豚骨ラーメン好きが悲鳴 心筋梗塞で倒れ生活一変…仕事再開も2度目の手術 医師も「危なかった」

8月10日は「健康ハートの日」。冬場だけでなく、夏に怖いのが心筋梗塞だ。昨年7月27日、千葉・松戸市の和田裕之さんは体の異変を訴え、自宅で失神。救急搬送先の病院で急性心筋梗塞と診断され、手術を受けた。現在体調は回復しているものの、この1年の間に、2回目の手術あり、出張先での体調不良ありと、さまざまなハードルを乗り越えてきた。心筋梗塞の術後、激変した生活と治療経過をリポートする。

心疾患は夏も気をつけたい【写真:和田さん提供】
心疾患は夏も気をつけたい【写真:和田さん提供】

塩分制限でマグロの赤身にしょうゆつけれず

 8月10日は「健康ハートの日」。冬場だけでなく、夏に怖いのが心筋梗塞だ。昨年7月27日、千葉・松戸市の和田裕之さんは体の異変を訴え、自宅で失神。救急搬送先の病院で急性心筋梗塞と診断され、手術を受けた。現在体調は回復しているものの、この1年の間に、2回目の手術あり、出張先での体調不良ありと、さまざまなハードルを乗り越えてきた。心筋梗塞の術後、激変した生活と治療経過をリポートする。

「心筋梗塞になってからネット記事をたくさん読むようになるじゃないですか。そうすると、勝手にAIが判断して本当に悔しいけどそういうネタばかり出してくるんですよ。ひどい時はお葬式の広告まで出てくるんです。『小さなお葬式』とか『家族葬』とか。ああいうの見ると悲しくなってくるんです。俺死んじゃうのかって」

 7月25日、倒れてから1年後の検診を受けた和田さんは、「何も問題なかったです。数値もよくなっていました」とほっとした表情を浮かべつつ、一変した生活を嘆いた。

 ちょうど1年前、51歳の若さで生死の境をさまよった。心臓の右心房の血管が詰まり、心筋梗塞を発症。カテーテル手術を受けながら、止まった心臓を蘇生させるためのAEDが7回繰り返された。あの痛みは今でも思い出したくない。

 心臓に負担をかけないため、生活習慣は一から見直した。

「とりあえず食を全て変えました。何せつらいのがラーメン屋さんに行けなくなったことですね。あとはファストフード。ハンバーガー屋さんもマクドナルドも1年間ご無沙汰です。アルコールも全く飲んでいません。付き合いで行っても水ですね」

 深夜のラーメンは大好物だった。「豚骨が好きでしたね。麺固め、油マシ、味濃い目とか言っちゃうタイプです。週1で行っていました」。倒れた後は1日に摂取できる塩分量は6グラムと決まっている。仕方のないこととはいえ、厳しい塩分制限に悲鳴を上げた。

「家では生ラーメンを買って食べていますけど、だいぶ味は薄いです。日本そばも好きだけど、麺つゆはなるべく自分で作るようにしています。昆布でだしとって。カップラーメンはだいたい5~6グラムの塩分があるので、1個でアウトですね」

 すしを食べてもしょうゆは1滴、2滴つけるだけ。マグロの赤身はしょうゆをつけずに食べることもある。味気ない食事だが、酢飯の塩で我慢しているという。

 一方で、手術を受けてもすぐに安心というわけにはいかなかった。悩まされたのは、再発の不安だ。

「若い人に限って(倒れた時のことが)頭にフラッシュバックして思い出してしまう。それで救急搬送される方は何名もいらっしゃるというのは先生から聞いていました」

 和田さんは特殊車両のレンタル業のほか、顧客から車を預かり、特殊なコーティングを行う会社「ジープカフェ東京」を経営している。体力が必要で、夏には汗だくになる仕事だ。心筋梗塞を発症する前に自覚症状は全くなかったが、術後に職場復帰すると、仕事量に気をつけていても、たびたび心臓の違和感に襲われた。

「暑かったり運動したりするとドキドキしてくる。そういう状況が続きました」

ステントは右に1本、左に2本入っている【写真:和田さん提供】
ステントは右に1本、左に2本入っている【写真:和田さん提供】

2度目の手術を決意 先生も「危なかった」と…

 11月には、2回目の心臓カテーテル手術を受けた。きっかけは、「自分の中で右が詰まったから、左も本当はダメなんじゃないかって疑ったんですよ」という“カン”だった。精密検査を受けると、心臓の左心房の血管が詰まっていることが判明。「先生も危なかったと言っていました。先にやっといてよかったねと」。血管を広げるステントは右1本に対し、左は2本入った。

 症状は治まり、「かなり楽になりました」といったんは回復した。

 ところが、4月下旬、鹿児島出張中に再び異変を感じる。駐車場までのわずかな距離を走ったところ、心臓がバクバクになった。

「ホテルに帰って心臓が『あれ、なんか息切れがすごいな』と思って。その息切れが夜中の1時ぐらいまで続いたんですよね。たかが本当に数十メートル走っただけなんですけど、救急車を呼んでもらおうかなと思ったぐらいに」

 翌日現地の病院で診察を受け、ホルター心電図計を装着。大きな異常はなかったものの、「心臓は2秒止まっていましたね」と告げられた。

 薬は毎日9種類を服用。「血管を広げる薬や血圧を下げる薬、胃薬も入っています」と説明する。外食を減らし、毎日トマトジュースを飲むなど、健康に過ごすことを最優先している。

 現在は落ち着いているとはいえ、懸念材料の一つが体重だ。医師からは70キロまで体重を落とすように指示されているものの、93キロでストップ。激しい運動をするわけにもいかず、心臓に“負荷”がかかったままの状態となっている。

 大病から1年が経過し、かみ締めるのは命の尊さだ。今後も体と向き合いながら、慎重な生活を肝に銘じている。

「本当に50歳過ぎて、死ぬのが怖いっていうふうに思いましたね。やんちゃな人って死ぬ時はぽっくりいきゃいいんだよって話をみんなするんですけど、そういうもんじゃないと思う。やっぱり長生きしたいって思いますね。できる限り」と和田さんは結んだ。

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