水谷豊、『熱中時代』北野先生に“モデル”いた 高校時代の恩師2人をものまね
俳優・水谷豊(72)が主演した日本テレビドラマ『熱中時代2・先生編』(80~81年、全38話)がBS松竹東急(BS260ch・全国無料放送)で、8月3日午後6時から放送される。水谷が44年前の『熱中時代2』の裏舞台を語った。
水谷が明かす44年前の『熱中時代2』の裏舞台
俳優・水谷豊(72)が主演した日本テレビドラマ『熱中時代2・先生編』(80~81年、全38話)がBS松竹東急(BS260ch・全国無料放送)で、8月3日午後6時から放送される。水谷が44年前の『熱中時代2』の裏舞台を語った。(取材・文=平辻哲也)
『熱中時代2』は、1978年放送の前作が最終回で視聴率40%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を叩き出す大人気となったことから、すんなりと製作が決まった。前作で故郷・北海道の牧場を手伝うことになった北野広大(水谷)は、校長の天城(船越英二)の誘いを受け、再び若葉台小学校に戻ってくる。
「ヒットしましたから、やらないわけがないという勢いでした。テレビ局にも続編を望む声が多かったんです」
『2』では天城校長夫妻(船越、草笛光子)は続投したが、先生役には秋野太作、木内みどり、交番の巡査役には蟹江敬三、峰竜太らが加わった。
「『相棒』も同じですが、この『熱中時代』が好きなのは、シリアスとコメディーと両方できるということ。共演者の皆さんもコメディータッチが表現できることを意識してキャスティングされたと思います。中でも、船越さんは素晴らしかったですね。一緒に演じていると、すぐに世界ができるんです」
『2』第1話では天城校長が、北野が働く北海道までやってくることから始まる。ロケの帰りの電車では、こんなこともあった。
「船越さんは、『僕たちは顔を知られているから、寝る時は顔にハンカチをかけると、いいんですよ。こうすれば、誰か分からないから』と言うんです。2人して、ハンカチをかけて、船越さんはその上から眼鏡をかけていらっしゃいました」
天城校長のセリフは今でも覚えている。
「大人というのは、子どもの気持ちを分かっていないといけない。みんな、『大人はかつて子どもだったことを忘れるんですよ』といった言葉です。これはいい言葉だと思いました。子どもを教えるには技術が必要で、ついつい技術に走ってしまう。でも、それ以前に、大人と子供の付き合い、先生と生徒の付き合いがあって、もう一つ人と人の付き合いがある。これは忘れがちですけども、絶対に忘れてはいけないな、と思っていました」
『2』は、成長がテーマだった。『1』で登場した3年4組の生徒たちは5年生になったが、北野先生が担当するのは前回より1学年下の2年生。
「5年生の担任にすれば、続きみたいな感じはあるけれども、さらに小さな子どもたちになりました。セリフにもあったと思いますが、彼らはタケノコの白い状態なんです。その白いタケノコである子どもたちに、広大がどのように接して、どのような色をつけていくのか、というのがテーマでした」
「オレも水谷みたいな先生になりたくて」と同級生から感想も
北野広大は自然に子どもたちとの触れ合いを通じて演じることができたが、キャラクターの参考にしたのは高校時代の恩師だという。
「一人は1年の担任の地理の先生です。この先生がのんびりしゃべるんですよ。このニュアンスが好きで、当時から、よくモノマネしたんですよ。もう一人は数学の先生の担任。その先生は黒板になんか書いて振り返りざまに『いっか?』と聞くんです。僕は、教科書に先生の似顔絵を全員描いていました。1年の時の先生は若くして亡くなって、葬儀にも行ったのですが、2年の時の先生は多分見てくれたんじゃないかなと思います」
水谷の同級生にも先生になった人もいて、「オレも水谷みたいな先生になりたくて」という感想をもらったこともある。
「北野広大は、理想的な先生ですよね。でも、現実はそうはいかないんですよ。理想だけを捉えていくと、現実のギャップだけが広がって、苦しくなってしまう。だから、『2』では、PTAや教育委員会のあり方なども触れていました。教育評論家の遠藤豊吉先生が監修についてくださり、その辺のバランスは取ってくれたので、少しリアルではあったのかもしれないです」
『熱中時代』を見て、先生を志した人も少なくない。
「だから、悪いことしたなぁって思います(笑)。刑事も同じです。よく言われます。当時、実際に全国で起きた現象として、『来年は3年4組になります』と、3年生の子どもたちが喜んだ、というんです。で、教室に入ってきたのが、北野先生じゃなかったので、がっかりする、と」
『2』では礼文島からやってきた5年生みね子との交流も見どころ。演じた二階堂千寿(54)とは『相棒』シリーズに呼ぶなど、今も関係が続いている。
「今も“みねっこ”という感じですね。もちろん、進め方は落ち着きがあるんですけど。『2』は主題歌(やさしさ紙芝居)も歌っているので、それも聞いてほしいですね」
今、北野広大を演じられるか、と聞くと、「いや、それは……。校長先生になったかは分かりませんが、もう退職して、しばらくたっているでしょう。それに、みなさんは僕が何歳かはご存じでしょう。『相棒』だって、はたして何歳まで警視庁にいられるものか、ふふ」と笑った。
■水谷豊(みずたに・ゆたか)1952年7月14日、北海道出身。代表作はドラマ『傷だらけの天使』(NTV/74)、『熱中時代』(NTV/78)、『相棒』(EX/00)など。映画では『青春の殺人者』(76/キネマ旬報主演男優賞受賞)、『幸福』(81)、『少年H』(13)、『王妃の館』(15)などがある。『TAP‐THE LAST SHOW‐』(17)で初監督に挑み主演を務め、『轢き逃げ 最高の最悪な日』(19)、『太陽とボレロ』(22)では監督、脚本、出演も務めた。