「バカみたいに高い金額を提示」 タワマンからの引っ越し見積もりが高額になる理由とは?

引っ越したいのにお金が無くて引っ越せない、業者に空きがなく引越しそのものができない、そんな人たちを表す“引越し難民”という言葉が生まれて久しい令和の世の中。追い打ちをかけるように「2024年問題」が重なり、さらなる引越し難民を生み出している。仕方なく1か月かけて自分で少しずつ荷物を運んだり、できるだけ荷物を減らすために家財道具を処分して引越し金額を下げるなどという、本末転倒なことも起こっているというが……。

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】
タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

引越し見積りの値段の高さに驚愕

 引っ越したいのにお金が無くて引っ越せない、業者に空きがなく引越しそのものができない、そんな人たちを表す“引越し難民”という言葉が生まれて久しい令和の世の中。追い打ちをかけるように「2024年問題」が重なり、さらなる引越し難民を生み出している。仕方なく1か月かけて自分で少しずつ荷物を運んだり、できるだけ荷物を減らすために家財道具を処分して引越し金額を下げるなどという、本末転倒なことも起こっているというが……。

「我が家も類に漏れず、引越し難民になってしまいました」

 そう語るのは、港区のタワーマンションにお住まいの渡辺はなさん(仮名・49歳)。商社務めの夫、中学生・小学生の2人の子どもの4人暮らし。現在のタワマンから同じ区内にある低層マンションへの引越しを、年度末に計画していたという。

「見積もりは3社くらいに声を掛けたほうがいい、というようなアドバイスをネットで読んだので、1月には大手2社と中小1社の3社にお声がけさせていただき、見積もりをいただきました。家族4人分ではありますが、我が家は私も夫もミニマリスト体質のため、普通の家庭より荷物は圧倒的に少ないと思います。なので、料金は嵩んでも20~30万円程度だろうと思っていたのですが、フタを開けてびっくり。62万円、58万円、57万円……と、3社ともにバカみたいに高い金額を提示してきたんです」

 なぜこんなに高いのか。そう業者に問い合わせたところ、「タワーマンションだから」という答えが返ってきて愕然としたという。

「タワマンだからこそ、エレベーターもあり、エントランスなども広く、引越し業者が困ることは少ないと思うのですが……。ぶっちゃけてしまうと、夫の会社の業績があまり芳しくなく、家賃補助が大きく下がるため、引越しをせざるを得ない状況にあります。仕方なく、引越しを先延ばしにし、安く引っ越せる時期に計画し直すことになっています。ただ、差額分の家賃が毎月かかることになるので結局、お金はかかるんですよね。なんだか損ばかりしているようで、つらいです」

「広い」からこそ経費はかかる

「実はタワマンは、通常のマンションよりも引越し費用が高くなる可能性が高い物件なんですよ」

 そう語るのは、業界歴20年以上を誇る、中目黒コレカライフ不動産の姉帯裕樹さん。高額見積もりのからくりを話してくれた。

「引越しの見積もりを出す際、業者側は人手がどれくらい必要か、荷物の量はどれくらいか、トラックの大きさはどれくらいか、引越し先までの距離はどれくらいか、などさまざまな要素を考えて金額を出します。タワマンの引っ越し代金が高くなる理由の1つは、時間と人手がかかるということ。高層階からの運搬は物理的に時間がかかる上に、『エレベーター待ち』のための時間が必要になります。また、部屋から駐車場までの距離が長くなるため、その分、人手が必要になります。そうしたこともあり、通常の物件より高めに設定されているんです」

 加えて、渡辺さんがメリットとして指摘した『広さ』が、費用を上げる要因の1つになるという。

「引越しの際、荷物を運んだり台車で移動したりする際に廊下や壁、エレベーターのドアなどを傷つけたりしないよう、養生シートを壁や廊下に設置する必要があります。タワマンのように大きい物件は、駐車場のドアやエントランスまわり、エレベーターホール、エレベーター内、部屋までの廊下など広範囲にわたって養生を行う必要があり、その分、資材費が上がるんですよ。また、運ぶ荷物の中に貴重品がある場合は、損害保険を掛ける必要があるため、その分の料金もプラスされてしまいます。

 ガソリン代などの経費も高くなっているので、これまでに比べて引っ越し代金が異様に高くなったように思えてしまうのだと思いますが……。はっきり言います! 今までが『安すぎた』んです。僕たち業界の人間からみたら、ようやく適正価格になったな、なんて思ってしまう部分もあるので、見積もりに納得がいかないのは分かりますが、先ほども言ったように引っ越しには、人や物が動いています。人や物が動くとお金がかかります。数社から相見積もりを取るなどして、相場を知り、このくらいは必要経費と思うしかないかもしれません」

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。

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