大泉洋×宮藤官九郎氏が初タッグ 山田太一氏原作『終りに見た街』をリメイク「作品を通して戦争を考える」

 俳優の大泉洋が、宮藤官九郎脚本の作品で初主演を務めることが30日、発表された。テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終りに見た街』(9月21日午後9時)で、2人は初めてタッグを組む。

大泉洋と宮藤官九郎が初タッグを組み【写真:(C)テレビ朝日】
大泉洋と宮藤官九郎が初タッグを組み【写真:(C)テレビ朝日】

過去には細川俊之、中井貴一が主演を務めた作品

 俳優の大泉洋が、宮藤官九郎脚本の作品で初主演を務めることが30日、発表された。テレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム『終りに見た街』(9月21日午後9時)で、2人は初めてタッグを組む。

 『終りに見た街』は、存在感のある人間を描くテレビ脚本家としての第一人者である故山田太一氏の原作。戦争体験者の一人として厳しい体験を次世代に伝えることをテーマにしており、1982年と2005年の2度、テレビ朝日でドラマ化された。脚本は山田氏自身が担当。その内容性の深さとメッセージ性の強さで、大きな反響を呼んだ。そして、約20年の時を経て3度目のドラマ化が実現した。

 脚本家、小説家として一時代を築き、ホームドラマの名手として家族をはじめ人間模様を丁寧に紡ぐ山田氏の作品の中でも異彩を放つ本作。82年放送時には細川俊之が、05年には中井貴一が主演を務め、それぞれの時代に生きる主人公家族が昭和19年にタイムスリップし、戦時下を生き抜く姿が描かれてきた。

 そして、3度目となる今回は、令和の時代に東京郊外で何不自由なくありふれた日常を暮らすテレビ脚本家・田宮太一(大泉)の一家が、ある日突然、太平洋戦争まっただ中の昭和19年6月にタイムスリップ。そこはビルもショッピングセンターもなければ携帯も通じず、食料を入手することも困難な世界。令和とのあまりの違いに狼狽える太一や家族だが、彼らは戦時下の衝撃の現実を目の当たりにする。幾多(いくた)の作品で活躍する大泉が、テレビ朝日のドラマ初出演にして初主演を務める。

 以下は大泉と宮藤氏のコメント。

○大泉洋

――山田太一氏の原作を20年ぶりに宮藤官九郎脚本でドラマ化する本作ですが、出演オファーを受けた際のお気持ちを聞かせてください。

「このオファーをいただいたのが、『こんにちは、母さん』(2023年)という映画で宮藤さんと役者として共演したすぐ後ぐらいだったのですが、機会があればいつか宮藤さん脚本ドラマに出たいなという思いもあったので、単純にうれしかったです。しかも、山田太一さんの原作を宮藤さんが脚本にするという、天才同士のコラボ作品だったので、戦争というとても重たいテーマをどんな作品になるんだろうと楽しみでした」

――実際に宮藤さんの脚本を読んでいかがでしたか。

「40年前に書かれた山田さんの世界観に、現代のテイストをふんだんに盛り込みながら描いていて、さらに戦争というテーマでありながらも、宮藤さんならではのお笑いも果敢に盛り込んでいて、なんて面白い脚本なんだろうと大変感動いたしました。もともとの山田さんが書いている本が面白いということも大きいと思います。物語の最後に驚く展開があるんですが、これが40年前に書かれているということにびっくりしますし、40年経った今の時代にこのラストが、より重くのしかかってくる気がします」

――令和の今、この作品を届けることについてどう思いますか。

「この作品は過去に起きた戦争をただ再現して伝えるのではなく、現代に生きる人間が戦時下にタイムスリップしていくので、より生々しく感じられる。これまでも、1982年、2005年と2度ドラマ化がされていますが、1作目が昭和57年から約40年前に、2作目が平成17年から約60年前にタイムスリップして、そして3作目となる今回令和6年の僕たちが80年前の昭和19年にタイムスリップしたらどうなるんだという。山田さんの書いた本自体が、その時代その時代でリメイクするのに大変適している。それぞれの時代の人が実際に戦時下に入っていくから、どの時代でも視聴者が戦争というものをよりリアルに考えられるし、いつの時代に作っても考えさせられるドラマだなと思います。さらに本作では、宮藤さんの脚本だからこそ見ようかなと、若い人を中心にそう思う人も多いでしょうから、それも本当に意義があると思います。

 戦争というものをもっとリアルに考えなくてはいけない時代の中で、この作品を通して僕たちが戦争に対してどう考えていくのかということを、改めて突きつけられる部分があるなと思います」

○宮藤官九郎氏

――山田太一さんの原作を読んだ際の印象を教えてください。

「脚本家が主人公ということで、他人事とは思えませんでした。『異人たちとの夏』(新潮文庫)もそうなのですが、主人公の設定は等身大なのに物語はファンタジーというのが、山田先生らしいなと感服しました。小説は何度も読み返しましたが、今回脚本を担当させていただくにあたり、ドラマ版はあえて見ずに書きました。2度目はないチャンスですし、リメイクではなく、あくまで小説の脚色として取り組みたかったので」

――主演の大泉洋さんにはどのような印象をお持ちですか。

「絶妙にネガティブ。そこが大泉さんと、山田先生と、僕の共通点だと思います。劇団(TEAM NACS)では作劇を担当することもあるからでしょうか、物を考える人、創る人の顔をしているなぁと以前から思っていたので、脚本家の役はピッタリだと思いました。

 執筆に着手したのが、ちょうど映画『こんにちは、母さん』(2023年)で共演していた時期で、現場で大泉さんから『宮藤さんの作品、呼んで下さいよ』と言われたので、すぐ呼んだらビックリするだろうなと思って、オファーする前から勝手に当て書きしました」

――本作の脚本で特にこだわった点や大切にしたことがあれば教えてください。

「戦争経験の有無が、僕と山田先生の大きな違いなのですが、それを逆手に取って、実感を伴わない主人公の“反戦”が、この苛烈(かれつ)な物語を通じて実感を帯びてゆくという大きな流れを意識して書きました。彼らに感情を乗せることで、戦争のおろかさを感じることが出来ると思います」

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