福田沙紀が“逆オファー”で初監督に挑戦 事務所独立で変化した意識「1歩進む勇気を」

俳優の福田沙紀が初監督したショートドラマ『大人に恋はムズカシイ』が8日からショートドラマ配信アプリ「BUMP」で配信スタートする。1話わずか数分という新しい映像作品の形となったが、どういった点を意識して撮影に臨んだのだろうか。また、どういった狙いで同アプリが立ち上がったのか――。監督を務めた福田とBUMPを生み出したemole代表の澤村直道氏に話を聞いた。

emole代表の澤村直道氏(左)と監督を務めた福田沙紀【写真:ENCOUNT編集部】
emole代表の澤村直道氏(左)と監督を務めた福田沙紀【写真:ENCOUNT編集部】

“逆オファー”で実現した新たな挑戦

 俳優の福田沙紀が初監督したショートドラマ『大人に恋はムズカシイ』が8日からショートドラマ配信アプリ「BUMP」で配信スタートする。1話わずか数分という新しい映像作品の形となったが、どういった点を意識して撮影に臨んだのだろうか。また、どういった狙いで同アプリが立ち上がったのか――。監督を務めた福田とBUMPを生み出したemole代表の澤村直道氏に話を聞いた。(取材・文=中村彰洋)

――福田さんにとって初監督となりましたが、どのような経緯で決まったのでしょうか。

福田「少し前に『シキ』という映画に出演させていただいたとき、山口(龍大朗)監督に出会ったことがきっかけでした。山口さんがBUMPの作品に演出で入っていて、『演者ではなく、裏方として作品の制作に携わってみたい』という話をしたときに、澤村さんを紹介していただきました」

――以前から監督業に興味を持っていたのでしょうか。

福田「20歳ごろから、漠然といつか撮ってみたいと思うようになりました。『ライフ』(2007年)という作品に出演させていただいたとき、演出やカメラワークが本当にすごいと感じて、クリエイティブの面白さを現場で実際に体感したことで、興味を持つようになりました。私は、ビビリで慎重な性格で、石橋をめっちゃたたいて歩くタイプだったんです。周りの目を常に気にしていて、1歩進む勇気というものから離れてしまっていました。そんな中、30歳を前にずっとお世話になっていた事務所を退社したことによって、『自分がなりたい自分にならなきゃ』と思って、勇気を持って参加させていただきました」

――俳優さん側からの“逆オファー”という珍しい形になりましたね。

澤村「BUMPはドラマや映画に挑戦できる間口が狭いと思っていた中でスタートさせました。ショートドラマは作る予算も小さいうえに、しっかりとサービスを組んで配信すれば収益も得ることができます。今までドラマ作りに挑戦したことない人でも参加できる環境を作っていきたいと考えていたので、沙紀さんのように、これまで役者として活躍されてきた方が、ショートドラマというフォーマットで監督に挑戦したということは大きなことだと思っています。とてもありがたいお話でしたね」

――ショートドラマは1話がわずか数分という形態となりますが、戸惑いはありませんでしたか。

福田「ありましたね(笑)。最初は3分×10話と聞いていたんです。企画会議や脚本会議を行って、10本分の脚本ができた時に、澤村さんから『1分じゃ短い?』と提案されて、『ほうほうほう……』みたいな(笑)。3分×10本で計30分だったのが、1分×30本に変更になったんです。1話ごとに冒頭と終盤にフック部分が必要になるので、10話だと20個のポイントが必要になりますが、30話になったということは60個も必要になってくるんですよ。『最初言ってた話と違うじゃん!』と慌てましたが、私は課題を課せられる方が燃えるタイプなんですよね。30分でも2時間でも、決められた枠の中で作品を作るということは変わらないなと考えるようにしました」

澤村「1分を目指す中で、1分半とかもあって話によって時間はバラバラで、最終的に全29話で総尺は50分ぐらいになりましたね。これまでは、3分で作ったものを1分で切って、SNSに投稿して、『続きはBUMPで』といった動線を引いていました。でも、1分を見た人からすると、3分ですら長いといった声があったんですよ。TikTokも大体1分ぐらいの動画が流れていて、今の視聴者のトレンドは1分なんだな、と。これまでは『難しいです』と言われることが多かったんですけど、沙紀さんは『いけるんじゃない?』みたいな感じだったので……(笑)」

福田「いや! 提案されたのであれば、それに答えるのが私の仕事なのかなと思ったんです(笑)。最初はかなり焦りましたが、脚本家の灯敦生さんの協力もあって、しっかりと30話が良い形になりました」

――監督としてどのようなアプローチを心掛けましたか。

福田「全体的なバランスを見て、分かりやすく伝えてあげることが、私が監督として役者さんにできることだと思っていました。同じ役者だからこそ、はっきり言える部分もあったと思います。私自身これまでの経験で、『もっとはっきり言ってほしい』と思うこともあったので、その点は良かったのかなと思います。

 制作過程で予期せぬハプニングはつき物ですが、その中でも納得できる形で作るようにアプローチさせていただきました。脚本を作る時間やロケハン時間とどの過程も楽しかったです。中でも編集がすごく楽しくて、自分の頭の中を整理していく感じなんですよね。予定していなかった編集方法を行ったりもしましたが、そういうのが浮かんだとき、自分の宇宙が広がっていく感じがしたんです。やっぱり作品作りがとても好きなんだなと思いました。実際に役者の皆さんにお芝居について話しているときも、『芝居好きだな』とすごく感じましたね。初監督にもかかわらず、集まってくれたスタッフの皆さんに対する感謝も強かったので、みんなに『この作品に携われてよかった』と思ってもらえるようなクオリティーにしたいという思いは強かったです」

――福田さんは今作で初監督を経験しましたが、今後挑戦したいことはありますか。

福田「音楽も好きなので、ミュージックビデオやCMなども撮ってみたいですね。今回ご一緒したカメラマンさんからは『映画に向いていると思う』と言ってもらえたので、長編映画にも挑戦したいです。役者は、脚本があって1を100にするお仕事ですが、今回ゼロイチの製作過程に携わらせてもらって、作品を作ってみたら、『こういうこともやりたい』『この役者さんのこの表情を撮ってみたい』など膨らむ部分が多かったので、そういったものをこれから作っていけたらいいなと思っています。今は、自分が出演するというよりも監督業への興味が強いですね」

――澤村さんにお聞きします。BUMPがローンチしてから約2年半たちましたが、手応えはいかがでしょうか。

澤村「自分でもびっくりするぐらい市場全体が伸びています。立ち上げたときは誰も想像ができていなかったので、『そんな短い尺でドラマは作れない』とかも言われたりしました。でも、やってみると案外できるんですよね。中国では2020年の段階で市場が立ち上がっていて、1年で1000億円市場になったと言われていて、今では8000億円の市場になっているんです。

 2か月前に初めて、ショートドラマ市場がグローバルでどれだけ伸びるかというデータが発表されて、これから5年で8.7兆円になるというデータが出たんです。国内でもショートドラマを作る人たちが増えてきていますし、韓国でもショートドラマが立ち上がっています。自分でもびっくりするぐらい環境が変わってきていると思いますし、盛り上がっているなと肌で感じます」

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