注目株の山崎果倫、「今の現実を変えたい」と飛び込んだ芸能界 きっかけとなった過去を告白
俳優の山崎果倫(24)が『夢の中』(5月10日公開)で映画初主演した。所属事務所レプロエンタテインメントが主催する映画製作プロジェクト『感動シネマアワード』グランプリ受賞作の映画化で、現実と夢を行き来する幻想的な物語。念願の主演作で感じたことは。
山崎果倫が『夢の中』で映画初主演「もっと成長したい」
俳優の山崎果倫(24)が『夢の中』(5月10日公開)で映画初主演した。所属事務所レプロエンタテインメントが主催する映画製作プロジェクト『感動シネマアワード』グランプリ受賞作の映画化で、現実と夢を行き来する幻想的な物語。念願の主演作で感じたことは。(取材・文=平辻哲也)
山崎は近年、ドラマ・映画への出演の機会が増えており、24年の待機作に、主演映画『輝け星くず』もある注目株だ。
本作は中学生の性の違和感と自己理解の揺らぎを描いた『蝸牛』でMOOSIC LAB 2019短編部門グランプリほか四冠を達成した新鋭・都楳勝監督作。所属事務所のレプロエンタテインメントが主催する映画製作プロジェクト『感動シネマアワード』グランプリを受賞した企画の映画化となる。
「(事務所から)いきなり『あなた主演で脚本と監督を募集して、その中から作品を決めるから』と伝えられて、『どういうことですか?』と聞き返してしまいました。まだ何もキャリアもない頃だったので、応募してくれる人がいるのだろうかという不安が大きかったです」と振り返る。
本作は現実と夢が混じり合う世界観の中で展開する幻想的な物語。山崎が演じたのは、写真家の青年ショウ(櫻井圭佑)に、「私の最期をきれいに撮ってほしい」と懇願するタエコ。2人は時間を共有するうちに、夢とも現実ともつかない不思議な世界に引き込まれていく……。
「タエコは傷や痛みから逃げて、自分が分からなくなってしまった女性だと感じました。ここまで極端に現実逃避している人物は珍しいとは思いますが、概念の擬人化だと思っています。セリフや説明が本当に少ない映画なので、受け取り手に委ねられている作品なのですが、何か一つでも受け取ってもらえたら」
いきなりの主演で難役だが、監督からは身体的な具体的な指示もあり、演じることができたという。深い陰を持ったヒロインには共通点はあったのか。
「私は、人と関わる時には、明るくいなきゃいけない、口角を上げないといけないと思ってきたのですが、それは本当の自分ではない部分もあるなと思っていました。私の中にある暗い部分を見て見ぬふりして、明るくてみんなにいいと思われたいと思ってきたので、初めて自分の暗さに向き合って、重なる部分をたくさん見つけました。このタエコと出会ったおかけで、明るくなれている部分もあると思います」
最も大変だったのは幻想的な水中での演技だという。
「タエコの気持ちが一番現れているシーンだと思ったので、頑張りました。潜水用の深いプールで怖かったです。死んでしまうじゃないかと思ったけど、実際の撮影はダイバーさんがついてくださり、安全な環境でできたので、本番ではかなりの深さまで潜ることができました」
映画『宮本から君へ』を鑑賞して走った衝撃「ビンタされたような感覚に」
山崎は愛知県出身。2015年にレプロエンタテインメント×Sony Music合同主催オーディション『DREAM GIRL AUDITION2015』に合格し、芸能界デビュー。俳優活動は9年目になる。
「当時は今の現実を変えたい、地元を出たいといった気持ちで、女優さんになりたい、芸能界に行きたかったわけではなかったんです。地元も家族もすごく好きなのですが、気を使っている時間が多く、長い間いじめられていたこともあって、息のしやすい場所は他にあるとずっと思っていました。昔から週に1回映画館に行ったり、俳優さんのまねをしたり、表現することに興味があったんです」
俳優としての意欲が目覚めたのは所属事務所の演技レッスン。
「最初は人前で声を出す、立つことも分からなかった。高2からは地元を出て、事務所の寮に入っていたので、同世代の子達と切磋琢磨し合う中、女優としてやっていきたいっていう風な気持ちが芽生えていきました」
数々の映画、ドラマを見ながら学んだが、19年公開の池松壮亮主演の映画『宮本から君へ』(真利子哲也監督)を見て、衝撃を受けた。本作は新井英樹原作の同名コミックの映画化で、不器用な青年、宮本が仕事や恋に奮闘する姿を描く。
「渋谷の映画館で一人で見て、『そんなことではダメだ』とビンタされたような感覚になったんです。私の生き方はぬるい、情けないと思ったし、同時にすごいエネルギーをもらった気分になって、渋谷の駅までの帰り道を走っていきました(笑)」
以来、人の心を動かす俳優になりたいと前向きになり、昨今は出演本数も増えてきた。今年はもう一つの主演映画『輝け星くず』も公開予定。神戸を舞台に、過去の事故や家族にとらわれた男女が再び自分の人生を歩むために四国への旅に出るロードムービーだ。
「こちらはちょっと明るめな感じの役で、『ニュートラルに演じていいよ』と言われたので、わりとシンプルに演じるようにしました。どちらも最高で、大好きな作品です。自分が成長して、見える景色が広がってきた感じがします。今はリスペクトする対象も増えているので、自分の至らなさにも気づくのですが、もっと成長したいなと思っています」
俳優として尊敬するのは『宮本から君へ』の池松壮亮と樹木希林。
「お二方の映画作品はほとんど見ていますが、どれも全部違う人間に見える。インタビュー記事を読んでも、人としてすごく素敵だなと思えます。私も、演技はもちろん、人としての温かみ、優しさ、愛情がちゃんとにじみ出た俳優になりたいなと思っています。私も、映画を見て、人が走り出すような作品に出てみたい」と決意を語った。
※山崎果倫の「崎」の正式表記はたつさき
□山崎果倫(やまざき・かりん)1999年10月8日、愛知県出身。2015年、レプロエンタテインメント×Sony Music合同主催AD『DREAM GIRL AUDITION2015』合格し活動を開始。その後、舞台『ローファーズハイ』(浅草九劇)での公演で演技経験を積みドラマ・映画への出演の機会が増加。近年の出演作にはドラマ『隣の男はよく食べる』(23/テレビ東京)、映画『死体の人』(22/監督:草苅勲)、映画『おとななじみ』(23/監督:高橋洋人)、ドラマ『君に届け』(22/Netflix)などがあり、24年には主演映画『輝け星くず』(監督:西尾孔志)が全国公開予定。