多部未華子、子どもの成長は「未知の領域」 大竹しのぶの“子育て観”に「なるほど」

俳優の大竹しのぶと多部未華子が、8月1日に公開されたディズニー&ピクサーの最新映画『インサイド・ヘッド2』で日本版声優を務めた。前作に引き続きカナシミを演じた大竹と、今作の新キャラクター・シンパイを演じた多部に、本作への思いや10代の頃の思い出について話を聞いた。

インタビューに応じた大竹しのぶ(左)と多部未華子【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた大竹しのぶ(左)と多部未華子【写真:ENCOUNT編集部】

映画『インサイド・ヘッド2』で共演「誰でも共感できる作品」

 俳優の大竹しのぶと多部未華子が、8月1日に公開されたディズニー&ピクサーの最新映画『インサイド・ヘッド2』で日本版声優を務めた。前作に引き続きカナシミを演じた大竹と、今作の新キャラクター・シンパイを演じた多部に、本作への思いや10代の頃の思い出について話を聞いた。(取材・文=猪俣創平)

 本作は2015年公開の映画『インサイド・ヘッド』の続編。大人になると増えていく感情をテーマに、成長して新たな壁に直面する主人公・ライリーの物語を描く。今作ではティーンエイジャーになった主人公・ライリーの幸せを“子どもの頃から見守る感情”ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリの前に、新たに“大人の感情”シンパイ、ハズカシ、イイナー、ダリィが現れ、感情の嵐が巻き起こる。

 大竹は前作に引き続くカナシミ役。久しぶりにカナシミの独特な声を出したといい、「違和感なく、すぐにできたのが驚きでした」と明かした。前作の魅力について「頭の中の感情が主人公という世界観がすごい発想ですよね。それに、前作の最初に『私はヨロコビ!』と登場して、人はみんな喜びを持って生まれてくるって考え方がすごく感動的だと思いましたし、色彩も豊かで、画面が本当に美しいです」としみじみと振り返った。

 また、自身が演じるカナシミについて、「ライリーがつらい思いをしたり、苦しい思いをしていると悲しくて涙が出てきちゃうけど、前作で幸せになるために悲しみが存在するんだと分かって、カナシミも必要なんだなと思いました。出来上がった作品はもちろん前作も好きですけど、2の方がよりテーマが深くなっている感じがして、素晴らしいです」と作品の魅力とともに説明した。

 一方の多部は今作の“新たな感情”シンパイ役。US本社のオーディションを経て、本作で初めてピクサー声優を務めた。オーディションではかなり緊張したと打ち明け、「オリジナルの声の方が少しハスキーなんです。それも踏まえて、少し癖のある声にしたいと演出の方に言われて、どうしようかと考えながら声を出していたので難しかったです」と振り返った。

 シンパイは、“大人の感情”たちのリーダー的存在で、最悪の将来を想像し、あたふたと必要以上に準備してしまうキャラクター。多部は収録に臨むにあたって、演出から「共感できないキャラクターかもしれない」と言葉をかけられたという。

「一人で突っ走って、みんなで協力する感情ではないから、あまり共感しながら声を入れることができないかもしれないと言われたんです。でも、見れば見るほど愛くるしくなっていきました。最後の場面もすごく好きなシーンですし、誰でも共感できる作品だと思います」

多部はシンパイ(中央)の日本版声優を務めた【写真:(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.】
多部はシンパイ(中央)の日本版声優を務めた【写真:(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.】

大竹は多部の“声”を絶賛「シンパイ役もぴったりだった」

 そんな2人は舞台『ふくすけ』(12年)、舞台『出口なし』(18年)で共演済み。取材中も終始なごやかなムードで、互いの印象について明かした。

「多部ちゃんの声は、舞台でもすごくハッキリしていて、他にない声を持っていると思うんですよね。今回のシンパイ役の声もぴったりだったから、すごいなって思いました。いつも『声優の方々って本当にすごいな』と思うんですけど、それに似た感情を抱きました」(大竹)

