フワちゃん、やす子への「暴言」謝罪の法的問題と解決策を弁護士が指摘 命に関わる言葉は「犯罪」にも

タレントのフワちゃんが今月4日、Xで不適切な投稿としたとして謝罪した。謝罪の対象は明らかにされていないが、その20分前にはお笑いタレントのやす子が「とっても悲しい」と投稿。そして、フワちゃんがやす子に対して心ない「暴言」を投稿したとする画像がネット上に出回った。元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「この投稿には違法の恐れがある」とし、今後、求められる対応を指摘した。

フワちゃん【写真:ENCOUNT編集部】
フワちゃん【写真:ENCOUNT編集部】

元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士

 タレントのフワちゃんが今月4日、Xで不適切な投稿としたとして謝罪した。謝罪の対象は明らかにされていないが、その20分前にはお笑いタレントのやす子が「とっても悲しい」と投稿。そして、フワちゃんがやす子に対して心ない「暴言」を投稿したとする画像がネット上に出回った。元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「この投稿には違法の恐れがある」とし、今後、求められる対応を指摘した。

 その「暴言」はあまりに酷く、肝心の部分を伏せて報じる記事が多いほどだった。

 フワちゃんが自身のXに「本当にすみません。今ここで皆さんに報告することではないのですが、言っちゃいけないこと言って、傷つけてしまいました。ご本人に直接謝ります」と投稿した。謝罪の理由はやす子氏への「暴言」と見られている。本人からの説明がないので真偽は定かではないものの、ネット上にはフワちゃんの投稿とされるスクリーンショットが出回っている。

 問題の投稿とされる文面は、やす子氏がXに「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす」と書き込んだのに対して、「おまえは偉くないので」と書き出し、その後に「『生きてる』の逆の状態になってくれ」という意味の言葉を投げかけている。そして、最後に「予選敗退でーす」と記している。

 もし、これがフワちゃんの投稿なら救いようはない。人の命に関する罵声は、これまでにも多くの悲劇を生んできた。今年3月に公表された大阪府内の中学生がいじめで命を落とした事件の報告書では、加害者がSNS上で「Sine(しね)」「Uzai(うざい)」などの暴言を繰り返していたことが明らかにされた。

 法律の世界では「死ね」という言葉は「相手の人格を全否定する表現」として侮辱罪に当たり得るとされている。この侮辱罪は2022年、ネット上の攻撃やいじめの問題を受けて「厳罰化」され、懲役刑を科すことができるようになった(1年以下の懲役または禁錮)。また、「死ね」という言葉が発言時の状況によって「殺す」という意味に受け取られる場合には、脅迫罪として2年以下の懲役などになる。

 人の命に関わる言葉はそれだけ重く、「犯罪」にもなり得るのだ。そのことは誰にでも分かるはずなのに……と思う。

 こうした深刻な事案にもかかわらず、一部には投稿を受けたやす子氏に対して「タレントだから受け流せばいい」という声もあるらしい。しかし、それは単なる「加害者の論理」だ。

 命に関する犯罪のおそれもある暴言を受けた時、それを黙ってやり過ごしたり、偽りの笑顔で迎合したらどうなるか。加害者側は「あっ、この程度ならやっていいんだ」「相手も笑っているから遊びだよね」と考え、行為はエスカレートする。こうやって、これまでにいくつもの貴重な命が失われてきたはずだ。

西脇亨輔弁護士
西脇亨輔弁護士

やす子の対応は最善、フワちゃんに求められる経緯説明

 だからこそ、今回の投稿については、受け流しても、迎合してもいけない。投稿に対してやす子氏が「とっても悲しい」と返答したことは、相手を責めることなく、でも、投稿がどんな傷をもたらすかを示していて、最善の対応だったと思う。

 これに対してフワちゃん側はXで「ご本人に直接謝ります」という意向を示した。しかし、それでいいのか。

 フワちゃん側としては、やす子氏に直談判しに行けば、同じくタレント業をしているやす子氏側も体面上は許すしかなくなり、「1対1で会って許してもらいました」という形にできるという計算があるのかもしれない。しかし、それで事態と向き合ったことになるのだろうか。

 今回の事態が起こったのは、個人のプライベートな空間ではない。Xという公共の場に投稿され、そのフォロワー数はやす子氏が55万人余り、フワちゃんに至っては109万人近くに上っていた。そのような衆人環視の下で、犯罪になり得る言葉がぶつけられた可能性がある。この事態のけじめは、投稿者が公共の場で経緯を説明し、自分の考えを示さない限り、つけることはできないのではないだろうか。

 投稿に使われたとされる言葉は「ちょっと謝れば許してもらえる」というラインを大きく越えている。世の中には許されることと許されないことがあることをはっきりさせるために、そして、どこかで心ない言葉に苦しめられている多くの人達のためにも、この問題はうやむやのまま終わらせてはいけないと思う。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。

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