“スターダムのアイコン”岩谷麻優「いつ何時、誰の挑戦でも受ける!」 IWGP女子王者のモットーを宣言
プロレスラー・岩谷麻優は令和女子プロレスの先頭を走るスターダムにあって、そのアイコンの役目を果たす、第3代IWGP女子王者である。IWGPといえば、1983年にアントニオ猪木さんが3年越しで創設し、87年から正式にタイトル化されたもの。その流れを汲むベルトを保持している。生前のA猪木さん本人には会ったことはない。だからこそ闘魂に触れてもらうべく、A猪木のライセンスを管理する猪木元気工場にて、直撃取材を実施した。
(闘魂注入)ビンタを食らってみたかった
プロレスラー・岩谷麻優は令和女子プロレスの先頭を走るスターダムにあって、そのアイコンの役目を果たす、第3代IWGP女子王者である。IWGPといえば、1983年にアントニオ猪木さんが3年越しで創設し、87年から正式にタイトル化されたもの。その流れを汲むベルトを保持している。生前のA猪木さん本人には会ったことはない。だからこそ闘魂に触れてもらうべく、A猪木のライセンスを管理する猪木元気工場にて、直撃取材を実施した。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
――ここにはたくさんのA猪木さんにゆかりの品があります。
「いやもうすごいですよね。入口から(等身大の)フィギュアがあって、ここにたくさんの歴史が詰まってるんだっていうのと、自分は昔のプロレスラーとか見ていなくて、歴史を深く知ってるわけではないんですけど、ここに来ると、気が引き締まります。重いって思いました。(A猪木は)もう知らない人はいないじゃないですか。だから自分なんかまだまだだなって。もっと誰もが知ってるようなレスラーになるためには何ができるんだろう? シンプルに、ここを見てすごいなっていうのと、自分なんかホントちっぽけなんだなっていう、虚しさとかも出てきちゃって、ちょっと複雑な感情です」
――率直にA猪木さんの印象は。
「とにかくすごい人って感じですかね。あと、やっぱ(闘魂注入)ビンタ! くらいたくないですけど……いや、くらいたいみたいな複雑な。絶対だって、脳しんとうとか起こすレベルのね。あんな大きい手でたたかれたらってなるけど、人生で1回はくらってみたかったなって」
――IWGP女子王者になった時は、これがA猪木のつくったベルトの流れを持つベルトなんだと思いましたか。
「思いましたね。最初はIWGP女子ができるってなった時に、スターダムって赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム)と白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム)があって、そこがトップなのに、なんでこのまた増やすんだろうか。何のために、このベルトはどういう意図で作られたんだろうか。すごく考えた時にちょっとよく分からなかったんですよ。このベルトの立ち位置だったりとか。だから最初はいるのかなって思ったんですよ、正直。
けど、やっぱこのベルトが発表された時にすごくいろんな人に言われるじゃないですか。このベルトの重みやこのベルトの今までの歴史を。だからこそファンの方からは批判とかもあった。そんな軽々しくベルトを作るものじゃないとか。でも、実際に自分が巻いてみたら、ホント今まで皆さんが作り上げてきた歴史、女子でも作り上げていけれるんだって思ったし。やっぱ引き継いでいけるものは引き継いでいきたいですし、今までの歴史を感じつつ、背負いつつ。最初は批判してた人にも、IWGP女子も作ってよかったよね、受け継がれてるよねって思われるようなベルトにしていかないとなっていうのは、最近すごく思っています」
「Sareeeともやりたくなかった…」
――Sareee戦(2024年4月27日、横浜BUNTAI)の前には弱気な発言をされていました。その後の(藤本つかさ、中島安里紗の)ベストフレンズ戦(5月18日、横浜武道館)後も「お前ら、心が折れただろう!」とマイクアピールしていたり。チャンピオンなのに、なかなか珍しい打ち出し方をするなと。
「あまり作り上げられないんですよ。自分がキャラになりきれないというか。キャラでいたいんですけど、キャラでいられないんですよね。絶対ボロが出ちゃうから。結構ネガティブ思考な部分もあるので、そういうところもなんか素直にっていうか、言っちゃうんですよ。本当だったらチャンピオンって『痛くねえよ』とか『もっと来いよ』とか言わなきゃいけないはずというか、チャンピオンってそうあってほしいじゃないですか。だけど自分は『心が折れた』って言っちゃいますね。だって、ホントにSareeeさんともやりたくなかったし……。でも、終わってみれば、本当にSareeeでよかったって思える試合だったんですけど……」
