為末大氏「出場させる道をさぐって」 喫煙・飲酒でパリ五輪辞退の宮田笙子について再考求める

陸上400メートル障害で世界選手権2度銅メダル獲得の為末大氏が20日、19歳ながら喫煙と飲酒が発覚し、パリ五輪への出場辞退が発表された体操女子日本代表の宮田笙子(みやた・しょうこ=順天堂大2年)について「出場させる道をさぐって欲しいです」と願った。その上で「叱りながら、愛を持って支える社会を作っていくべきだ」などとつづっている。

為末大氏(2015年撮影)【写真:産経新聞社】
為末大氏(2015年撮影)【写真:産経新聞社】

自身の荒れていた時代を明かし「人は変われる」

 陸上400メートル障害で世界選手権2度銅メダル獲得の為末大氏が20日、19歳ながら喫煙と飲酒が発覚し、パリ五輪への出場辞退が発表された体操女子日本代表の宮田笙子(みやた・しょうこ=順天堂大2年)について「出場させる道をさぐって欲しいです」と願った。その上で「叱りながら、愛を持って支える社会を作っていくべきだ」などとつづっている。

 為末は「体操選手が飲酒喫煙が発覚し、五輪を辞退することになっています。自らの辞任なのか、要請され辞任の形を取ったのかどちらかわかりませんが、選手の心境を考えるととても辛いと思います」とし、「どうか、協会としても出場できる道を探って欲しいです」と願った。

 日本体操協会は「日本代表の行動規範」として、「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する」「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても飲酒は禁止とする」などと規定。宮田については東京・味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で飲酒を行っていたことが内部通報によって発覚しており、19日の記者会見で発表した「宮田のパリ五輪出場辞退」で結論付けた形だ。しかし、オリンピアン(五輪出場経験者)でもある為末氏が再考を求めている。

 そして、同氏は「私は三つの観点から、これを機に、十代の子供たちが問題を起こした時に、叱りながら、愛を持って支える社会を作っていくべきだと思っています」とつづっている。

「 一つ目はルールの運用は機械的でない方がいい、点です。 車に乗ったことがある日本人であれば知っている通り、高速道路でのスピード違反は常態化しています。首都高速が見える位置でスピードガンを構えていると、ほとんど全てと言っていいぐらいの車が速度超過をしています。けれども全ての車が捕まるわけではありません。どこから見てもルール違反ですが、それはなんとなく見過ごされています。もちろん厳密に運用することもできます。十年ほど前上海に行った時、車がとても静かで驚きました。なぜかと聞くと顔と車のナンバーを常に監視カメラで抑えているので、どのような違反も見つけられるからだそうです。 ルールを厳密に運用する社会は、全ての行為を監視し、機械的に処分することになるだろうと思っています。技術的にはすでに可能です。 また仮に監視カメラがなくても、相互監視も可能です。常に自分のカメラもマイクもオンにしておき、ルール違反行為があれば、そのデータをしかるべきタイミングで外部に出すこともできます。 インテリジェンスの技術には、自ら恥を打ち明けることで、相手にも恥を打ち掛けさせ、その情報をもとに強請るというものがあるそうです」

「二つ目」については、「十代の脳は大人とは違うという点です」と前置きして説明した。

「フランシスジェンセンによって書かれた『10代の脳』という本があります。10代は馬鹿げたことをします。それは、感情を司る大脳辺縁系の急速な発達に、判断と制御を司る皮質の発達が追いつかず、そのアンバランスさが特有の問題行動を引き起こしているからです。 この本を読めば10代がいかに大人と違い危うげか、リスクを好み、適切な判断ができないか。情緒不安定か。がよくわかります。全てがアンバランスさのせいだとは言いませんが、明らかに優位差があります。大人のミニチュアが十代ではありません。言い換えれば十代は失敗をし、学ぶ世代です。何度も失敗するのであれば、問題かもしれませんが、たった一度の失敗で、学校を辞めさせられたり、夢を諦めたり、試合に出られなくしてもいいのでしょうか。私は学ぶ機会にできるように大人が促すべきだと思っています」

 続けて「 三つ目に、個人的な体験から人は変われると信じているからです」とし、自身の経験を明かした。

「私は大学時代にスランプになったストレスから、金髪ピアスにしたり、(当時は珍しかった!)、素行も悪く、陸上界の爪弾きものでした。もう為末は終わったなと、あちこちでよく聞きました。自分で振り返っても、当時はやさぐれていたと思います」

 そして、恩師の自身への「信じてくれる思い」を知り、再起できたことを振り返っている。

「そんな時に、ある会見でメディアの方が当時日本代表の短距離部長であった高野進さんに為末の可能性について質問しました。もう彼は厳しいんですかね、と。 その時に高野進さんは『何言ってるの。あいつがあそこで終わるわけないでしょ』と即座に答えました。それはメディアに言ったのか、メディアを通じて私に言ったのかはわかりません。 そのコメント自体は記事にはなりませんでしたが、メディアの方がこっそりそれを教えてくれました。 私はその日、部屋で号泣しました。このまま終わっていいのかと。今も立派な大人ではなりませんが、そこで私は変わったと思います。一人でも信じてくれる大人がいれば子供たちは変われると思います」

 さらには「私は十代で馬鹿げたことをたくさんしました。けれども周りの大人が支えてくれ、変われたと思います。十代は不安定です。馬鹿げたこともするし、先も見えていない」とし、「でも、大人は皆十代の時期を過ごしてきました。 子供たちの問題にフォーカスするより、可能性を信じる社会の方が私は良いと思っています」などと持論を示した。

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