草葉の陰でジャイアント馬場さんが思うことは? 秋山準のDDT移籍が波紋

全日本プロレスから「王道は無くなった」。秋山準・前社長のDDTへの移籍を受け、和田京平・名誉レフェリーから衝撃的な言葉が飛び出した。

デストロイヤー・マスクを手にする和田レフェリー【撮影:柴田惣一】
デストロイヤー・マスクを手にする和田レフェリー【撮影:柴田惣一】

「昔からの全日本・王道ファンがどう感じているのか」

 全日本プロレスから「王道は無くなった」。秋山準・前社長のDDTへの移籍を受け、和田京平・名誉レフェリーから衝撃的な言葉が飛び出した。

 1972年にジャイアント馬場さんが立ち上げた全日本に、リング運搬などのアルバイトとして加わった和田氏。74年にはレフェリーも務めるようになり、馬場さんの側近となった。99年に馬場さんが亡くなると、元子夫人を支え続けた。

 渕正信と並ぶ「王道の最後の砦」と自他ともに認める存在だが、他団体のレフェリーも務めるなど、一歩引いた立場で王道プロレスの行末を見守っている。

「馬場さんが鍛えた選手が王道」という和田氏。とはいえ馬場さんの死去後、20年以上たった今では「馬場さんの指導を受けたことがある選手によって育てられたレスラーも王道」と認めるという。

 和田氏は驚きの予測をする。秋山がDDTの選手をコーチするのだから「DDTが全日本・王道スタイルに変化していくのかも」。それどころか、「今の全日本がDDTのようになっていく」というのだ。

 鋭く和田氏は指摘する。凶器を堂々と手にした選手がリングに登場するなど、馬場さんだったら「バカ野郎」の一言で許されなかった光景が、全日マットでも展開されているのだ。

 時代の流れでファイトスタイルも変化することは和田氏も承知している。「俺も頭は柔らかい方だから」と、否定するわけではない。「今はDDTで暴れている人形レスラーが、全日本のリングに上がるかも」とまで口にした。

 ただ「昔からの全日本・王道ファンがどう感じているのか」と、危惧しているのも事実。全日本のファンと新日本プロレスのファンは違う。DDTのファンもそれぞれの想いをもって、応援してくれる。「全日本のファンは新日本のファンと比べれば、優しいけど……」と、言葉を濁す。

 コロナ禍で無観客試合が行われている。「選手は成長している。ファンの声援に助けてもらえないから、テクニック、試合運びにしろ、真の実力が問われるから必死に闘っている」と分析。間もなく始まる有観客試合に「最初は少ないお客さんの前だけど、ファンの反応に頼ってごまかそうと思えば、できてしまう。楽な道も選べる。だからこそ、選手がどう考え、ファイトしていくのか。観客席が開いてからが、楽しみ」と厳しい見方も忘れない。

 いくらボーダーレスの時代とは言え、王道の全日本と、エンターテインメント色の強いDDTが交わったり、ましてや秋山が移籍したりとは考えもつかなかった。

 男色ディーノが王道プロレスをするのか、諏訪魔がスローモーションの試合をするのか。科学反応が楽しみ、というDDTファンもいれば、嘆く全日本ファンもいるだろう。

 王道スタイルはどうなる? 「全日本プロレスとDDTのスタイルが入れ替わる」という想像もしなかった時代がやって来るのか。

 もうすぐお盆。草葉の陰で、馬場さんはどう思っているのだろうか。

 団体のカラーをしっかり守って来た全日本とDDT。うまく融合すれば良いが、お互いの良さを消し合ってしまう危険性もある。いずれにしろ、目が離せない。

次のページへ (2/2) 【画像】1988年、結婚式に揃って出席した馬場夫妻
1 2
あなたの“気になる”を教えてください