、初エッセー集『僕の人生には事件が起きない』(2019年)は10万部突破のベストセラーに。『どうやら僕の日常生活はまちがっている』(21年)に続く本作は3冊目の著書になる。

 アニメやライトノベルが大好きで、前2作はライトノベルの題名をもじっている。最新作も同様に考えたが、編集者からボツをもらい、ラノベ風の題名にしたのだという。最新エッセーでは外食、旅行、趣味を謳歌する中、日々の出来事の“違和感”にツッコミを入れ、独自の視点を見せる。

「漫才はボケれば、相方がツッコんくれるんですが、エッセーはツッコミ不在なんで……」

 芸能人ならでは、の話は一切封印している。

「オレは芸能人、『バラエティーでご存じの岩井勇気です』と書くのがすごく恥ずかしいんです。子どもの頃から、テレビは『「ぷっ」すま』以外はアニメしか見ていなかったから、芸能界に憧れがないというのもあるかもしれないです」

 どんな大物芸能人との共演もほとんど緊張はしないという。

「唯一、緊張したのは爆笑問題さん。お二人には憧れていたので、最初に会った時はドキドキしました。実際はお二人とも優しいんですけども、太田(光)さんは何をするのか、分からないじゃないですか。M-1の決勝(09年)に出た直後にラジオに呼んでもらったのが最初の出会い。『M-1はハライチが一番面白かった』と言ってもらえて、うれしかったんですけど、ずっと恐縮していました。今や、TBSラジオの仕事で毎週会うんですけども……」

 相方・澤部佑の方がテレビの露出が多く、自身は「腐り芸人」と呼ばれることにも気にしていない。

「憧れがない分、頑張らないといけないという気持ちもない。自分が面白いと思うものじゃなかったら、やりたくないと思ってしまう。若い頃にやっていたロケも、そんな気持ちが出ていた。澤部(佑)の方がメディア露出が多いのも、『そりゃ、そうだ』と思っていたし、自分でも、やりたくないことをやらずに済んだとホッとしていましたよ」

 固有名詞は最低限もこだわりだ。中には子どもの頃から憧れたアニメ監督の最新作を見に行ったエピソードも出てくる。誰が読んでも、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』だと分かるが、あえて名前は伏せている。

「固有名詞はそれだけの力があるので、そこに頼りたくない。お笑いのネタでも、あまり出さないです。そこに頼ると、知っている人は面白がってくれるかもしれないですが、知らない人は疎外されるじゃないですか」

 執筆は深夜の自宅が多い。

「漫才のネタは、しゃべっているうちに、これ、ネタになるわ、今書きたいという瞬間があるんですけど、エッセーは“今、(ネタが)おりてきている”みたいなことはないです。締め切りに追われて、深夜になる感じです。ただ、前よりは書けるようになりました。じわじわくるような話よりも、ストレートに書く方が伝わるものがあるなと分かってきました。もともと文章が書きたかったわけではなく、文章を書けた方がいいだろうと始めたので、文を書くのは筋トレをしている感じなんです」

 エッセー執筆はお笑いネタに影響があるのか、と聞くと、「一つもないですね。むしろ、エッセーみたいな味のある面白みを漫才に入れようとして、これじゃ、誰も爆笑しないじゃん、みたいなことはあるかも。エッセーには賞がないと聞いたので、これは僕という主人公にした小説だ、と言い張ろうと思ったこともあるんです。新潮社の力でなんとか取らせてもらおうか、と思って……」と笑わせる。近く、本格的に小説家デビューということもあるかもしれない。

□岩井勇気(いわい・ゆうき)1986年7月31日、埼玉県生まれ。幼稚園からの幼なじみだった澤部佑とハライチを結成、2006年にデビュー。すぐに注目を浴びる。ボケ担当でネタも作っている。アニメと猫が大好き。特技はピアノ。ベストセラーになったエッセー集『僕の人生には事件が起きない』、『どうやら僕の日常生活はまちがっている』に続き、『この平坦な道を僕はまっすぐ歩けない』は3冊目の著書になる。

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