野村駿太、逆転TKOを出来たワケ 最終R開始直前で奮起「『ただ勝てばいい』にしたくない」
格闘技イベント「DEEP 120 IMPACT」(東京・後楽園ホール)が14日、行われた。第5試合で行われたライト級、5分×3R戦では野村駿太(26=BRAVE)が泉武志(35=FIGHTER’S FLOW)に3R・TKO勝ちした。今年1月のONE日本大会では青木真也の練習パートナーを務め、現在も共に練習している野村に逆転劇となった試合を振り返ってもらった。
今年1月のONE日本大会では青木真也の練習パートナー
格闘技イベント「DEEP 120 IMPACT」(東京・後楽園ホール)が14日、行われた。第5試合で行われたライト級、5分×3R戦では野村駿太(26=BRAVE)が泉武志(35=FIGHTER’S FLOW)に3R・TKO勝ちした。今年1月のONE日本大会では青木真也の練習パートナーを務め、現在も共に練習している野村に逆転劇となった試合を振り返ってもらった。(取材・文=島田将斗)
1、2Rはレスリングエリートの泉の組みで漬けられるような展開だった。ゴングが鳴った瞬間、飛びかかるように距離を詰めパンチを放っていたが、作戦とは全く別の動きをしていた。
「本能でいける! と思ってしまいましたね。青木さんのnoteでありがたいことを書いてもらえたりとかいままでの練習の手応えもあったので、かかりすぎて少し自分を見失いましたね……。テイクダウンも後手になりました。グラウンドの攻防で相手の手・腕の処理が練習のときに考えていた形と違って『あれ?』となってしまいました。極められることはないだろうけど、どうしようと」
常にバックを奪われている状況でしのぐ時間が続いていた。観客はハラハラする試合運びであったが当の本人は冷静だった。
「1、2Rの組みの展開のなかでもずっと余裕はあったんです。余裕がありすぎて自分を出し切っていない感覚がずっとありました。がむしゃら感が出なくて、途中でやっとエンジンがかかってきましたね」
一方でその冷静さがあだにもなる。スタンドと組みでのテンションの差がピンチを招いていた。
「スタンドのときはかかるんですけど、組みの展開のときに『ここは俺の番じゃない。だから処理していこう』自分のなかでやられなきゃいいっていうのがあったので、後手後手になりましたね」
それでも3R目はそれまでと別人のようになる。いい意味で脱力し、右ストレートを当てるとその後に左フック。効かせるとそのまま試合をまとめた。
「最終Rは相手にやられることは考えないでいきましたね。1、2Rで自分の実力を出しきれていなかったので『このままじゃダメだ』と。なので逆にリラックスしてできましたね。宮田和幸代表に試合前に言われたコンビネーションを急に思い出して。それをやったら自分のリズムに乗り出した感じです」
試合中、ピンチの局面では会場のキッズから「野村先生頑張れ!」の声が上がった。
「週に2回空手を教えにいっているんです。そこの生徒たちは試合に出たい子とか頑張りたい子が多い。その親御さんたちが子どもに僕の試合を見せに来てくれているので、空手を見せられるわけではないんですけど、いつも教えている『最後まで諦めない気持ち』を自分が見せないといけないなって。こみ上げるものはありますね」
さらにこう振り返る。
「自分は先生っていうよりも、生徒たちと同じ目線の選手として教えています。子どもが一生懸命やってると自分も頑張ろうと思えますし、それってあまり子どもに見せられないと思うから『いまやらなきゃ』と思いました」
今回は野村史上、一番注目度が高かった。それがプレッシャーにもなっていたといい「いい試合をしなきゃいけない」と追い込まれた。
「『ただ勝てばいい』っていう試合を絶対にしたくないと思っていて、今日の試合はじらしてじらしてKOするって気持ちはずっと持っていました。漬けられて終わりではなくて、観客に『この人の試合見たい』『見に来てよかった』と思わせるのがプロだと思う。みんなが『これが見たかった』って思う試合をしたかったんです」
野村は今大会のMVPに。しかし喜びも束の間、次戦は現ライト級王者である江藤公洋とのタイトル戦だ。「今日はちょっと喜んで、もう次しか見てないです」とうなずく。「前回江藤さんとやったときも今日の序盤のような形で自分がかかりすぎたので、もっと修正できることがあるなと思います」。勝利したばかりだが、野村の目はすでに挑戦者の色に変わっていた。