漫画賞少年部門『葬送のフリーレン』が受賞 異例の他社作品選出に原作者「驚いております」
第48回講談社漫画賞の贈呈式が都内で31日に行われ、漫画『葬送のフリーレン』が少年部門を受賞した。
選評者の1人として登壇した漫画家の海野つなみ氏「4年前から候補作」
第48回講談社漫画賞の贈呈式が都内で31日に行われ、漫画『葬送のフリーレン』が少年部門を受賞した。
同作は、原作を山田鐘人(やまだかねひと)氏、作画をアベツカサ氏が務めるファンタジー作品。魔王を倒した勇者一行の魔法使いでエルフのフリーレンを中心に、英雄たちの後日譚を描く。「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中で、コミックスは累計発行部数2000万部を突破。2021年には「マンガ大賞2021」大賞、「第25回手塚治虫文化賞」の新生賞を受賞している。日本テレビ系列でアニメ版がアニメ枠『FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)』にて放送され、好評を博した。
選評者の1人として登壇した漫画家の海野つなみ氏は「『フリーレン』は、私が選考委員を受けた4年前から候補作に入っていた」と告白。「もうそのときからずっと推していた。(毎年)『今年もとれなかった~!』みたいな気持ちだったので、今年ようやくとれて『本当にうれしい!』という感じでした」と心境を吐露。
続けて同作について「全体としてのバランスの良さが評価されました」と言い、「ずっと色々候補に上がっては『今年じゃなくてもいいんじゃない?』、『大きい賞もらってるからいいんじゃない?』みたいなことも言われたりした。選ぶ側としては、受賞する作品も、受賞しなかった作品も本当に紙一重」と評した。
2015年に『逃げるは恥だが役に立つ』で第39回講談社漫画賞(少女部門)を受賞している海野氏。「(受賞した作品も受賞しなかった作品も)どっちもすばらしいんですけど、そこで受賞するというのは、作品にとっても作家の人生にとってもすごい大きいこと。あと、まわりの方にとっても大きいこと。その重みというのは、受賞者の皆様がこれから抱えていかれると思う。それが後々、ズッシリと体に染みてくるというか、本当に僅差ではあるけれども、受賞したほうからすると大きい」と実体験を重ねて述べた。
最後に海野氏は「『フリーレン』は、登場人物たちが何を得て、何を失い、何を知ってというのも、読者としても楽しみ。どうか最後まで一緒に旅を見守っていただきたい」と世の読者にメッセージを送った。
受賞した山田氏とアベ氏は、この日の贈呈式を欠席したものの、それぞれ受賞コメントを寄せている。
山田氏は「この度は、講談社漫画賞という歴史ある賞に選出いただきありがとうございます。他社の作品ながらこうして受賞できたことに驚いております。選考いただいた選考委員の先生方、ありがとうございます。受賞はひとえに関わってくださっている皆様のおかげです。いつも雑誌や単行本で読んでいただいている読者の皆様。1コマ1コマに素晴らしい絵を入れていただいているアベツカサ先生。編集部の皆様。販売・宣伝・流通に携わってくださる皆様。原作をとても丁寧に映像化してくださったアニメ関係者の皆様に心より感謝申し上げます。また、この作品を推薦してくださった講談社の皆様、まことにありがとうございます」(原文ママ)とコメント。
アベ氏は「この度は、栄えある賞に選んでいただき、まことにありがとうございます。選考委員のみなさま、選出いただきましてありがとうございます。1話1話、1P1P、1コマ1コマ、山田先生のネームの面白さが読者の方々に伝わるように描いてきたつもりなので、多くの読者のみなさまに支えられて、こうして受賞させていただき、感無量です。また、少年サンデーでの連載とコミックス制作を支えてくださってる関係各所のみなさま、この作品を推してくださった講談社のみなさまに心より御礼申しあげます。山田先生と、みなさまとで一緒に頂けた賞だと思っております」(原文ママ)と話している。
その他、少女部門をいちのへ瑠美(るみ)氏が手がけた『きみの横顔を見ていた』、総合部門はつるまいかた氏の『メダリスト』が受賞した。
同授賞式の司会はお笑いトリオのパンサー(菅良太郎・向井慧・尾形貴弘)、元AKB48の宇佐美友紀が務めた。
講談社漫画賞は、講談社発行の雑誌を中心に、優秀な漫画作品を表彰。書店、一般読者、実施委員会による各候補作(のべ323作品)の中から、各種選考・審議を経て受賞作品が決定した。各賞の受賞者には、賞状およびブロンズ像が授与された他、副賞としてそれぞれ100万円が贈呈された。
【受賞一覧】
・少年部門
『葬送のフリーレン』
原作:山田鐘人氏
作画:アベツカサ氏
週刊少年サンデー(小学館)
※贈呈式には週刊少年サンデー編集長が代理出席
・少女部門
『きみの横顔を見ていた』
いちのへ瑠美(るみ)氏
別冊フレンド(講談社)
・総合部門
『メダリスト』
つるまいかだ氏
アフタヌーン(講談社)