――上半期も終わっていませんが、あの試合は年間ベストバウトの筆頭に挙げられると思います。
「前に赤いベルトを自分が持ってて。(Sareeeとの)シングルマッチが決まってたんですけど、前日に出れませんっていうことになって、1回流れちゃったんですよ(2020年2月)。そこからは本当に交わることもなくて。その後にSareeeさんは海外に行ってしまって、本当に関わることがなくて。で、戻ってきたらIWGP女子ができていたから、このベルトが欲しいっていうその気持ちが本当に強いし」
――Sareeeは幼い頃から、A猪木の影響を受けて来た父親に育てられたからこそIWGP女子が欲しいと公言していますもんね。実際に対戦してどうでしたか。
「実際に試合が始まってみると、本当にお互い負けたくないから意地の張り合い、バチバチもできる。スピーディな攻防もあった。ドロドロもあった。あの子は攻めのスタイルじゃないですか。で、自分はどちらかというと受けのスタイル。本当ににボコボコにやられて、自分は(やられてもやられても立ち上がっていくため)『ゾンビモード』ってよく言われてるんですけど、それも発揮できて、キラーな面も出てて、本当にあの試合が終わって、やってよかったなって思える試合でした」
――無事に終わってよかったと。
「試合が始まるまでは、ヤるかヤられるか。ヤられても絶対負けないみたいな、もう、バチバチしてたんですよ。本当に怖かったし、正直、ホントに。けど試合が終わってからは、もうスポーツマンシップみたいな感じですかね。ありがとうございました、みたいな。『週刊プロレス』さんも表紙を飾らせていただいたりとか、お客様もホントにこの試合が見れて良かった、生で見れてよかったとか、すごく言っていただけたので。やって本当によかったって感じです」
「ベストフレンズ戦は、殺されるかと思った」
――その後の、「心が折れた」ベストフレンズ戦は。
「最初はやってやれそうな気持ちだったんですけど、試合が進むにつれて、顔面を踏まれるわ、この辺(目の周り)もバーンなって、ちょっと視界も悪くなって、あ痛たたた、みたいなとか。フットスタンプが肋骨に入ったり」
――「中島安里紗! アバラ、折れただろう!」ってマイクアピールしていましたね。
「ま、幸い折れてはいなくてよかったんですけど、本当に息ができなくて。うわ、殺される! プロレスで殺される! みたいな。あと、なんて言うんだろう。自分のプロレスに誇りを持ちすぎてたから、他団体の人とやったら、こんなボコボコにされちゃうの? みたいな。ちょっとメンタルも落ちましたし、歯が立たないってこういうことか、みたいな。ちょっと、どうなんでしょう。自分が好きなプロレスではなかったです」
――試合後に、「まだまだ私にやらなきゃいけないことがあるんだなって思った」と言ってましたね。
「私はスターダムのアイコンって言ってますけど、それが女子プロレスのアイコンになるためには、もっともっと頑張らなきゃいけないし、このベルトと共に、スターダムと共にやっていくべきことが増えたなって思いましたね、改めて。このベルトを巻いてから1年以上経つんですけど、できればIWGPの最多防衛記録(オカダ・カズチカの持つ12回)を塗り替えたいと思って目指しているんですけど、平凡な試合をして塗り替えたって意味がないじゃないですか。ヤバい試合した上で防衛しないと。途中、心が折れてたけど……みたいなことがあったほうが絶対いいじゃないですか。だから正直、藤本つかさとかもやりたくないですけど……。嫌ですけど、やって何か生まれるものっていうのを、この前のSareee戦ですごく気づかされたので……」
――藤本戦はやりたくない。
「やりたくない。でも、やりたくないから逃げるんじゃなくて、自分の苦手な分野とかも自分の得意分野にしていけばもっとプラスになるし。自分にもっと強さ、バチバチとかが加われば、本当に最強になれると思うので(藤本を)倒さなきゃいけない。本当に1人1人倒していかないと」
――次の防衛戦になる藤本つかさ戦は、敵地であるアイスリボンの大会(6月23日、後楽園ホール)になるそうですね。
「自分はどこでも行くって感じなんです。そうですね。誰の挑戦でも受ける。それがIWGPのモットーですからね」
――そこは、いつ何時、誰の挑戦でも受ける、という猪木イズムが宿っていると。
「はい。こんな、私はもうミジンコみたいなもんですけど、そこだけは受け継がさせてもらいたいなと思っています!」