「初めて大竹さんにお会いしたときは『わっ、本物!』と感激しました。いつも穏やかでやさしいです。私は前作を見ていたので、今回、一緒に声を入れることができてすごくうれしかったです。カナシミは特徴のある声ですが、それでいて大竹さんっぽくないのもすごいです」(多部)

 そして、劇中では大人になっていく中での悩みも出現し、前作同様に見るものの共感を呼ぶ。大竹は「感情が増えた分、より複雑になってきています。悩むことやうまくいかないこともあるんですが、そんな感情たちが活躍して、自分の力で乗り越えることがすごく面白いです」と見どころを語った。

 そんな10代の頃の思い出を2人に聞くと、多部は「もう忘れましたけど、中学生の頃には芸能のお仕事を始めていたので、大人の方たちに囲まれた生活の中で、背伸びした方がいいのかなとか、自分もいろんな感情で生きてきたなって思います」と自身の過去を思い返し、今作でのライリーの姿にも「かっこつけてみたり、ちょっと気取ってみたり、すごくよく分かるなって。共感できるところだらけです」と言葉を続けた。

 大竹も自身の10代の頃について、思い出したかのように「そういえば私、高校生の時のバレーボール部の先輩がすごいかっこよくて、その人がちょっと歯が出ていて、自分も歯が出ないかなって。“イイナー”と憧れました」とつぶやいた。すると、多部が「『歯が出ていた』ってなんか……さんまさんみたいに?(笑)」と反応すると、大竹は「あんなに出てない(笑)」とツッコミを入れて笑い合った。

 劇中では少しずつ大人になっていくライリーを前に、ライリーの母親や父親、友人たちの感情の動きも描かれた。子を持つ“母親目線”での今作の印象はどうだったのだろうか。

 大竹は、子どもたちの反抗期はあまりなかったとしながらも、「娘は学校でいろいろあったみたいです。それなりに親は親で、学校に出ていくこともありましたし、今となっては懐かしい思い出ですね。みんな通っていく道なんだと思いますし、母としては見守るしかないところもあります。話を聞いてあげるとか、それだけで違うと思います」と回想。

 これを聞いた多部は「なるほど」とつぶやくと、大竹から「多部ちゃんはこれからだもんね」と声をかけられた。子どもがまだ幼い多部は「話を聞くって大事で、話さなくなったら終わりですよね。でも、思春期の子どもがいることが未知の領域すぎて、どうしたらいいんですかね?」と頭を悩ませると、「子どもと一緒に生きていく上で、私とは性格も違うだろうし、人間関係も違ってくるだろうから、思春期を迎えるために用意する言葉とかあるのかなって思いながら見ていましたけど……全然想像できないですね」と笑顔で語った。

 本作の感情は人物によって“司令塔”となる感情も異なることから、自身の中心となる感情について聞くと、大竹は「ヨロコビ」と即答。それを受けて、多部は「私もヨロコビでありたいと思いつつ、シンパイかもしれないです。結構、いろいろと先回りして考えます。『どういうことなんだろう?』『これってどういうつもりで言ったの?』って心配しちゃうことも多いので」と笑って、インタビューを締めくくった。

□大竹しのぶ(おおたけ・しのぶ)1957年7月17日、東京都出身。75年、映画『青春の門 -筑豊編-』ヒロイン役で本格的デビュー。同年、NHK連続テレビ小説『水色の時』に出演。以降、映画、舞台、ドラマなど話題作に相次いで出演。アニメ映画ではジブリ『借りぐらしのアリエッティ』(10年)、『君たちはどう生きるか』(23)、ディズニー&ピクサー『インサイド・ヘッド』(15年)で声優を務める。また11月には主演舞台『太鼓たたいて笛ふいて』を控える。

□多部未華子(たべ・みかこ)1989年1月25日、東京都出身。2002年に俳優デビュー。05年、映画『HINOKIO』と『青空のゆくえ』でブルーリボン賞新人賞を受賞。09年、NHK連続テレビ小説『つばさ』でヒロインを務め、その後数々の映画、ドラマ、舞台で活躍。Netflixシリーズ『リラックマと遊園地』、アニメ映画『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』で声優を務める。

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猪俣創平

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